ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
現在地ホーム > 大学からのお知らせ > 学長式辞 <平成27年度入学式>

学長式辞 <平成27年度入学式>

印刷用ページを表示する 掲載日:2015年4月9日更新
入学式式辞  桜前線も、間もなくこの宮城の地に届く時期になり、今日このよき日に新たに宮城大学に進学された皆様方をお迎えできることは、一同大いなる喜びとするものであります。宮城大学を代表して一言歓迎の式辞を、申し述べさせていただきます。

 あの大震災からの復興が徐々に進められる中、勉学を進める上でのさまざまな困難を乗り越えて、入学されたことに、敬意を表すと同時に心からおめでとうと申し上げます。合わせて、今日の来る日を皆さん方以上に楽しみに待ちわび、皆さん方を全面的にご支援いただき、この祭典に参列して頂いたご両親様をはじめ関係する方々に、心よりおめでとうと申し述べさせていただきます。

 さらに、年度初めの大変ご多用中にも関わらず、この入学式にご臨席頂きました本学の設置者であられる村井宮城県知事様をはじめ、安藤県議会議長様、連携市町村長様、今野宮城県中小企業団体中央会会長様ほか、多くのご来賓の皆様方に、心より厚く御礼申し上げます。
 長年にわたり、同じ大学の改革者であり志を同じくする友人としておつきあいいただいている、アメリカ合衆国ペンシルバニア州立テンプル大学日本校のブルース・ストロナク学長には、遠路ご臨席頂きましたことに対して心から厚く御礼申し上げます。

 さて、本日無事に宮城大学に入学された皆さん方は、どのような勉強方法を身につけてこられましたか。受験に合格したということは受験上手ないしは受験秀才としての資質を持っていることでしょう。今日皆さん方に申し上げたいことは、今までの受験に偏った勉強から、真に物事を学びなおすことに大きく方向を変えていただきたいということです。
 19世紀初頭に近代ドイツの礎として、ベルリン大学が言語学者のヴィルヘルム・フォン・フンボルトにより創設されました。近代の大学という高等教育機関の考え方が提示され、後を追うわが国も高等教育機関のモデルにしたことはよくご存知のことと思います。このベルリン大学の三代目の学長が有名な哲学者のヘーゲルで、同時期に教授を務めた神学者で教育学者のフリードリッヒ・シュライアマハーは著作の中で、大学とは学ぶことを学ぶ場であると記述しております。
 この指摘は、まさに今日の我が国の大学にも当てはまる考え方だと思います。情報化時代の到来によって、何を学べばよいかが混乱をしているのです。あふれ出る情報に振り回され、細分化した薄っぺらい専門知識を振りかざすことに明け暮れた大学は、もはや無用のものになりつあります。真に学ぶということはどのようなことかを、皆さん方にも真剣に考えていただきたいのです。
 ソーシャル・ネット・ワークにおぼれ何が真実であるか、流れてくるノイズの識別ができない人が増えてきているのです。付和雷同する人、うわさ話にパブロフの犬のように条件反射を起こす人、うそをまき散らし中傷を得意とする人、スマホがなければ会話ができない人など、あまり関わりたくない人が増殖しています。宮城大学の中では、自分の言葉を使って行きかう人々と交流することができる場をめざしています。
 会話はスマホ、文章はコピペの学生生活だけは、送っていただきたくないのです。宮城大学は主体性を持った学習が展開する学び舎をめざしています。独立した知の存在として感性豊かな、人間らしい思考を身につけていただきたいと願っています。
 このような教育環境をどのようにして構築するか、学内では日夜議論を続けカリキュラムを大幅に見直し、新しいキャンパスをつくる作業に取り組んでいます。皆さん方にも、一日も早くこの作業に参加して頂きたいと考えています。宮城大学で今もっとも力点を置いていることは、人間らしい感性の涵養、コミュニケーション能力の向上、数理的思考と洞察力のある推量を学習するには、どのような教育活動が最適かの検討です。
 具体的には、一つ話題を提供いたしますので皆さんで考えてみてください。近年我が国の在り方が問われる時に、常に話題になる事柄に歴史認識という言葉があります。歴史認識とは何を指すのでしょうか。皆さん方は日本史や世界史について学習した経験があると思います。その学習の中で、あなたの歴史認識は、歴史から何を学びましたかと質問されたら、皆さん方ははたしてどのような答えをするでしょうか。歴史観は持ち合わせてはいないと、もし他人に指摘されるならばそれは歴史を学んでこなかったといわれているのです。
 歴史を学ぶことは年表を覚える事ではありません。過去の事象が現在にどのような関係をもたらし、未来においてどのように展開していくかを考える事だと思います。同様にグローバル人材の養成が必要と叫ばれていますが、このことは単に英語が上手になることを指しているのではないのです。この地球という星には、様々な人々が共存し日々の生活を営んでいることを認識できる生き方ができる人の事を指していると思います。
 他の世界を理解することで、自己中だけの狭い視野で物事を認識するのではなく、時には地球的視野で物事をとらえることができる人を指していると考えています。ストロナク学長が後で述べられるかもしれませんが、アメリカの多くの大学で教養教育の目的は、グローバル・グッド・シチズンを要請することで、単に物知り顔の人を養成することではないのです。

 次に申し上げたいことは、我が国でもようやく18歳から選挙権を持つという議論が、なされるようになってきたことです。若者の、政治に対する無関心が話題になって久しい我が国ですが、今日入学された方の中にも18歳の方がおられることと思います。入学を機に政治学や哲学の勉強を是非始めて頂ければと考えています。
 特に、デモクラシーについて考えて頂きたいと考えています。日本語では民主主義と訳されてきましたが、この制度の真の意味を今一度考える時期に来ているように思うのです。そこで、是非読んで頂きたい書物があります。フランスの政治思想家として活躍したアレクシ・ド・トクヴィルが表したアメリカのデモクラシーという本です。フランス革命の混乱が残る19世紀初頭に生まれ、パリ大学で法学を学んだ後アメリカに遊学しこの書物を出版しました。
 デモクラシーという政治体制を語る上で、この名著が生まれるには歴史的にもっともよい時期にアメリカを訪れたと言えるのです。政治と経済活動の大きな転換点にアメリカが差し掛かっていた時代でした。この変化が市場革命と通信革命で、現在のわが国にも当てはまる現象が生じていたのです。この変革は今日まで続いており、民主主義の危機が指摘されることになるのです。歴史はまだ回答を見出し得てはいないのです。
 未来をこれから切り開いていかれる皆さん方に、是非この人類の課題を突き詰めていっていただきたいのです。敗戦後70年の平和が持続してきたこの国を、世界の模範といわれるところにしていく志を持って勉学して頂きたいと思うのであります。
 アメリカの31代大統領であったハーバート・フーヴァーが残した言葉を紹介いたします。「老人は戦争を宣言する。しかし実際に死ぬのは、若者たちだ。」という言葉です。この大統領はあの大恐慌の時代に有効な策を見出し得なかったと酷評されたが、退任後も最も影響を持ち続けた大統領で、敗戦後のわが国も訪問し、ガリオア物資といわれる食糧援助を実施した人物でした。

 現在を生きる皆さん方には、大震災からの復興を通じて豊かな故郷を創造していくという大きな使命がある事を常に考えて日々の勉学に汗して頂きたいと願うものであります。このためには宮城大学のすべての資源を活用して、皆さん方の勉学を支援し続ける事をお約束して、友の学びあう喜びを一緒に味わおうではありませんか。

 最後に、皆さん方のご入学進学を心からお祝いし、有意義なキャンパスライフを過ごして頂けることを祈念して式辞を終わりたいと思います。

平成27年4月3日
宮城大学学長  西垣  克