ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
現在地ホーム > 大学からのお知らせ > 【平成25年度 卒業証書・学位記授与式】学長式辞

【平成25年度 卒業証書・学位記授与式】学長式辞

印刷用ページを表示する 掲載日:2014年3月20日更新

西垣学長式辞例年より多くの雪でキャンパスが覆われ、除雪に汗かく日々が続きましたが、ようやく春の兆しが見え始めた今日この日、ここに公立大学法人宮城大学の平成25年度卒業式を挙行できますことは、無上の喜びといえましょう。
まずもって、今までの勉学が実り無事所定の課程を修了して、ここに卒業式をお迎えになった皆さん方に対して、心からおめでとうとお祝いの言葉を述べさせていただきます。

思い起こせば、大学での生活にも慣れていよいよ本格的に勉学に向かう矢先に、千年に一度といわれる大震災に見舞われました。その被った被害の大きさは言い表すことすら困難なものでした。
ようやく復興の兆しが見え始め、日々の生活や生業も以前の状況に近づいてまいりました。しかしながら、いまだ多くの方々が仮設住宅での生活で何かとご苦労をされています。皆さん方は、大学で十分に学んだ成果を生かして、これからの宮城県をはじめ東北地方の発展に、貢献できる人材として活躍することが期待されているのです。
この困難な中で、皆さん方が存分に学習できたのは、ご両親をはじめ関係したすべての皆さん方のご支援の賜物と申せましょう。本日ご出席いただいたご家族の皆様方に対して、心からの感謝を述べさせていただくと同時に、お慶びもいかばかりかと拝察申し上げます。

宮城大学を設置し、運営面でも何かとご配慮をいただいております、宮城県庁からは公務ご多用な中、三浦副知事様をはじめ、大学と連携事業を進めています市町村の皆様方と、産学連携事業を実施しております企業の皆様方にも、本日はご臨席いただきまして心から厚く御礼のほど申し述べさせていただきます。

さて、皆さん方が高等教育の最高学府を終えられるにあたり、ぜひ心にとめておいていただきたい事柄について一言述べさせていただきたいと思います。
ご存知のとおり、わが国は現在世界的にみても例のない速さで少子高齢社会に移行してきています。その実態は想定していた以上に、現実に直面している諸課題は深刻であり、社会政策面でもその対応に遅れが生じてきています。皆さん方が高齢者になった時に、わが国はどのような姿で存在しているでしょうか。現在の医学の進歩が続けば、人類の平均余命は120歳になると多くの研究者によって予測されております。
この長い人生をどのようにすれば、意味あるものとすることができるのでしょうか。わが国は医療制度や年金制度について戦後の経済成長に合わせて、その体制を整備してきました。ところが、経済成長が常に右肩上がりの時代が過ぎると、このスキームはもろくも壊れ始めてきています。皆さん方が高齢者になったときは、「昔、年金制度があったんだってね」という事態になりかねないのです。
同じような状況に置かれている欧米諸国では、人生を自活していけるような社会参加の在り方を模索し始めています。この政策の中に大学制度もしっかりと位置づけられ、高等教育は最終学歴ではなくロング・ライフ・エデュケーションとして、学び続ける人生を提案しています。このような考え方では、今日の卒業式は一つの区切りでしかなく、一生学び続ける人生という形が考えられるのです。
社会保障だけを当てにして生きる生き方から、自力で自分らしい人生をいかに構築していくかが、問われていると思います。大学の卒業が、次の大学へのスタートになるのです。一枚の卒業証書だけで、一生を送るのは段々難しくなってきています。この意味において、大学は学ぶことを学ぶと考えた、19世紀ドイツのベルリン大学の教授で、教育学者、哲学者、神学者でもあったシュライアマハーの思想は、大いに共感できるものだと思います。
若い時からスマホで、指のリハビリテーションをするだけでなく頭の訓練により多くの時間を費やすような人生を送っていただきたいと考えているのです。そのために、宮城大学はいつでもそのドアは開いて皆さん方の来学を心から歓迎いたします。書物は貴重なもので、転写することしかなかった時代では、今日の情報があふれる社会は想像もできなかったものでしょう。今日ではあふれる情報をいかに選別し、だまされないようにするかがその人の知的水準を測る尺度になってきています。「若者よ、スマホを置いて書をもって野に出よう」と言いたいのです。自分の感性を研ぎ澄まし、未知なるものに挑戦し知恵を磨いてほしいのです。

現在の世界で、企業においても社会的な活動面においても求められている人材は、グローバル人材とされています。ここで求められているのは、英語が話せる人材を指しているのではありません。世界の地勢や歴史と文化を認識し、さまざまな人々と共生して生きていける人を指していると思います。偏狭な差別感や蔑視感で、自分の利益だけを追求する生き方は克服されなければならないのです。
ここに一冊の書物があります、「人さまざま」という表題の岩波文庫で1982年に翻訳されたものです。作者はテオプラストスで紀元前372年頃生まれ、アリストテレスの弟子として学び、その後アリストテレスが創設した学園を継承発展させた、二代目の学頭を務めた人物です。この人の名前は、アリストテレスにより、話術の優美さから神のごとく話す人と改名されたと伝えられています。プラトンにより最初にアカデミアといわれる人類最初の学び舎が作りだされました。知的関心が教養人として芽生えた時代に、現在の大学のひな形ともいえる、学問をする場所を継承発展させた人物です。
歴史的にはアレキサンダー大王が活躍していた時代で、地中海を中心にある種の世界観が擁立されてきた時代でありました。エジプトのアレキサンドリアは、当時の知的人物の集う街で世界の中心的役割を果たしていたのです。そこには様々な風俗の人々が集い、世界中からの物珍しい物品にあふれていた都市でした。この学園には2000人を超える学徒が参集していたとされています。宇宙を問い、人生を問い、万物の始原について研究活動が展開されていた中で、これらの人々を鋭い観察から分類し、人間とは何ぞやという問いに対して記述された書物です。
作者の洞察力は、人類という集団は表層的な違いより、人間行動の側面から類型化が可能と考えて表わしたものです。現在の人々と対比して、科学は進んでも人類はさほど賢くなっていないようにも思われるのです。大学は、かつて物事の本質を究め、審理を探求するところと考えられてきました。このギリシャ文化が花開いた時代の学園は、志はおなじものであったろうと思われます。十分な観測機器もなかった時代に、万物の資源はアトムにあるとした タレスの推察はおどろくべきものです。現在でも宇宙の成り立ちや構成については全体の5%しか把握されていないのです。古代人の智慧を侮ってはいけないのです。
今日の若者の特性として、概して他者や世界に対して無関心であったり、引きこもり的傾向が指摘されています。他人は自分と違うから面白いのであって、すべての人がコピーされたようであったのなら、お付き合いする必要はなくなるのです。様々な価値観の人々と、どのようにして折り合っていけるかが、その人の教養力と言えるでしょう。
これからの時代は多様な時代といわれていますが、とかく日本人は均一性を好み、異文化への適応力が低いとされています。皆さん方はぜひ臆することなく、自分をさらけだして多くの人と対峙し、他者という鏡に映る姿から自己分析できる能力を身につけて、豊かな人生を送っていただきたいと希望しているのです。
世界の多様性に負けない強靭な個性を、不断の精進で身につけていく覚悟をして卒業していって頂きたいと思っています。皆さん方が大いに羽ばたくと同時に、この宮城大学もいかなる時代や社会においても存在価値のある大学として日夜改革を進めてまいります。

世の中では簡単に希望どおりにならないこともあることと思います。古来言われているように、何事も3年間ぐらいは辛抱がいるのかもしれません。学ぶ必要を感じたときは、いつでも皆さん方の知の故郷である宮城大学を思い出して訪れてください。
震災のダメージが残るこの地を、ぜひ一緒に豊かな地域に創造する事業を、これからは学生としてではなく、仲間としてともに作り出していこうではありませんか。