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19.12.05

看護学群・風間逸郎教授が腎臓の線維化における新規病態メカニズムを発見

看護学群に所属する風間逸郎教授は,病態生理学・内科学・一般生理学を専門分野としており,主要な研究のひとつとして「“慢性炎症性疾患”の病態生理における,リンパ球カリウムチャネル(Kv1.3)の関与」をテーマとした研究を行っています。

このたび,東北大学病院麻酔科学分野との共同研究(風間教授が主導し,東北大学の博士課程大学院生を研究指導)により「腎不全の線維化における新規病態メカニズム」を世界で初めて発見しました。なお,本研究成果, および関連する研究成果については,本年度中に2編の英文雑誌(いずれもBiomed Research International)に掲載されました。

「リンパ球カリウムチャネル」とは

「リンパ球カリウムチャネル」とは,リンパ球の細胞膜上に数多く存在するカリウムチャネルのことを指します。リンパ球とは白血球の一種で,細菌やウイルスなどの病原体に感染した細胞を攻撃したり,抗体を作ったりするほか,記憶した病原体にすばやく対応し,それらを排除するなどの機能を持ちます。カリウムチャネルとは,細胞膜に存在するイオンチャネルの一種で,ほとんどの細胞に存在し,カリウムイオンを選択的に通過させることによって,細胞としての機能を維持しています。

リンパ球カリウムチャネル(Kv1.3)と疾患との関係
(文献:Kazama. J Physiol Sci 2015 より引用)

間質性腎炎モデルで増殖したリンパ球とKv1.3過剰発現
(文献:Abe, Kazama et al. Biomed Res Intl 2019より引用)

風間教授はこれまで,薬理効果(免疫抑制作用)や病態生理との関連を研究する中で,カリウムチャネルのひとつである「Kv1.3」の活性が, 免疫能と深く関わることを明らかにしてきました。

“わからない”部分が多い「腎不全」治療の糸口を発見

近年,人口の高齢化や糖尿病患者の増加に伴い,慢性腎臓病から末期腎不全に至るケースが多くなっています。慢性腎臓病が進行すると,内臓などの組織を構成している結合組織が異常増殖する「線維化」という現象が起こり,臓器の回復や再生を困難なものにしてしまいます。しかしこれまで,腎臓が線維化をきたす詳細なメカニズムについては,他の臓器の場合と違って、まだ一定した見解が得られていませんでした。

今回の共同研究では,片側尿管結紮術(Unilateral Ureteral Obstruction: UUO)により慢性間質性腎炎を引き起こしたモデルラットを作成・解析することにより,腎臓で過剰発現したリンパ球「Kv1.3」が腎線維化の病態形成に大きく関与することを明らかにしました。本研究の成果により,リンパ球に発現するカリウムチャネルの一つが,腎不全に対する治療や看護のターゲットとなりうることを世界で初めて明らかにしたといえます。

風間教授は今後も,臨床から発想した研究の成果を再び臨床に還元することを目標とし,日々研究に取り組んでまいります。学生さんでも教職員の方でも,風間教授と一緒に研究をやってみたい人は,是非ご一報ください。
( kazamai(a)myu.ac.jp メールの際は(a)を@に変えてご連絡願います)


研究成果の詳細について

なお,本研究成果は,11月付けで英文雑誌Biomed Research Internationalの電子版に論文として掲載されています。

また, 抗アレルギー薬の薬効との関連から「Kv1.3」の活性が免疫能と深く関わることを明らかにした研究成果についても, 本年5月付けで英文雑誌Biomed Research Internationalに掲載されました。

いずれの論文においても,風間教授は研究の主導,論文の執筆を行っており,最終著者かつ責任著者(Corresponding author)を務めております。


研究者プロフィール

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