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動物免疫学研究室

印刷用ページを表示する 掲載日:2017年7月5日更新

動物免疫学研究室の研究内容

免疫システムは感染防御以外に代謝系にも関与し、免疫系のアンバランスが生活習慣病や神経疾患にも影響を及ぼします。すなわち、動物が健康に生きるためには、免疫系の適切な制御・恒常性の維持が極めて重要ですが、免疫応答の調節に様々な環境因子が関与することが報告されています。ヘルパーT細胞(Th)は、抗原提示細胞の刺激によって、細胞性免疫に関与する1型Tヘルパー(Th1)細胞、あるいは液性免疫に関与する2型Tヘルパー(Th2)細胞に分化します。細胞内に感染するウイルスなどの病原体が宿主体内に侵入すると、Th1細胞はインターロイキン2(IL-2)やインターフェロンγ(IFNγ)を産生し、炎症性反応を導きます(1型免疫応答)。一方、細胞外に感染する線虫などの寄生虫が侵入すると、Th2細胞がインターロイキン4(IL-4)やインターロイキン13(IL-13)を産生し、B細胞によるIgEの産生が促され、好酸球が活性化されます(2型免疫応答)。侵入した病原体を排除するために適切な免疫応答を誘導し、適切に終了させるのが免疫系の理想であり、宿主体内ではTh1、Th2さらにTh17や制御性T細胞(Treg)などのT細胞サブセットが生体防御の重要な役割を担い、お互いに拮抗して免疫系のバランスを保ちます。しかし、特定の方向へ反応が偏り、バランスを崩せば、アレルギーや自己免疫疾患などの原因ともなります。1型免疫応答が誘導されるメカニズムについてはこれまでに多くの報告があり、詳細に明らかにされてきましたが、寄生虫感染が誘導する2型サイトカインの作用機序に関しては、いまだ未解明な部分が多く残されているのが現状です。寄生虫感染をモデルとして2型免疫応答を解明することができれば、免疫系のバランスを制御し、寄生虫感染症やアレルギー疾患のコントロールに資するものと考えられます。

抗酸化物質と2型免疫応答

当研究室では、抗酸化物質であるさまざまなポリフェノールを疾病モデルマウスや老齢マウスに投与することで生体内での応答を解析しています。たとえば、そばに多く含まれるルチンは、血圧上昇抑制作用を持つことがよく知られていますが、抗アレルギー効果を持つ可能性も指摘されています。そこで、ルチンが生体の免疫能を制御する可能性を検討するため、酸化ストレスが増大している加齢マウスモデルを用い、2型サイトカインおよび一酸化窒素合成酵素(NOS)の発現に対するルチンの効果を調べました。18ヶ月齢のC3H/HeN雌マウスに6mg/25g body weightのルチンを10日間経口投与した後、小腸および肺を採取しました。各臓器からRNAを抽出し、リアルタイムPCR法を用いてIL-4、 IL-13、IFNγ、 NOS1、2、3の遺伝子発現解析を行いました。その結果、ルチンは、小腸および肺におけるIL-13の発現を有意に抑制しました。炎症性サイトカイン(1型サイトカイン)であるIFNγには変化はありませんでした。NOSについては、いずれの臓器においてもNOS1およびNOS3の発現に変化はありませんでしたが、NOS2については肺に有意に抑制効果が認められました。また、肝臓における過酸化脂質の産生を抑制しました。したがって、ルチン投与により酸化ストレスが緩和され、IL-13の遺伝子発現が抑制されることから、アレルギーや炎症性疾患に効果を示す可能性が示唆されました。加齢によって減退する免疫系の働きを調節したり、炎症性疾患の予防に効果を示す可能性があります。

線虫が感染する局所における免疫応答

臓器特異的な免疫応答に注目が集まっていますが、モデルとして取り上げた線虫はいずれも消化管に感染するため、小腸における局所免疫応答を解析する目的にも有用です。とくに、H. bakeriはシストを形成するため、感染体の居場所を特定し、虫と相対して粘膜下に集積する免疫担当細胞の動きを容易にモニターすることができます。たとえば、H. bakeriの感染4日目に小腸の切片を観察すると、この時点ではまだ周辺の組織への免疫細胞の集積は少なくなります。この時シスト内に最も多くみられるのは好中球であって、周辺にもCD4陽性細胞はほとんど見られません。また、この時期のシスト周辺の細胞をLaser Capture Microdissection (LCM)法にて採取し、遺伝子発現定量解析を行うと、2型サイトカイン遺伝子の上昇は観測されません。しかし、虫が管腔に戻りはじめる8日目の小腸組織では、2型サイトカイン遺伝子の非常に強い発現が起こっていることが確認できます。Balb/cマウスの場合、この遺伝子発現の増強は12日目まで続きますが、これにより小腸の機能性が変化し、小腸上皮の透過性が増して粘液が大量に産生され、かつ、平滑筋の活動が活発化して蠕動(ぜんどう)運動が盛んとなり、虫を排除しようとします。一方、粘膜下の虫が管腔に戻った後、シストは線維化し、組織修復が起こりますが、その際主要な働きをするのが非炎症性マクロファージ、またはM2マクロファージと呼ばれるAltanatively activated macrophages(AAMacs)です。AAMacsは2型サイトカインによって誘導され、Alginase-I活性を持ち、炎症抑制に働きます。Arginase-Iの作用により、L-ArginineがureaとL-Ornithineに代謝され、後者はOAT(Ornithine –aminotransferase)によってプロリンに変換されてコラーゲン合成が促進され、組織の線維化、修復を促します。H. bakeri感染2週間以降の小腸組織では、線維化が進んだ巨大なシストの残骸が散見されます。これらの応答の後、駆虫薬を投与し、再度感染させたマウスでは、初感染時よりも早く迅速に2型免疫応答が立ち上がります。再感染時には、感染後4日で多くのCD4陽性細胞がすでに集積し、シストの内部および周辺で2型サイトカインの遺伝子発現が増大してきます。この応答は、抗CD4抗体で阻害されますが、CD4陽性細胞が存在しないシスト内で2型サイトカインの産生が見られることから、シスト周辺に集積するCD4陽性細胞は自らサイトカインを産生するだけなく、シスト内部に入り込んでいる細胞におけるサイトカイン産生にも関与していることが強く示唆されます。再感染時には、このように非常に早い段階でのサイトカイン産生がカギとなって、小腸の機能変化が早期に誘導され、虫が排除されるものと考えられます。

動物免疫学研究室の卒論テーマ

  • アトピー性皮膚炎を改善する新規物質の探索
  • Heligmosomoides polygyrus感染によって誘導される免疫応答の加齢による変化
  • NF-kB活性を阻害する植物ポリフェノールのマウスモデルにおける免疫調節効果
  • 代謝性疾患と免疫応答のクロストーク~糖尿病治療に向けた2型免疫応答および非炎症性マクロファージの寄与~
  • Heligmosomoides polygyrus感染マウスモデルを用いた2型免疫応答の研究
  • マウスモデルを用いた抗炎症作用を持つ物質の探索
  • 糖尿病病態改善に向けた2型免疫応答および非炎症性マクロファージの誘導
  • 加齢動物モデルを用いたドコサヘキサエン酸の抗炎症効果の解明
  • Heligmosomoides polygyrus感染マウスモデルを用いた加齢による2型免疫応答の変化
  • ドコサヘキサエン酸(DHA)の糖尿病病態改善効果についての検討
  • 消化管寄生線虫マウスモデルを用いた2型免疫応答のメカニズムの解明
  • DSS腸炎動物モデルを用いたドコサヘキサエン酸の抗炎症効果の検証
  • 加齢期におけるアスタキサンチンの抗酸化作用と2型免疫応答の改善効果
  • 高脂肪の食事環境がアトピー性皮膚炎に及ぼす影響
  • Heligmosomoides polygyrus感染PIR-Bノックアウトマウスを用いた2型免疫応答における樹状細胞の役割
  • 微量元素セレンが寄生虫感染免疫防御に及ぼす影響
  • ワカメ粉末給与によるブタにおける肉質と免疫能の変化およびマウスにおける免疫応答の変化
  • 行政に収容される犬猫に対する意識調査~処分動物を減らすために~
  • 線虫感染によって誘導される2型免疫応答の初期ステージ
  • T.muris誘導性2型免疫応答による炎症性大腸炎の病態コントロール
  • チオレドキシンの抗酸化作用による加齢期の2型免疫応答改善の可能性
  • 福島第一原子力発電所由来の放射性物質が生物に及ぼす影響
  • マウスの免疫機構における環境エンリッチメントの効果
  • 線虫感染によって誘導される2型免疫応答におけるマイクロバイオームの関与
  • 皮膚炎や褥瘡などの皮膚疾患に対する香村金剛水の病態改善効果
  • 炎症性腸疾患の病態における葉酸の関与
  • その時、動物を連れて逃げられるか?~復興住宅住民の災害時ペット同行避難についての意識調査~
  • 2型糖尿病病態改善に向けた免疫療法の検討(修士論文)

卒業生の進路

就職先

日東ベスト(株)、(株)叙々苑、あすか製薬(株)、酪農とちぎ農業協同組合、仙台中央食肉卸売市場(株)、仙台農業協同組合、ノバルティス ファーマ(株)、共立製薬(株)、大和証券(株)、サイゼリヤ(株)、(株)ユニバース、(株)青木商店、(株)ワイピーテック、アビオン(株)、日成興産(株)、(一財)食品分析センター、(株)乗馬クラブクレイン、スターゼン(株)、(株)仙台水産、(株)KICHIRI、(有)品川牧場

進学

東北大学大学院、岩手大学大学院、宮城大学大学院

※順不同

これまでの歩み

大阪府立大学大学院農学研究科獣医学専攻博士前期課程修了、
獣医師、博士(医学)
大学を卒業後、大阪府立公衆衛生研究所で8年にわたりエイズ(ヒト免疫不全ウイルス:HIV)の研究に携わりました。HIVの遺伝子診断、抗HIV薬の開発などが主な研究テーマで、植物など天然物由来物質の抗HIV活性についても多数の報告をしています。その後、山口大学連合獣医学研究科に移り、動物のサイトカインの研究(大腸菌による組換え蛋白の発現・精製など)に従事した後、日本学術振興会特別研究員に採用され、1999年よりアメリカ農務省ベルツビル研究所に赴任。寄生虫感染をモデルにした2型サイトカインの研究を始めました。2001年より米国軍保健科学大学にポスドクとして勤務した後、メリーランド大学へ移りました。この間、一貫して消化管における2型サイトカインとそのレセプターの働きについて研究してきました。2005年4月に、宮城大学食産業学部の発足にあたり仙台に赴任、現在に至ります。
アメリカnational Zooのpandaの画像

教員のプロフィール

 ファームビジネス学科 教授  森本 素子

研究室のメンバー

研究室2016