寄り道のススメ
-国際インターンの事例検討および国内インターンとの比較-
2009年1月30日
20521003 安積 圭佑
20521012 大宮 光
20521037 後藤 樹美
20522092 本多 実佳
-目次-
1.はじめに
1.1 ディズニー国際カレッジプログラムとは
1.2 本総合研究の目的
1.3 本レポートの構成
2.ディズニー国際カレッジプログラムについて
2.1 概要
2.2 事前準備
2.3 インターンシップ前期(2007/10-2007/12)
2.4 インターンシップ後期 (2008/1-2008/5 or 2008/8)
2.5 主な費用
3.インターンシップ参加事例
3.1 フードオペレーション事業での研修事例(後藤)
3.2 マーチャンダイズ事業での研修事例(本多)
3.3 オペレーション事業での研修事例(大宮)
3.4 国内インターン事例
4.分析・考察
4.1 国内インターンシップのプロス・コンス
4.2 国際インターンシップのプロス・コンス
4.3 考察
5.結論
謝辞
参考HP
付録
1. はじめに
本総合研究は、2007年度ディズニー国際カレッジプログラム(以降「ディズニープログラム」と称する)について、著者らのうち3名が日本人第1期生として参加して得たデータと実体験を解説し、別学生が体験した国内インターンシップとの比較をとおして、ディズニープログラムの経験の意義を伝えることを目的とする。ディズニープログラムにおいては、大学を1年休学するというある種のリスクを負った代わりに得られた経験にどのようなキャリアバリューが見出されるのか、という問題提議に対し"意味のある寄り道"であったことを様々な面から分析・検証する。また、ディズニープログラムを始め、各種のインターンシップへの参加の有意義さを広く訴え、同時に大学側に求められるサポート体制について考える。
著者らは、自身が体験した貴重な経験をより多くの人と共有したいと考えており、それと同時に意義のあるキャリアパスを示唆したいという理由から、本テーマを設定した次第である。フロリダ州オーランド・Walt Disney World(以降「WDW」と称する)の現地で経験を積んだインターンシップ経験者から発せられるリアリティあふれる情報として、楽しんで読んで頂ければ幸いである。
1.1 ディズニー国際カレッジプログラムとは
ディズニープログラムとは、アメリカ合衆国フロリダ州オーランド市にあるWDWにてフルタイムワーカーとほぼ同様なスケジュールの元、通常キャストメンバーとして働き、またディズニー・カレッジの提供する講義を受ける、「学ぶ・暮らす・働く」を実現できる有給研修プログラムである。日本国内からは2007年度より初めて募集を始めたインターンシップであるがアメリカ国内の学生向けのディズニーカレッジプログラム(Disney College Program)は25年前から行われている伝統的なプログラムであり、毎年8000人以上もの学生を受け入れている。国際プログラムとしては北米、南米、ヨーロッパ、アジア、アフリカ全ての地域から50カ国以上の学生が参加している。
1.2 本総合研究の目的
本総合研究は、3つの国際インターンシップの事例を紹介、分析し、国際インターンシップの意義を学生および教員に理解してもらうことを目的としている。著者4名のうち3名は2007年の10月からディズニープログラムに参加してきた。この3名が経験した国際インターンシップを客観的にまとめ、概要をあげることで国際インターンシップの現状や概略を学生および教員に理解してもらう。その上で、事例として個々の経験をあげる。3名は同時期に同じプログラムに参加してきたが、職種も職場も異なるためその経験はさまざまである。それらの事例を比較するとともに、国際インターンシップにおける“プロス”と“コンス”をあげる。そして、それに基づき、本プログラムを考察・分析する。さらに、これら3つの事例・考察に加えて、国内でのインターンシップの経験を第4の事例としてあげ、同様の考察を行う。そして国内インターンシップで得られるものと国際インターンシップでのそれを比較する。その過程から国際インターンシップへ参加することの意義や価値を見出していく。最終的には、学生と教員、双方に国際インターンシップについて理解してもらい、今後国際インターンシップで貴重な体験をする学生が少しでも多くなることを目的としている。
1.3 本レポートの構成
第1章では本総合研究およびディズニープログラムについて述べる。1.1ではディズニープログラムの概略述べ、ディズニープログラムについて読者に理解していただく。1.2において本総合研究の目的、目指すものを明らかにする。そして本節により本総合研究のレポートの構成を紹介する。
第2章ではディズニープログラムの具体的な内容-募集段階から始まり事前準備、ノースカロライナ州・The University of North Carolina at Greensboro(以降「UNCG」と称する)での語学研修の様子や大学施設の説明や寮での過ごし方、フロリダ州オーランド・WDWでのインターンシップのスケジュール、周辺環境、住環境など-を解説していく。読者にはこれによりプログラムの理解をより深めていただきたい。
第3章では本プログラムに参加した著者ら3名の実体験、国内でのインターンシップ体験を4つの事例としてあげる。3.1ではフードオペレーション部門、3.2でマーチャンダイズ部門、3.3でアトラクションオペレーション部門での事例を挙げ、さらに3.4にて国内インターンシップの事例を加える。各事例の中で担当者がそれぞれのインターンシップ体験のプロス・コンスをあげていく。
第4章では第3章の事例で挙げられたプロス・コンスに基づき本プログラムについて考察・分析を行い、同時に国内インターンシップについても同様に考察・分析を行う。その考察・分析を国際インターンシップと国内インターンシップについて比較し、国内インターンシップの良さ・改善点、さらにそこから国際インターンシップの価値や意義を見出す。
第5章では結論として、第4章の考察・分析をもとに国内インターンシップと比較した上での国際インターンシップの価値や意義について述べる。さらに学生・教員双方に向けて国際インターンシップに向けた提言を行う。
2. ディズニー国際カレッジプログラムについて
ここではディズニープログラムについて解説する。
2.1 概要
ディズニープログラムは、前期の米国パートナー大学・語学学校での授業と、後期のWDWでのインターンシップから構成される。
前期は、米国のパートナー大学に留学し、専攻分野と関連した講義を1セメスター受講、もしくは米国パートナー大学内の語学学校での語学集中講座(9週間もしくは18週間)を受講する。この間に、後期のインターンシップ期間に上司や同僚、世界各国からのゲストと円滑にコミュニケーションを図る上で必要となる英語力・異文化交流能力や国際性を身に付ける。後期(5ヶ月間もしくは7ヶ月間)のWDWでのインターンシップは、米国パートナー大学の指導教官とディズニーのスーパーバイザーの指導の下でフルタイムの仕事に従事しながら、ディズニー・カレッジの講義等を受け、実践と理論の両方から“ディズニー”の本場にて、ディズニービジネスの真髄を身をもって体験する。このインターンシップで経験できる職種は18種類ある。
このインターンシップは米国大学の正式単位として認められ、大学側からJ1ビザ(交換留学生ビザ)が発給される。
期間全体のスケジュールは付録に記載する。
2.2 事前準備
まず学部選考・学内選考、その後に日本のディズニープログラムにおける窓口であるNPO法人WILによる国内書類選考、電話選考、最終面接となっている。最終面接に関してはディズニーカンパニーの国際リクルーティングチームの方との直接面接となり、全て英語での受け答えになる。
私達は第一期生ということで、『日本国内での募集は50人』ということだったが、面接時は約20人が会場に集まり、実際にディズニープログラムに参加したのは15人になっている。
合格連絡を受けた後、米国パートナー大学であるUNCGへ提出するための書類準備、ビザの取得準備、アメリカ大使館での面接等がある。
2.3 インターンシップ前期(2007/10-2007/12)
私達はUNCGにおいて10月21日~12月20日までの期間に語学研修を行った。語学研修と同様に、アメリカでの生活に慣れるためにも大事な期間となる。
2.3.1 UNCGのファシリティ
学内には学生が住む寮、図書館、カフェテリア(食堂)、コンビニエンスストア、ブックストア、ジム、テニスコート、美術館、劇場、屋内スイミングプールなどがある。日本の大学との大きな違いは、学内に生徒が住み込める環境があるということだ。衣食住が全て学内にそろっているので、基本的に学内から出なくても生活をすることが可能となっている

2.3.2 語学研修
私達は、語学学校での集中講義を2ヶ月間受けた。
授業内容はCS(Communication&Speaking)とRW(Reading&Writing)の2つの授業を各110分間月曜日から金曜日まで受講する。レベルはCS、RW共に5段階に分けられており、レベルは入学時に行われるWritingのテストと教師陣との面接によって決められる。授業時間は各レベル、クラスによって異なるが、基本的に12:00から13:50にCS、16:00から17:30にRWが行われる。これらの授業は“ディズニープログラム専用”ではなく、語学学校に通っている他の学生とともに通常授業を受講する。
授業中は、自分の母国語を禁止しており、クラスによっては罰金を課すところもある。宿題は基本的に毎日出され、クラスによって量も内容も異なる。2ヶ月間の間にプロジェクトと呼ばれるチーム課題を複数課せられ、基本的に異なる国のクラスメイトとチームを組み、それぞれ授業中はもとより、休み時間や放課後に集まりプランを作り、決められた期日にプレゼンテーションを行う。
授業以外にも英語に関する課外授業があり、参加は自由となっている。課外授業の内容としては、字幕なしで映画を見て映画に出てくる表現を聞き取るものや、文法、語彙の学習など幅広くある。
約2ヶ月ごとに上達したレベルによってクラスの変更を行い、CS、RW各レベル5をクリアすると、自動的にUNCGへの入学許可を得ることになるため、UNCG入学を目指している学生は向上意識が非常に強い。
学生の人種構成はアジア人(中国人、韓国人、日本人)、そしてラテン系(ブラジル人、コロンビア人等)が多い。
2.3.3 UNCGにおける住環境
UNCGでの住居は大学付属の寮になる。学内には約10つの寮が点在しており、そのうち一つInternational House(I-House)に滞在した。I-Houseは名前の通り、アメリカ国外からの留学生が多く、国際色豊かな寮である。国際交流パーティなどは基本的にここで開催される。建物は5階建てで、住居スペースが各階4つある。各住居スペースは男女ごとに分かれているが、入出に関して禁止事項があるわけではない。
寮に入る際はセキュリティロックを利用、各部屋への入出はカギを利用する。このようなセキュリティ体制なので、門限はない。
部屋は2人一部屋で大きさは12畳程。各自ベッド、机、クローゼット、棚が備え付けられている。ベッドに必要なリネン用品は各自用意することとなる。各住居スペース1箇所にいくつかのトイレとシャワー、洗面台が備え付けられており、それをフロアの住民およそ40人とシェアする。基本的に部屋へは寝るためだけに帰るものだが、隣近所で友人を作り、部屋を行き来することもできる。
各フロアに冷蔵庫・コンロ・シンクなどのキッチンシステムがあるが、基本的にカフェテリアで食事を取る。
2.3.4 UNCGでの食事
カフェテリアは朝7時から夜21時まで開いており、オープン中は常時食べ物がある。主な食べ物はサラダバー、ピザ、パスタ、フルーツバー、シリアル、ケーキ、クッキー、パン、ライス、ベーコン、ハンバーガー、フライドポテトなど、典型的なアメリカンフードである。基本的に食べ物の種類に関しては日々似たようなもの、もしくは同じ食品が並ぶ。食事代は一食5ドルだが、私達の場合、学生証にカフェテリアで制限なく食事が取れるUnlimited Planが自動的に付加されていた。寮にいる交換留学生などは食事数に制限をつけたLimited Planをつけている学生もいた。
UNCG近隣には日本食はもとより、韓国、中国、メキシカン、アメリカン、イタリアン、フレンチなど様々な国のレストランがある。しかし、基本的全ての場所はUNCGからは徒歩圏内ではないため、車が必然的に必要となる。
2.3.5 UNCG周辺の環境
徒歩圏内には学生が休み時間の度に集まるカフェやファストフードレストラン、本屋、画材屋、コンビニエンスストアなどの小さな商店街がある。UNCG周辺から出ているバスを利用すると、Greensboroの駅や、ショッピングモール、スーパーマーケット(ウォルマート、ターゲット)などへ行くこともできる。UNCG周辺は大変治安の良いエリアとなっているが、やはりアメリカなので夜から深夜にかけての外出は控えたほうが良い。
また、寮に住まない学生のためのアパートメントが徒歩圏内に沢山ある。
2.3.6 UNCGのサポート体制
国際インターンシップ担当の職員が常駐しており、ディズニーへの必要書類等の準備から生活面での心配事まで親身になって相談にのってくれる。
インターンシップ後期にあたる、WDWでの研修中も2~3ヶ月に1度の頻度でノースカロライナ州からフロリダ州まで訪れ、ディズニー・カレッジ等で受講しないといけないクラスについて、仕事場・私生活でのトラブルなど様々な面について相談にのってくれる。
また、アメリカ到着後、友達も日本人で固まりがちな私達に語学学校のほうからほぼ毎週開催される週末のトラベルや、サンクスギヴィング休みの旅行、地元の人との交流などのイベント情報を伝え、積極的に参加を促してくれる。このような機会に違うクラスの生徒や、UNCGの学生と知り合うことができる。Greensboroの住民は、国際交流に積極的でこのような留学生サポート団体が学外にも複数ある。
2.4 インターンシップ後期 (2008/1-2008/5 or 2008/8)
私達は1月6日~5月16日まで、もしくは8月8日までアメリカ合衆国フロリダ州オーランド市にあるWDWにて「学ぶ・暮らす・働く」を実現する研修に取り組んだ。
2.4.1 オーランドについて
フロリダ州は、アメリカの南部に位置する州で亜熱帯気候に属し、冬場でも温暖である。夏場は日本の気候のように湿潤で気温は40度近くまで上がる。オーランドは中北部に位置行して多くのテーマパーク(Universal studio、Sea World等)が建設され、今現在は“オーランド=エンターテイメントの場所・テーマパークの聖地”という構図が出来上がっているといっても過言ではないだろう。
フロリダを含む、アメリカ南部はプエルトリコやメキシコ、南米からの移民が多いのでスペイン語が話せる人口比率が他州に比べて高い。
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2.4.2 Walt Disney Worldについて
WDWはオーランドを大きく変えたテーマパークであり、Walt Disney Companyが作った2番目の、そして全世界最大のアミューズメントリゾートである。大きさは約122km²、山手線の円内とほぼ同等な大きさとなっている。
WDW内には4つのテーマパーク(マジックキングダム(Magic Kingdom)、エプコット(EPCOT)、ハリウッドスタジオ(Hollywood Studio)、アニマルキングダム(Animal Kingdom))と20のリゾートホテル、2つのウォーターパーク(タイフーンラグーン(Typhoon Lagoon)、ブリザードビーチ(Blizzard Beach))、6つのゴルフコース、レースサーキットなどがある。
また、複合スポーツ施設群であるディズニー・ワイドワールド・オブ・スポーツ・コンプレックス、多くのショッピングスポットやシルクドゥソレイユ専用シアター、インタラクティブテーマパーク:ディズニークエスト(Disney Quest)があるダウンタウンディズニー(Down Town Disney)、セレブレーションというディズニー初の建売住宅街など、多種多様なエンターテイメントが敷地内に存在する。
WDW内の移動は、ゲスト(※1)個人所有の車移動はもちろん、ディズニーが運営するディズニーバスが循環しているので、ディズニーホテルに滞在しているゲストはそのバスを利用してホテル⇔テーマパークの行き来を行える。また、ディズニーホテルに滞在していないゲストでも利用可能となっている。ゲストは基本的に複数日に渡る長期期間滞在し、4つのテーマパークを回るほかに、周辺のディズニー以外のテーマパーク訪れ、“オーランド”を心行くまで楽しむ。
また、WDW近隣のポートカーニバルから出航するディズニークルーズライン(Disney Cruise Line)というディズニーによるクルーズもあり、WDWの滞在と含めてクルーズへ行くゲストも多数いる。
2.4.3 WDWのキャストメンバー(※2)について
WDWで働いているキャストメンバーは大きく2種類に分かれる。一つはディズニーカレッジプログラムやディズニー国際カレッジプログラムなどのディズニーによるアカデミックプログラムに参加している研修生、もう一つはフルタイムワーカー(もしくはパートタイムワーカー)である。就労しているエリアによって多少変動するが、約半数のキャストメンバーがプログラム参加生である。
WDWでの仕事は、ホスピタリティサービスが基本となっており、またフロリダという気候条件も合わさり、体力・気力ともに非常に高いレベルが要求される。“パークへの無料入場”や“保険制度”などのキャストメンバー用の福利厚生は非常に優れているが、給与が他の仕事に比べて非常に良いというわけではない。そのため、フルタイムワーカーは既婚者や退職後の第二の仕事というような人たちの割合が高い。もしくは複数の仕事を掛け持ちでこなしているような人たちがほとんどだ。
このような状況を補うために、プログラム参加生が取り入れられているのが事実である。ディズニープログラムはアカデミックプログラムなので、参加学生の第一目的は「WDWでの経験」で「給与」ではない。そのため、最低時給での雇用が可能であり、「経験を積む」ためにフルタイムワーカー同様の仕事をこなす。プログラム参加生へのケアはフルタイムワーカーと劣らないような状況であるが、祝日(※3)に出勤する際は通常時給の2倍を全てのフルタイムワーカーには支払われるのにもかかわらず、プログラム参加生は通常時給となっている。
しかし、この経験からディズニーカンパニーに本気で就職しようとする学生が数多く生まれるのも事実である。実際アメリカ国内では、カレッジプログラムから直接フルタイムワーカーもしくはパートタイムワーカーになる学生や、カレッジプログラムの上級プログラムに値するDisney Professional Internship(参加は米国内大学生に限る)に参加する学生が数多くいる。
2.4.4 住環境(セキュリティ、ファシリティ)について
カレッジプログラム参加者は、ディズニー所有のアパートメント(※4)に暮らす。アパートメントはWDWから車で10~20分程のところに全部で4つあり、全ての24時間セキュリティが整っている。各アパートメントの住民はアパート専用のIDを常時携帯し、アパートメントへの出入りの際はセキュリティへ掲示しないと入れない。外部の人がアパートメントに入る場合は、アパートメントの住民によるサインイン、身分証明書の掲示、誓約書へのサインが必要となる。例えディズニー所有の他のアパートメントに住んでいる人だとしても、他のアパートメントに入る際は、時間外(23時以降)は同様な手続きが必要となる。
アパートメント周辺には、徒歩圏内にレストラン・ファーストフード・コンビニエンスストア・ガソリンスタンド・カフェ・アウトレットがあり、UNCGのころの周辺環境よりも大変便利な環境になっている。
部屋は2人・4人・6人・8人部屋とバリエーションがある。人数が少ないほど家賃は高くなる。私達が住んでいたアパートメントには、6人部屋が基本的に12部屋ある建物40棟あった。室内には共同で使うリビング・キッチンがあり、2人でシェアする部屋が3つ、3つのうち一つは室内にプライベートバス・トイレがあるが、他の2つは共同で使用するバス・トイレが室外にある。各部屋にベッド、棚、鏡、クローゼットが備え付けられている。
住民は、カレッジプログラム・国際カレッジプログラム参加者、ディズニーによる別プログラム・キャリアスタートプログラム参加者、フルタイムワーカーなど多岐に渡る。ディズニーによる就労プログラムは非常に多くあるため、ほぼ毎日新しいキャストメンバーがアパートメントに入り、そして出て行く。時期によって人種比は多少変動するが、基本的に半数以上は米国内プログラムの学生で、他はアジア系、ラテン系などである。
アパートメントの敷地内には、クラブハウス、ジム、プールがあり、プールでは新しく来たプログラム参加者向けのウェルカムパーティやムービーパーティなどが周期的に開催される。クラブハウス内には、掃除用具などをレンタルできるレンタルルーム、郵便物を受け取るオフィス、コンピュータルーム、授業・キャリアにおいて必要な本や映画のDVDを無料で借用できるラーニングセンターがあり、常時人で溢れている。
2.4.5 交通
アパートメントから、勤務地となるWDW内へアパートメントに滞在しているキャストメンバー専用のバスが出ている。乗車の際にはアパートメントのIDを運転手に掲示する。
バスは4つのアパートメントを回り、その後勤務地へ行くため、直接行けば10分ほどでも、通勤に30分~1時間かかる場合が多い。
2.4.6 ディズニー・カレッジの講義
ディズニー・カレッジでは約3ヶ月を1タームとして複数のクラスを受講できるようになっている。コース内容はAdvanced Studies in Hospitality, Corporate Communicationsなど計8つに別れており、様々な側面からディズニービジネスについて学べるようになっている。講師陣は元リクルーティングチームやマネージャー経験者など、ディズニーについて精通している方々ばかりだ。
クラスは1週間に1度、午前もしくは午後に3~4時間行われ、毎週宿題が課される。また、グループワーク、プレゼンテーションもあり、グループ内で仕事との折り合いをつけて現地調査に出向いたり、プレゼン準備を行ったりする。
クラスメイトはほとんどが米国内のカレッジプログラム参加者である。彼らはこのディズニー・カレッジで取った授業を大学の単位として互換できるため、1タームに4つのクラスを取っているような人もいる。また、授業中はアメリカの大学の特徴でもある積極性が顕著に現れており、多くの学生が積極的に質問をする。また、授業のスケジュールは、ディズニー・カレッジ側からカレッジプログラム参加学生それぞれが働いているエリアのスケジュールマネージャーへ伝えられ、授業時間に就労スケジュールが組まれることがないよう取り計らってもらえる。
2.5 主な費用
NPO法人WILへの振込み費用(UNCG費用+Disneyへの振込み):100万円
ビザ申請費用:100ドル
渡航費:片道800ドル~1000ドル
Disney College Program参加費用(個人振込み):85ドル
生活費(フロリダ):300~500ドル/月
時給:7ドル程(規定の時間を越えた就労は25%増で支払われる)
家賃(6人部屋の場合):週75ドル
<注>
※ 1 ゲストとはWalt Disney Theme Parksに訪れた来場客を示す。
※ 2 キャストメンバーとは、Walt Disney Theme Parksで就労している人々のことを示す。
※ 3 アメリカ主な祝日は、New Year’s day(1月1日)、Independence Day(7月4日)、Thanksgiving Day(11月の第4木曜日)、Christmas Day(12月25日)となっている。このような祝日は、ほぼ全ての店舗は営業をしておらず街中は閑散としている。
※ 4 アパートメントは、“40個あまりの建物が敷地内に建てられている敷地”を示す。
3. インターンシップ参加事例
ここでは、国際インターンと国内インターンそれぞれの事例について紹介する。
3.1 フードオペレーション事業での研修事例(後藤)
アメリカで過ごした7ヶ月間はそれまでの私の考えていた世界とは全く違った世界を肌で感じることのできた7ヶ月間だった。当たり前に出来ていたこと、当たり前にしてもらっていたことが当たり前ではなくなり、自分がしっかりしなければ、自分で行動しなければ生きていけない世界だった。アメリカと日本との文化の違いを目の当たりにするたびに、自信を喪失し、苛立ち・戸惑いを隠しきれなかった。しかし、それと同時に自分に自信を持つことの意義・大切さ、そして自ら行動する力を得ることができた。広く・浅く・多くの人と付き合うのが苦手な私は、それまでいつも狭いコミュニティの中に閉じこもりがちで、そこから出て行くのを怖がっていた。それは自分に自信がなかったからだ。アメリカに来て自分の意見を自由に言い合える文化に出会い、いろいろな考えや文化に触れ、私の心の中に変化が起きていった。この変化によって自分に自信を持って自立して生きていこうとするきっかけとなった。私に大きな変化をもたらした7ヶ月間を振り返ってみたいと思う。
◆基本情報◆
・目標と達成度・・・WDWのキャストとして働くことを通して、本場のホスピタリティビジネスを体験する。(達成度は3.15にて後述)
・期間・・・UNCGでの語学研修:約2ヶ月間(2007/10/21– 2007/12/21)
WDWでのインターンシップ:約5ヶ月間(2008/01/06 – 2008/05/16)
・ 勤務地・・・Toluca Legs Turkey Co. (ターキーレッグ、ホットドック)
Rosie’s American Café (ハンバーガー)
Catalina Eddie’s (ピザ、サンドウィッチ)
(Disney’s Hollywood Studios内、詳細は3.1.5にて後述、位置は付録参照)

・職種・・・フードオペレーション(レジ接客・キッチン等、詳細は3.13にて後述)
・時給・・・基本時給$7.25. 1日8時間または週40時間以上の労働は$10.40.
・選択クラス・・・Advances Studies in Hospitality Management,
Communication
(詳細は3.1.2にて後述)
・WDWでの週のスケジュール(週平均就労時間40時間//繁忙期60時間)

3.1.1 UNCG, INTERLINKでの生活
UNCGで暮らした2ヶ月間はアメリカで生きていくこと・異文化の中で生きていくということに慣れるための2ヶ月間だった。アメリカについた日。周りの会話はもちろん、迎えに来てくれたUNCGのスタッフの会話もまったく理解できない私がいた。こんなところで本当に暮らしていけるのであろうか。“不安しかなかった”と言っても過言ではないほどの緊張だった。そんな中で始まったアメリカでの生活。日本にいたときは頼れる友達がいて、いつでも助けてくれる先輩がいた。自分がしっかりしなくても周りに頼って甘えていれば何とか生きていける。そう思っていた。そしてそれが自分であり、そういう自分だから周りから可愛がってもらえるとさえ思っていた。しかし、たった1人でアメリカに来て、頼れるものは何もなかった。そのときに私は始めてここでは自分がしっかりしなければ生きていけないのだと気付いた。それに気付いたからは自分で考え、自分で決定し、ひとりで行動するという習慣が自然と身についていった。またThanksgiving DayにはNew Yorkに旅行に行くこともでき、新しい国籍の違う友達と多く触れ合うことでたくさんの思い出を作ることが出来た。
【語学学校】
前述のようにC/SとR/Wの2つのクラスを受講したが、どちらのクラスも毎日課題があった。高校を卒業して以来、“宿題をする”という営みから遠ざかっていたため、毎日の課題をこなすことすら大変だと感じていた。毎日の課題のほかにC/Sのクラスでは近隣の小学校に日本の文化を教えに行ったり、映画のワンシーンを演じたりするなどのグループワークもあった。そのグループワークを通して、新しい友達もでき、他の国の文化に触れることもできた。文化の違いに戸惑い、苛立ちを感じることも多かったが、その思いがフロリダに行ってから受けるカルチャーショックの衝撃をやわらげてくれたのだと思う。反省点をあげると、私はものすごく人見知りをするので、先生やクラスメイトに自分から話しかけられず、そのため英語力がなかなか伸びなかったことだ。もう少し自分から積極的にアプローチできれば何かが変わっていたのかなと今強く感じている。
【生活】
UNCGでは共同生活とアメリカンな暮らしの両方を学ぶことができた。
ルームメイトは20歳の韓国人で、同じInterlinkの生徒だった。彼女はとても勉強熱心で、毎晩遅くまで勉強しており、その英語力はかなりのものだった。そんな彼女の姿を見て刺激を受けたし、勉強方法などについてアドバイスをもらうことができた。基本的に私は私のペース、彼女は彼女のペースで生活していたが、私が困っているとき彼女は必ず助けてくれた。彼女がいたから安心してUNCGで過ごせたといっても過言でもないほどいいルームメイトで、分かれるときは2人で号泣したものだった。
休日は友達と買い物や映画に行ったり、ホームパーティーに参加したり充実した時間を過ごすことができた。放課後は毎日のようにジムに通い、汗を流した。ジムでは一緒にトレーニングするうちに顔見知りや友達も増えたし、アメリカのテレビを見ることができたのでそれもまた英語の勉強になった。カフェテリアの食事も最初の頃はアメリカンフードが口に合わず、サラダばかり食べていたので少し痩せてしまったが、Interlinkが終わる頃には何でも食べられるようになり、体もすっかり戻っていた。アメリカ生活に慣れる面でUNCGでの生活は意味のある期間だったと言える。
【冬休み】
UNCGでの生活が始まってすぐに、冬休み期間(Interlink修了後、クリスマスからフロリダでの研修がスタートするまで)に滞在する場所がないことを知らされた。UNCGの寮にも滞在できず、旅行をするもの不安があったので私は日本への一時帰国を選択した。理由は純粋に日本が恋しかったからである。日本に帰ると決めたものの、クリスマスシーズンということもあり、チケットの手配もなかなか厳しいものだった。日本への帰国の便は見つけられても、日本からフロリダに行く便がなかなか手配できずに一苦労だった。やっとのことでチケットを手配したのだが、UNCGに来るときは5月のインターンシップ修了まで帰国しないと思っていたため片道航空券を購入していた。そのため冬休みも片道航空券で一時帰国、そして片道航空券でフロリダに飛ぶという非常に支出の多い一時帰国となってしまった。Interlinkの授業が終わってから帰国するまでの数日間はInterlinkでできた友達のアパートに滞在した。そのアパートは日本人1名、韓国人2名でシェアしており、日本人の友達がいて安心できたうえに、韓国人の友達とは英会話の練習ができ、有意義な時間を過ごせたと思っている。日本には1週間ほどの滞在となったが、大好きな東京ディズニーリゾートのクリスマスとお正月のイベントにも行くことができたし、半年会えないと思っていた友達や家族とも楽しい時間を過ごせた。この冬休みで英気を養って、“いざフロリダへ!!”と意を今回のインターンシップのメインであるフロリダでの研修へ戻ることができた。


3.1.2 Disneyでの生活 ~学ぶ編~
私は他の2名よりも滞在期間が1ターム短かったため、週に2回クラスを履修する必要があった。履修したクラスはAdvanced Studies in Hospitality ManagementとCommunicationの2つ。
Advances Studies in Hospitality Managementは毎週月曜日の朝8時から12時までの4時間授業。授業内容は主にケースタディで、実際の現場(ホテルやお店)で起こったトラブルなどを事例とし、その原因や解決方法を探していくといった学習をした。評価方法はプレゼンテーションと2週間に1回程度のレポート提出、期末試験。プレゼンテーションは与えられた書籍の中から1つの事例を選び、それを考察・分析し、事例に対する自分たちの提案をプレゼンテーションした。レポートは1つの企業(自分が働きたい企業、私の場合は東京ディズニーリゾートを経営する(株)オリエンタルランド)に焦点を絞り、その企業についてのSWOT分析、自分がその企業で何ができるのか・何をすべきなのかなどについて数回に渡ってレポートした。レポートは文法・スペルミスはもちろん、表紙のフォームから余白の幅まですべてが評価の対象となり、容赦なく減点された。最後の期末試験も辞書の持込が不可で、ICP(International College Program)の生徒には厳しい講座であったといえるが、外国で授業を受けるという貴重な体験ができる講座でもあった。
Communicationは毎週水曜日、朝8時から12時までの4時間の授業。授業内容は先生が用意してくださる新聞や雑誌の記事を題材としたケーススタディであった。具体的には企業内の組織のあり方やコミュニケーションのとり方などを学んだ。評価方法は中間試験とプレゼンテーションの2つ。中間試験は予め与えられた事例(今回は油田開発に関する事例)をもとに問題が出される形式で、持ち込み可能(ノートや辞書など。インターネットの利用以外は全て可能)、そして英語の文法ミスやスペルミスは減点の対象にはならず、先生が理解可能な英語であれば大丈夫といったシステムだった。そのため私たち日本人をはじめとするICP の生徒に優しいテストだったと言える。最後のプレゼンテーションは機械的に分けられたグループごとにコミュニケーションに関する書籍1冊を選び、その内容を要約しプレゼンテーションするというものだった。私たちのグループは歴代のアメリカ大統領と国民のコミュニケーション手段についてプレゼンテーションした。
3.1.3 Disneyでの生活 ~暮らす編~
6人で1つのアパートメントでの共同生活。もちろんルームメイトは選べない。私は今回プログラムの中でこの共同生活が1番辛かったと感じている。
このアパートメントには3つのベッドルームがあり、それを2人でシェアする。現地に着いて待っていたのはメキシコ人のルームメイト。同じUNCGの生徒だったが交換留学生のため英語は完璧だった。私は人に干渉しない、人が何をしていても気にしないようにするが、その代わりに人から干渉されるのを嫌うといった性格で、UNCGでもそれを通して生活してきたのでフロリダでもそれが通ると思っていた。しかし彼女にはそれは通じなかった。ベッドの上で食事をとり、食器はそのまま放置。私が寝ていようが何をしていようが電話をしたりテレビを見たり、周りに気遣うことなくタバコを吸ったり。私には全く理解できない常識の持ち主だった。最初は気にしないようにしていたが、仕事も忙しくなり疲れも溜まってきたころに事件は起きた。彼女が私の生活態度に苦情を言い出してきたのだ。「掃除をしていない」と言い出したことに始まり、朝起きてから仕事に行くまでの準備がうるさいなど、あることないこと言い出したのだ。彼女は本当に迷惑していたのだろうが、私は私で彼女に対してだいぶ我慢し、これがメキシコ人なのかと考え受け入れるようにしていた。しかし、この出来事で完璧に考え方が違うことに気付き、私は部屋を出る決心をした。新しいアパートメントが見つかるまでは、友達のアパートメントのリビングに泊めてもらい、できるだけ彼女と顔を合わさないようにした。そうこうしているうちに彼女のほうが先に新しいアパートが見つかり出て行ったことでこのルームメイト問題は解決した。
彼女がいなくなって1人部屋になったことで私のストレスはかなり軽減し、それからは自分のペースをうまく保ちながら生活することができた。途中で水道のトラブルで引越しを余儀なくされたことには驚いたが、仲の良い友達と同じビルディングに越すことができたので嬉しく思ったものだった。帰国する1ヶ月前に新しいルームメイトが来たが、中国人で少し日本人と感覚が近かったので、前のルームメイトとよりは快適に過ごせた気がする。
休みの日は必ずといっていいほどWDWのパークに通った。Cast IDの提示ですべてのパークに無料で入ることができたので、気軽にショーやショッピングを楽しむことができた。WDWではキャラクターグリーティング(ミッキーマウスなどのディズニーキャラクターと写真をとったり、サインをもらったりする)が日本より充実していたので、毎週友達とサイン帳とカメラを片手にパークをめぐり、キャラクターと写真を撮り、サイン集めに奮闘していた。特にDisney’s Hollywood Studiosで毎晩行われていた「Fantasmic!!」というショー、Magic Kingdomで行われていたキャッスルショーがお気に入りで、たとえ友達と休みがあわなくともどちらかは週に1回必ず観にいった。東京ディズニーリゾートにも毎月のように通うほどの“ディズニー好き”である私にとってはこういったパークでの体験も思い出深いものだった。

3.1.4 Disneyでの生活 ~働く編~
WDWにある4つのテーマパークの1つ、Disney Hollywood StudiosのSunset boulevardにある3つのファストフード店にてフードオペレーションキャストメンバーとして働いた。Disney Hollywood Studiosは映画を中心としたテーマパークで、ディズニーのテーマパークの象徴であるアトラクションよりも、映画の1シーンを体験したり、映画製作の裏側を見学するといった“Show”中心のテーマパークだ。ちょうど私が勤務を始めたころに今の名称へと変更し、1989年のオープンから2008年1月まではDisney MGM Studiosという名称だった。
その中でも私が働いたSunset Boulevardは東京ディズニーシーでも人気のタワー・オブ・テラーやディズニー映画「美女と野獣」のシアターがあり、多くの人が集まる場所だった。しかも取り扱っている商品が、アメリカ人が大好きなハンバーガー、ピザ、ホットドッグ、さらにWDW名物のターキーレッグ(ターキーの足をローストしたもの、類似品が東京ディズニーリゾートでも販売されている)。休祝日や春休みには50m近くの長蛇の列ができており、“息つく暇もない”という言葉が例えでは言い表せないほど忙しく働いた。
仕事の内容は主にレジ接客、キッチン、Condiment bars(塩・胡椒などの調味料やストロー、ナプキン等が置いてあるテーブル)の補充の3種類。キッチンではホットドックやサラダの簡単な調理、オーブンでのピザ調理などを行った。ピザは焼きあがるまで約12分かかり、焼き終えてショーケースに出したピザは10分経過したら廃棄処分しなければないシステム(もっともそのシステムを遵守しないキャストメンバーも多いのだが)だった。そのため混み具合や時間帯を考慮しながら必要な枚数を焼き、1番おいしい状態で提供するのがとても難しいポジションだった。しかし、私はこのポジションが最も得意で、マネージャーや同僚からもその点で評価を受け、忙しい時間は必ずそのポジションを任せられたものだった。シフトはコンピュータで管理され、基本的にはそのアサイメントに従い、不規則にポジションも店舗も移動していくシステムだった。(例外として、マネージャーやリーダーの判断でポジションを移動することもできる。) 休憩は1日1回60分から75分(勤務の長さによって異なる)まとめてとる。休憩時間もコンピュータで管理されているのでいつ休憩が来るのかはコンピュータ次第。時には6時間以上休憩なしで勤務する日もあれば、始業後1、2時間で休憩に入る日もあった。
衛生管理やキャストメンバーの管理は日本よりも徹底したものではなく、どんな失敗をしても決して怒られることもなかった。衛生管理は手洗いすら義務付けられておらず、髪形や爪、アクセサリーについても特に決まりはなかった。日本人の感覚から見ると、これで食の安全が本当に保たれているのだろうかというほどだった。このように仕事をするという面では決して安全で効率の良い職場ではなかったが、キャストメンバー同士のコミュニケーションはうまく取れているように感じた。すべてのポジションにおいてスピードや正確性よりも、ゲストや他のキャストメンバーとの会話やコミュニケーションを重要視しており、皆が楽しみながら働いているという印象を受けた。最初は仕事に対する考え方の違いに戸惑うことも多かったが、慣れてくるとそのフランクな雰囲気を楽しめるようになった。
私の職場のキャストメンバーはほとんどがCP(Collage Programの学生)で、特にアジア系のICPが多かった。CPのキャストは働く期間に限りがあるので、キャストメンバーの出入りが激しく、研修の中盤を過ぎる頃には私が1番古いICPのキャストメンバーになっており、研修の終わりになる頃には新しく入って来たキャストメンバーのトレーナーも任せられるようになった。私はフランクな職場の雰囲気には慣れてきたものの、どうしても効率の悪い仕事の仕方に納得できなかったので、自分がトレーニングするときは自分が働いてきて生み出した少しでも効率の良い仕事のやり方を教えるようにした。そうすることで少しでも効率よく、キャストメンバーにもゲストにも負担の少ない店になるように勤めた。英語が不十分で、勤務先に迷惑をかけているのは明らかだったので、自分なりに勤務先のためにできることを探して取り組むように心がけながら働いた4ヶ月だった。
アメリカで働く上で日本との違いを感じたのが”Magical Moment“だ。”Magical Moment“とは誕生日に来園したゲストや新婚旅行で訪れたゲスト(自己申告でカンバッチがもらえる)、商品を落としてしまったゲストに対し、店舗で取り扱っている商品をプレゼントするといったシステムだ。あるとき新婚旅行の日本人ゲストが来られた。アメリカ人のキャストメンバーがMagical Momentで商品を提供しようとしたところ、日本にはその考え方がないことも手伝って、ゲストが全く理解できずかえって戸惑わせてしまったことがあった。そこに私が呼ばれて、Magical Momentについて説明し、提供するとすごく驚いていたが、大変喜んでくれた。日本では体験できないサービスの提供を体験でき、すごく貴重な体験だったと思っている。

3.1.5 目標とその達成度、プロス・コンス
私の目標は本場のディズニーで一流のホスピタリティビジネスを体験するというものだった。ホスピタリティのレベルは日本のほうがはるかに上だったので、その意味で目標を達成できたとはいえない。しかし、キャストメンバーとして働くことで、ゲストにいい思い出を提供するために自分がどうすればいいのか考えながら仕事をすることを学ぶことができた。これは今後社会に出て仕事をしていくうえでも、家庭生活においても、または友人関係においても役立つことだと思う。さらに前述のMagical Momentを始めとするアメリカでしか体験できないホスピタリティを知ることができた。アメリカではアメリカの、日本には日本の目指すホスピタリティの形があることを知った。それは今後サービス業界で働く上で大いに役立つであろう。ホスピタリティの形に正しい正しくない、といった概念はなく、それぞれの企業が目指すホスピタリティをゲストのために提供すればいいのだ。
アメリカで働いていて辛いと感じたのは、やはり文化の違いだろうか。前述のようにアメリカ人のキャストメンバーはゲストの待ち時間を軽減しようとしない。いくらゲストが待っていようが自分のペースを決して乱さず、急ごうとしない。さらに1人1人がそれぞれオリジナルの仕事のやり方があり、それが全く徹底されていない。5人のマネージャーですら、それぞれの考えがあり、違いがあった。それが私には理解できなかった。調理方法や衛生管理、サービスの基本を統一しないで全てのゲストに平等に喜んでいただけるサービスができるのか。私にはそうは思えなかった。マネージャーや同僚に意見したこともあったが、私にその文化や考えが理解できないように、彼らにも私の考えが理解できるはずがなかった。私は自分なりにホスピタリティやサービスについて勉強していたし、自分の考えに自信もあったが、理解さえしてくれず、バカにされることすらあり、苛立ちを感じて喪失感すら覚える毎日だった。しかし、WDWにはアメリカ人はもちろん、メキシカンやスパニッシュなどのヒスパニック系をはじめさまざまな人種のキャストが働いている。同じ国の人間でもそれぞれの考えがあるのに、それだけたくさんの人種が集まっていたら、考え方や方針を徹底しきれないのも無理はないのであろう。あまりにも多くの文化や考えに一度に出会ってしまったため、その戸惑いも大きかったが、世界に目を向けるきっかけになり、自分自身の視野も少し広がったように感じる。そして自分の考えに自信を持てるようになった。いろいろな考えに出会い、人それぞれ考えが違うことを知り、自分を卑下する必要がないことを知った。それを知ることができたのも、多くの文化や考え方を知ることができたためで、これは国際インターンシップならではの産物だと思う。
また、今回のプログラムで初めて共同生活をしたわけだが、その生活からも得るものは多かった。常に人に見られ、プライベートな時間・空間が限られた生活はストレスが多かったが、その生活が私の悪い生活習慣を変えるきっかけとなった。私は気ままでマイペースなところがあり、掃除や片付け、家事も苦手。しかし、共同生活ではそうは言っていられない。2人でベッドルームを共有するため、まめに掃除や片づけをして清潔を保ち、いつ誰に見られても恥ずかしくない状態にしなければならない。冷蔵庫の中も、キッチンの棚も常にきれいに整頓し、食事が終わったらすぐに食器を洗う。女性だけの生活で、それらを少しでも怠れば何を言われるか分からない。日本にいた頃は洗濯機も回したことがなかったし、食事のあと食器をさげることすら習慣になっていなかった。だが、この共同生活でそれらのことがしっかり身についた。自分のことは自分でする。自分には自分で責任を持つ。自分の甘えた性格に喝を入れられた。そして、自分の新たな一面にも出会えた。自分でやろうと思えば一人でも何とかできるのだ。今まで甘えていた、頼りすぎていた存在がいなくとも、その気になれば自分で考えてなんとか行動することができるのだ。そのことに気付いたことで自分に自信が持てるようになった。
そして英語。私は高校を卒業して以来英語の勉強を全くしていなかった。留学が決まってからも特に必死で勉強したわけでもなく、そのまま渡米してしまった。そのため英語力は今回のプログラムに参加している日本人の中で1番低かったであろう。アメリカに着いてから1つ1つ勉強し、慣れ、何とかアメリカで生活できるだけの英語を習得した。しかし、英語が苦手だったことからも得たことがあった。それまでは仕事をするときも人に聞きながら、頼りながら働くことが多かった。それゆえ勘が鈍く、覚えが悪い部分があったことも否めない。しかし、アメリカでは人に質問することも一苦労。質問することも勉強になるのだが、やはり時間がかかってしまうため自然と自分で考えて行動することが身についた。仕事をしながら、先輩キャストメンバーの動きを良く見て、相手が何をしてほしいのか自分には何ができるのか察し、言われる前に行動するという習慣が少しずつついていった。これは今後社会に出て働く上で大いに役立つ部分だと思っており、今回のディズニープログラムに参加しなければ在学中に身に着けることは難しかったであろう。そういった意味でこれも国際インターンシップならではの産物といえる。
3.3.6 終わりに
今回のディズニープログラムを通して、私は多くのことを学んだ。それらは、通常の大学生活では学ぶことのできないものばかりであった。プリグラムに参加するまでの私は、ただ言われるがまま学校に通い、授業よりも大切なのは友達との会話やサークル・委員会活動、単位をとるためだけに授業を受け、家に帰れば母がおいしいご飯を作って待っていてくれる、そんな生活をしていた。それまでの私の生活には何の“コンス”も存在しなかった。そんな生活が故に、学校に通っていても得るものは何もない、学校なんてつまらないとすら感じるようになってしまっていたのだと思う。しかし、今回のプログラムに参加するにあたっては大きな代償(コンス)を背負わなければならなかった。言葉も通じない中で、新しい友達を作り、自分の身の回りの世話は自分で行い、そして仕事をする。生活そのものがコンスのひとつとなってしまった。そういった中での経験は、“辛い”の一言に尽きるとも思えたが、その生活を乗り越えたからこそ得られる達成感を私は今感じている。その達成感と同時に自分に自信を持つこともできた。このプログラムが私にもたらしてくれたものは、インターンシップが終わったこれから生きてくると思う。今回の経験を私のこれからの人生にも大いにいかしていきたいと思う。
3.2マーチャンダイズ事業での研修事例(本多)
まず始めに、私がこの大学・学部・学科を選んだ理由は「ディズニーランドをつくるため」である。ディズニーランドにしかないホスピタリティ、そして何よりあの独特な空間に強く惹かれ、それを作り出すために建築ではない“空間デザイン”という専攻をあえて選んだ。しかし、いくら“空間デザイン”を学ぼうとも「ディズニーランド」のような空間と自分の作品は一致しない。『もしかしたら、ディズニーランドには空間デザイン以外の要素が必要なのではないか?』と考えていたとき、このディズニープログラムに出会った。
自分がつくりたいと思っていた「ディズニーランド」を創る立場として内外両方見ることができ、かつ英語の勉強にもなる。20歳過ぎてからロンドンへの語学研修やスペイン旅行など海外にも強く興味を抱くようになった私にとってこのディズニープログラムは“自分にピッタリ”なプログラムだった。
◆基本情報◆
・目標と達成度:ディズニーの“表”と“裏”を見て、ディズニーが何出来ているのか、どのように動いているのかを分析する (達成度は3.2.6にて後述)
・期間・・・UNCGでの語学研修:約2ヶ月間(2007/10/21– 2007/12/21)
WDWでのインターンシップ:約7ヶ月間(2008/01/06 – 2008/08/08)
・勤務地・・・エリア内4店舗(詳細は3.3.4にて後述)
Gateway Gift(ディズニーグッツ取扱店)
Camera Center(PhotoPass印刷店)
Gift Stop(Package Pick Up店)
Stroller&Wheelchair Rental(ベビーカー・車椅子レンタル店)
(Future World North EPCOT内 位置は付録参照)
・職種・・・Merchandise(商品販売・レンタル)
エリア内4店舗にて勤務。それぞれのお店において職務内容は異なる。
・時給・・・基本時給$6.79. 1日8時間または週40時間以上の労働は$10.40.
・選択クラス・・・[前期]Creativity&Innovation:Gaining the Edge
[後期]College Program Practicum
(詳細は3.2.2にて後述)
・週のスケジュール(週平均就労時間36hours/閑散期・繁忙期ともに変化なし)

3.2.1 UNCG, Interlinkでの生活
振り返ってみて、私にとってUNCGでの2ヶ月は、“アメリカでの生活になれるための期間”だったと思う。文化も人種も日本と大きく異なる国で生活していく上で知らなければならない、人との付き合い方、文化の違いなどを学ぶための期間だったと思う。なぜなら、英語に特化して述べれば≪フロリダに移ってからの2週間での英語力の伸び≫が≪2ヶ月間のUNCGでの英語力の伸び≫に勝ると思うからである。Interlinkでの学習は、“外国人”という枠での勉強なので、初めから“ハンデ”を貰った状態であり英語の学習に関しては刺激的ではなかった。しかし、UNCGで学んだアメリカという文化や、人との付き合い方があったからこそ、フロリダへ、WDWへ移ってからスムーズに仕事へ、生活へなじむことができたので、ここでの経験はプログラムにおいては重要なポイントになると思う。
―語学学習
個人的に授業内容に関しては高校時代の英語の授業を日本語ではなく英語で振り返っているような内容だった。ただ、内容的には経験してきたような課題でも、英語を用いて他国の人々とコミュニケーションを取るのは大変だった。また、時間に関しての考え方の違いからかミーティングの時間通りに進められなかったりすることが多かった。宿題は毎日出たが、それほど難しい問題でもなく集中してやれば30分ほどで終わる内容だった。
―寮生活・フリータイム
シェアメイトはハワイ出身の子で、多くの時間彼女はアルバイトしていたので部屋にいなかったが、宿題で分からないことなど親身になって相談にのってくれた。
同じ住居エリアに日本人が3人住んでいたので、彼女達を通してInterlinkでは出会えないような友人達を紹介してもらい、彼らの部屋や寮外の友達の部屋などで映画鑑賞やディナーなどに連れて行ってもらった。Interlinkの友人とも授業後に食事に出かけたり、友人の家で夕食を作ったりなどで交流を深めた。また、図書館等で勉強していると日本語を学んでいる学生から話しかけられることもしばしばあった。
この頃は英語にまだ自信がなく、英語漬けの生活に息が詰まることもあったので、Interlinkの友人にUNCGの日本人学生を紹介してもらい、彼らに隣町に買い物へ連れて行ってもらったり、自宅に食事をご馳走になったりし、“息抜き”をした。ディズニープログラムは1年間のみの短期プログラムになるが、「アメリカの大学へ入学」という長期プログラムになると全て自分で決断しなければならなくなり、同国出身者での情報交換が必要不可欠となってくる。このような“ネットワーク”の存在を彼らの会話から知ることが出来た。
―冬休み(2007年12月21日~2008年1月6日)
私は2週間の冬休みを2分割し、前期はアメリカ東海岸エリア(フィラデルフィア・ワシントンDC)をUNCGのExchange学生と旅行した。12月28日にはGreensboroに戻り、ひとり暮らしを始めた友人の家にステイした。元旦には隣町から友人が私のステイしていた家を訪れ、カウントダウンパーティをし、買い物に出かけた。また、近所に住む友人と隣町に住む友人とNBAを観戦しにシャーロットまで足を伸ばすなど、短いながら充実したバケーションを過ごした。
3.2.2 Disneyでの生活 ~学ぶ編~
私は前期にCreativity&Innovation: Gaining the Edge、後期にCollege Program Practicumを受講した。Creativity&Innovationは、『クリエイティブな考え方を先人はどのように生み出したのか、そしてどのようにして生み出していけばよいのか』ということを理論的に考える授業だ。内容的にも難しく、施設見学や新しいコンセプトを持つ店舗設計のプレゼンテーションなど、チームでの作業が非常に多かった。College Program Practicumはディズニーカンパニーの歴史やWDWができるまでなど、『ディズニーについて』様々な視点から総合的に学ぶ授業だ。様々なディズニーカンパニーで働いているゲストスピーカーが登場し、貴重なお話を沢山聞くことができた。
職場の異なるカレッジプログラムの学生とグループを組んで学習を進めるのは、アメリカの大学の授業のようでとても新鮮だったが、授業自体はネイティブ向けの授業なので、専門的な英語の理解や課題が、仕事よりも大変だった。そのため講師や職場の友人に聞いたりして課題を進めていた。
通常受講していたクラス以外にも、日本での自分の専攻に付随してWalt Disney Imagineering(※1)に関してのクラスなども積極的に受講し、複数のイマジニア(※2)の話を聞けた。このような現場で実際に働いている人の話が聞けるのは、ディズニープログラムに参加していなければでなければできなかったことであろう。
※ 1 Walt Disney Imagineering
Walt Disney Imagineeringとは、ディズニーテーマパーク、ホテル、レストランなどをデザイン・設計・建築する会社。
※ 2 イマジニア
イマジニアは、Walt Disney Imagineeringに勤めている建築家、デザイナー、イラストレーター、彫刻家などの総称。
3.2.3 Disneyでの生活 ~暮らす編~
私の部屋は6人部屋で人の出入りが1~2ヶ月ごとにあったが、基本的にほとんどのルームメイトがアジア系(中国人・韓国人)だったため、生活に関しての大きな文化の違いはなかった。しかし、同じアジアでも掃除の仕方やキッチンの使い方は個人で異なり、初めての1人暮らしの人達もいたので、掃除や片付けがきちんと行き届かないときもあった。
食事は主に自炊。主にパスタやラーメン、週に1度ほど炊飯器や鍋で米を炊いて食べていた。仕事が深夜までかかることが多かったので、夕食はランチを作るときに一緒に作り持っていっていた。前半はよく自炊をしていたが、後半は友人と外で食事することが多くなっていった。店で売っている食品も日本とは異なるので、食生活もある程度アメリカ化してしまっていたが、カフェテリアなどの食事よりも自分でコントロールできるので自炊でよかったと思っている。
近所では文化・国籍・言語が織り交ざったパーティがよく開催されていたが、『家は静かに落ち着くところ』という家に関するイメージがアジア系では似ているため、部屋において各国の友達を呼んだ明け方にいたるパーティを開くようなことはなかったので睡眠が妨害されることはなかった。しかし韓国・中国人の同朋意識の現われか、同国の友達を招いて夕食を食べたりする姿は良く見られた。同国の友達で集まるのは情報交換などの面でも大事だが、他の人が理解できない言語を同じ空間で長時間聞かされ、話に混ざることもできないのは非常に不快だった。近所でのパーティだと、違う言語を話していても英語でも話しかけてくれるような雰囲気があるが、アジア系のみのパーティだと非常に閉鎖的な雰囲気が否めなかった。
同じ文化圏で部屋の住民を固めることで文化差による諍いは抑えられるが、他の国・人種の子が少数で入ってくるときに、どうしても“バリア”を感じてしまう。せっかくプログラムに参加し、世界各国の学生と触れ合う機会があるのだから、ルームメイトを選択できるチャンスがあればよかったと思っている。
基本的に毎日8時間勤務で、それを除けば全て自由時間にあたる。フロリダに移ってすぐの頃は、気候や周りの環境になれるためにできるだけ多く睡眠をとるようにしていたが、2週間もたてば環境にもなれ、職場やアパートメントの隣近所に友人が数多くできたので、休日や仕事の前にパークへ職場や近隣の友人と遊びに行ったり、アパートメントのプールへいったり、友達の家で映画を朝まで見たり、近隣のアウトレットに買い物へ行ったりと、毎日忙しく楽しく過ごした。
時には通常週2回の休みにもう一日の休みを申請し、テキサス州フォートワースへ美術館を訪ねに出かけたり、フロリダ州内の町へ友人とドライブへ出かけたりすることもできた。また自分の誕生日には2泊3日のDisney Cruise Lineへ友人と参加し、人生最高な誕生日をカリブ海で過ごした。
3.2.4 Disneyでの生活 ~働く編~
―EPCOT-Future World North Merchandise
EPCOTとはWDWにある4つのテーマパークの内の一つで、Future WorldとWorld showcaseの2つのエリアで構成されている。Future Worldは近未来をイメージしたエリア、World showcaseは世界11カ国(カナダ・イギリス・フランス・モロッコ・日本・アメリカ・イタリア・ドイツ・中国・ノルウェー・メキシコ)のパビリオンがある。4つのテーマパークの中で最もアカデミックなパークとなっている。EPCOTの語源は“Experimental”“Prototype”“Community”“Of”“Tomorrow”。
Future World Northは、EPCOTのメインエントランス周辺からEPCOTのシンボルであるSpaceship Earth周辺エリアを含み、そのエリア内にあるショップ全て(Stroller&Wheelchair Rental, Camera Center, Gift stop, Gateway Gift)にて、商品販売に関する仕事をスケジュールに従って就労する。
―仕事内容
働くショップによって業務は全く異なる。
Stroller&Wheelchair Rental:
主な業務はStroller(ベビーカー)、車椅子、Electric Convenient Vehicle(電動車椅子)のレンタル業務。ショップ自体は、ほぼ屋外に位置するのでスナック、ドリンク、日焼け止め等の簡易薬品、帽子やポンチョ(雨具)、バスタオルなどのグッツを取り扱う。
繁忙期・閑散期によって変動するが、基本的にEPCOTの開園時間は9時、閉園時間は午後9時となっているので、朝は7時からStrollerの清掃、商品補充を行う。閉店時間は閉園から1時間半後の10時半になり、それからレジ閉め、商品補充、清掃を行う。
Camera Center:
パーク内で取ったDisney Photopass(※1)の写真をプリントアウトするショップ。アルバム、フォトスタンド、アルバム用シール、使い捨てカメラ、デジタルカメラの電池など写真に関係する商品を数多く取り扱う。無料でデジタルカメラの充電も取り扱う。
Gift stop:
Package pick up(※2)の受渡し店となっている。この店はパークの外に位置し、バスターミナル、駐車場に近い店である。Package pick up以外にもTシャツやマグカップ、ピンなど様々なディズニーグッツを取り扱っている。
午後4時過ぎからは暗闇の中でライトが回転・点滅等するディズニーキャラクターのおもちゃをパーク内で販売する。
Gateway Gift:
Future World Northで一番大きいショップ。WDWディズニーグッツを多数取り扱う。
Photopass表
※1 Disney
Photopassシステム
Photopassとは、バーコードが印刷されているカード。パーク内には数多くのプロのカメラマンDisney Photographerがオープンからクローズまで常駐しており、声をかければ無料で記念の一枚を彼らが持つデジタル一眼レフカメラで撮ってもらえる。もちろん、頼めばゲストの私物のデジタルカメラでも撮ってもらえる。
Photopass裏
彼らが撮った写真はPhotopass内のバーコードによって永久的に記憶・保存される。これらの写真は各パークにあるCamera Centerにて、一枚約10ドル~で現像可能となる。その際にはボーダーやキャラクターのサインなど様々なオプションが無料で付けられる。133ドルほどで全ての写真データをいれたCDを作ることもできる。
同様なサービスはオンラインwww.Disneyphotopass.comで受けられる。こちらはすべて自分自身で行う形になる。しかし、オンライン上で写真が閲覧できるのは写真を撮ってから30日間だけとなっている。
このPhotopassシステムは、WDW、Walt Disney Land(カリフォルニア州)、World of Disney in NewYorkで利用が可能である。
※ 2 Package Pick up
パーク内で買い物をしてその荷物を持ってアトラクションに乗ったり移動をするのは非常に不便なので、パーク内で買った商品を店舗からPackage Pick upの受渡し店、または滞在しているディズニーホテルまで無料で運ぶことができるサービス。長期滞在が多いWDWならではのサービスである。
―言葉について
まず、仕事が始まってから最も衝撃的だったことは“英語”だった。NCで色々な国の友人を作り『ある程度の英語は理解できる』と思っていたが、仕事がWDWで始まってからはほぼ全ての同僚はネイティブスピーカーで自分が今までいたところの“英語”が非常にゆっくりしたものだったと思い知った。フルタイムワーカーは多くの米国内外のカレッジプログラムの学生を見てきているので、英語をうまく話せないことに関しては寛容だったが、『母国語でないから』という甘えは一切通用しなかった。何を言っているのかを理解することのみで私の許容範囲を超えていて、返答がなかなかできない日々が2週間ほど続いた。
徐々に耳がなれ、友人も増えていったので言葉に関してのバリアはなくなっていったが、たとえUNCGでネイティブの友人といたとしても、彼らが私のために“ゆっくり”と話してくれていたことにフロリダに移ってから気が付いた。
また、フロリダはアメリカ南部にあたるため多くのゲスト・キャストメンバーがスペイン語を母国語とし、英語を話さないゲストも多々見られた。その場合は自分が英語にハンデがあったとしても、ゆっくり英語をしゃべる、つたないスペイン語を身振り手振りで話す、スペイン語が話せる同僚を連れてくるなどの対応が求められた。スペイン語以外にもフランス語・ロシア語・日本語・中国語・イタリア語・ポルトガル語など様々な言語を母国語とするゲストに対応できるように様々な言語が話せるキャストメンバーが多くいた。
―日本人ゲストへの対応
やはり日本語が話せるキャストメンバーがFuture World Northエリア(以降FWNと称する)には自分以外誰もいなかったので、“日本語ヘルプ”がよくあった。特にCamera Centerでの日本語ヘルプが多かった。個人的な見解だが、旅行をする際に必要な言語力というのはそれほど高くない。しかし、Camera Centerにおいては“写真の印刷”というワンランク上の会話が求められる。ただお金を払って写真を印刷するだけではなく、写真に取り入れるオプション(サインやキャラクターボーダー等)をカメラマンとやり取りし、かつ写真のサイズやCDなど数多くのオプションから選ぶ必要があるためだ。
“日本語ヘルプ”において、カメラマンとのやり取りやオプションについての説明が主な内容だったが、一番印象的な出来事としてあげるのが聴覚障害を持ったゲストへの説明だった。『日本人のゲストが来ていて、コミュニケーションが取れない』との連絡をうけ、Camera Centerへ赴くと、二人組みの日本人のゲストがレジの前にいた。そこで、いつもどおり話しかけたのだが反応がない。彼らが示すに“耳が聞こえない”。同じ日本人だが、日本語が使えない。そこで紙面上でコミュニケーションをとった。彼らの質問を読み、英語でカメラマンに聞き、日本語で紙面に書き出す。“日本語を話す”のではなく、“日本語を書き説明する”ので簡潔に情報を示さなければならず、非常に時間が掛かった。また、「予約を入れた場所がわからない」との質問も受けたので、仕事中であったがマネージャーから許可を得て目的地まで案内した。この“日本語ヘルプ”により、カメラマンとマネージャーからFanatic Card(※1)を頂いた。
このような出来事から、『話せるだけでは不十分』だということを学んだ。“2ヶ国語話せる”というのはアドバンテージになるが、“耳が聞こえない”という状態においては何のアドバンテージにもならない。音に対する絶対的な安心が覆された瞬間だった。「聞く」、「話す」、「書く」を一度に2ヶ国語を用いて行わなければならない、あの状況は日本では、いや日本以外でもなかなか出会えないと思う。
―Magical Moment
Magical Momentとは“ゲストにスペシャルな瞬間を味わってもらう”という趣旨の元、キャストがゲストのために作る特別な瞬間のことだ。マジカルモーメントの内容はエリアによって大きく異なる。この言葉だけ聞くと非常に優れた瞬間を作り出しているように聞こえるが、実際はそれほど特別なことをしているわけではなく、FWNでは誕生日のゲストにFWNオリジナルの歌を歌い非売品のピンや誕生日カードをあげたり、結婚直後のゲストには特別な電話番号に電話しミッキーとミニーから祝電を彼らに聞かせたり、簡単なクイズを出し答えられたらカードをあげるなどという“簡単”なことをしていた。ここでいうカードはマジカルモーメント用のもので、ゲストの名前とマジカルモーメントの内容、店の名前を書く場所がある。このような小さなマジカルモーメントを作ることで、全てのゲスト、特に小さな子ども達は非常に喜んでくれる。
もちろん、時には特別なマジカルモーメントもある。ここでは2つのマジカルモーメントを紹介する。
1つ目は、ある男の子の母親が店にやってきて「子供のタオルを無くしたのだが、紛失物はどこで受け取れるのか」との質問を受けた。マネージャーが詳しく話を聞いてみると、男の子はそのタオルがないと落ち着かず、泣いてしまうらしい。キャストメンバーのKは必死でエリア内を探し回り、そのタオルを見つけた。しかし、すぐに母親に連絡せずまずキャラクタースポット(※2)へ向かった。Kは事情をカメラマンに話し、ミッキーマウスにタオルを持ってもらい写真を撮ってもらった。そのPhotopassをもち、Camera Centerでその写真をプリントアウトし、ミッキーのフレームへいれ、その後に母親へ連絡した。
「ただ、タオルを返したらつまらない。でももしミッキーがそのタオルを見つけたのなら・・・・」とKは考え行動を起こした。大変印象的なマジカルモーメントである。
2つ目のマジカルモーメントは、私と同僚で実際に作ったマジカルモーメントである。Gift Stopで働いていたときのこと、バス運転手の男性がやってきて、「自分の運転しているバスの乗客の女の子が泣いている。パークで買ったティンカーベルのピンを無くしたらしい。この店に同じものが売っているか?」とのことだった。残念なことにGift Stopには同じピンがなく、その女の子のレシートを確認し同僚がその彼女がピンを買った店へ向かい、同じピンを調達してきた。そしてそのピンと私のピントレーディング(※3)のレイヤードについていたティンカーベルのピンをマジカルモーメントカードに刺し、『I’m Back!』とカードに書き、バス運転手の男性へ渡し、ホテルの女の子の部屋に届けてもらった。
日本では商品を客に無料で渡すなどということはめったに行われない。しかし、WDWではキャストメンバーからのモノのプレゼントが非常に容易に行われる。なぜなら、マジカルモーメントのためや欠陥品との交換、店での商品交換等のため長時間の待ち時間を強いられるゲストへのケアとして、特別な“クーポン”があるのだ。担当キャストメンバーの名前、理由等を記入するだけで、最大で25ドルまでの商品をゲストにプレゼントできるという特別な“クーポン”である。マネージャーからも『必要であれば迷わず使うように』との指示を受けているため、WDWにおいてモノをあげるということに非常に寛容である。
日本において、モノを1人の客にあげると、他の客も同じサービスを受けられるととり、その場は混乱してしまう。これは“平等”を求める日本人の文化の現れだと思う。それゆえ、モノをあげるというよりも全ての人に対する目には見えないサービスが求められる。しかし、上下の差が非常にあり、それが受け入れられているアメリカでは特別なサービスをすることが許されるため、様々な形のマジカルモーメントが可能なのだと思う。
これは、キャストメンバーに関しても同様なことがいえると思う。このディズニープログラムに参加する前、私は『アメリカはディズニーの始まったところ。パークのクオリティ、ホスピタリティサービスも日本以上のものを学べるだろう』と考えていた。しかし、実際にWDWでキャストメンバーになってみると、想像していたよりもマニュアルはなく個人の意思で多くのことを決められ、キャストメンバーとして判断すべきことの幅が非常に広い。それゆえ、ホスピタリティに関する日本のキャストメンバーの平均値とWDWのキャストメンバーの平均値は、明確に日本のほうが上回っていると私は思う。しかしWDWでは“優秀なキャストメンバー”と“そうでないキャストメンバー”の幅も非常に広い。“優秀なキャストメンバー”のみに言及すれば、WDWは日本のキャストメンバーより非常に優れたキャストメンバーが多いが、同様に“そうでないキャストメンバー”も残念ながら多くみられた。
このことから、ゲストの文化の違いにあわせたサービスの違いがアメリカと日本では明確に存在している。また同様にキャストの文化の違いも深くサービスの違いに関わっているといえる。
※ 1 Fanatic Card
Fanatic Cardとはキャストメンバー同士を激励するためのカードである。優れたサービス(例:マジカルモーメント)をしたキャストメンバーに対して、キャストメンバーの名前、そのサービスの内容、そして自分の名前を記入し、本人もしくはマネージャーに提出し、マネージャーからサインを貰った時点で各パークに設置されているFanatic Boxに投入する。Fanatic Cardを数多く貰うことで給与が変化するようなことはないが、ポイントとしてレコードカードに記録される。『互いを褒めあう』というディズニーの文化の表れである。
※ 2 キャラクタースポット
EPCOTで常時ディズニーキャラクターに会える場所のこと。
※ 3 ピントレーディング
ディズニーのピンを、レイヤードをつけているキャストと交換できるシステム。ピンはパーク内の数多くのショップで入手可能。キャストメンバーしかつけていない限定ピンや、隠れミッキー(Hidden Mickey)のピンなどがあり、熱狂的なピントレーダーも数多く入る。
3.2.5 異国でできた“家族”
私の所属していたエリアの多くの同僚がカレッジプログラム参加生だったため、年齢も近く、非常に多くの友人が出来た。仕事中も新しいマジカルモーメントを同僚と競って作る、シャボン玉を作って子ども達と遊ぶなど、非常に楽しみながら仕事をしていた。同僚とスケジュールがあえば、早朝からパークへ遊びに行き、仕事が始まる時間に戻ってきて仕事をしていた。
ほぼ毎月新しいプログラム生が入り、帰っていたため、毎月・毎週出会いがあり、辛い別れがあったがその度に仲の良いフルタイムワーカーとカレッジプログラム学生で近所のレストランへ仕事終わりに行き、明け方までLeaving Partyや友人の家でプロジェクターを利用したMovie Party、スシパーティをしていた。まるで年齢も人種も国境も越えた“家族”のような繋がりを築けたと自負している。私にとって彼らの存在なしに、WDWでの日々は語ることはできない。これからも時差も国境も越えて深く関わっていきたい“家族”ができたことは何事にも代えがたいプロスである。
3.2.6 目標とその達成度、プロス・コンス
【プロス】
・ 日本以外の国の価値観を学ぶことができた
・ 実践的な英語力を身につけられた
・ 世界中に“家族”ができたこと
・ “ディズニー”空間に対しての見方・考え方の変化
・ ホスピタリティビジネスのプロフェッショナルとしての経験
・ 表現することの重要性の認識
【コンス】
・ 1年間の休学
・ 個人の価値観の変化
このプログラムを通して、日本のそしてアメリカの文化における長所と短所両方に気づくことが出来た。アメリカで学んできたこと全てを日本に還元しても日本では受け入れられないことも数多く存在すること、ホスピタリティサービスにおいて、同じブランド・企業だとしても顧客に応じたサービスの違いが存在していることを学んだ。
また、このプログラムを通して世界における英語の重要性を学んだが、同様に言葉の弱さも知った。何ヶ国語話せたとしても、聴覚障害を持つゲストが来たときには何の役にも立たない。言葉とは、「表現すること」のうちのひとつの要素でしかないということを学んだ。
自分の目標であった『ディズニーが何で出来ているのか』に関しても自分なりに結論が導き出せた。ディズニーにおける最も大きな要素は、“マジック”、つまり一人ひとりの心がけだと思う。私が“マジカルモーメント(3.2.4参照)”を作ったとき、あるマネージャーに「今日マジカルモーメントを作った!!」と報告すると、マネージャーから「(今日のマジカルモーメントが特別なのではなく)みかはいつもマジカルモーメントをゲストに作っているよ」といってもらえた。特別な“マジカルモーメント”という括りでまとめるだけでなく、常に『“マジック”を作ろう』という気持ちを持って仕事に取り組むこと、取り組むように促す企業理念がディズニーを作っている最大の要素だと思った。
3.3 オペレーション事業での研修事例(大宮)
大学入学当時から強い海外志向を持っていた私にとって、ディズニープログラムへの参加は願ってもないチャンスの到来で、すぐさま参加を決意した。今改めて振り返ってみて、プログラムでの出来事は始めから終わりまで感動と喜びに満ちたものであったとしみじみと感じている。アメリカ文化に慣れ親しめたGreensboroで過ごした日々。苦労は多かったが、今その苦労が実りになっているクラスと課題への取り組み。失敗だらけの毎日から、少しでも成長しようと奮起し続けた職場での毎日。世界有数の観光地という最高のロケーションで、友人と遊びつくしたリラックスしながらもエキサイトした日々。この貴重な経験から得られた財産は何であっただろうか。一つ一つの体験の醍醐味をもう一度吟味した上で、そこから生まれた価値を分析・考察していきたい。
◆基本情報◆
・目標と達成度
1. 英語:(目標)ビジネスレベル→(達成)日常会話レベル
2. 視野を広げる→異文化を知り、世界各国から集った友人やゲストとのコミュニケーションを通して、より広い世界を見ることにより達成。
・期間・・・UNCGでの語学研修:約2ヶ月間(2007/10/21– 2007/12/21)
WDWでのインターンシップ:約7ヶ月間(2008/01/06 – 2008/08/08)
・勤務地・・・Theater In The Wild (TITW)…Finding Nemo The Musical
The Boneyard (BY)…Play ground
(Dinoland Disney’s Animal Kingdom内. 詳細は3.3.4にて後述、
位置は付録参照)
・職種・・・Operation(詳細は3.3.4にて後述)
[TITW]Finding Nemo The Musicalの劇場の案内係。
[BY]子供向けのプレイグランドのオペレーター。
・時給・・・基本時給$6.79. 1日8時間または週40時間以上の労働は$10.40.
・選択クラス・・・[前期]Advanced Studies in Hospitality Management,
Disney Exploration series Communication Process
[後期]Marketing You (詳細は3.3.2にて後述)
・週のスケジュール(週平均就労時間45hours/閑散期平均40hours/繁忙期55hours)

3.3.1 アメリカ生活の入り口としてのUNCG,
INTERLINKでの暮らし
初めての語学学校、初めての寮生活、そしてこれからの生活への期待と不安が交差した複雑な心境でスタートした新生活。だがそこに待っていたのは、“外国人”という枠組みが存在しない世界だった。たとえこちらがまともな英語を話せずとも喜んで手助けしてくれる、そんな人々と出会うことができた。
I-houseという留学生のための寮(前述の通り、大学敷地内にあり立地、セキュリティともに万全)で生活していたおかげで、毎週学内、学外を問わず様々なイベントへ招待された。語学学校での友人作りのみならず、これらのイベントに参加した毎にネイティブ・ノンネイティブ関わらず友人の輪が広がっていくのを実感できた。その友人たちと、地元のお祭りに参加したり、連休を利用してフィラデルフィアやワシントンDCへ車で旅行に出かけたりと、ただ語学学校に通うだけでは絶対に味わうことができない思い出をつくることができた。この思い出はプログラム全期間を通して振り返ってみても大変愛着のあるもので、生涯大切なものとして残ることは間違いない。また、英語学習という視点から鑑みても、この時期にネイティブと交流する機会が多々あったことはとても印象的で、フロリダへの移行に向けての大きなモチベーションアップにもつながった。私の意見としては、UNCG時代の主目的は英語学習だけではなく、むしろアメリカ生活の楽しみ方を学ぶことがより重要であると考える。もちろん英語学習の観点から見ても非常に重要なタームであったことは疑う余地はなく、その価値は基礎を学べるということにとどまらない。プログラム全体で集中的に英語を学習できるこの機会を利用して、思う存分失敗してそこから英語をものにするための自分なりの学び方を習得できることが最も価値のある部分かもしれない。ここで養われた基礎があるからこそ次のステップで成長できるわけで、逆にいえばここでどれだけがんばれたかということが次のステップへ影響を及ぼすほど重要な通過点なのだと言える。
【語学学習】
予習・復習・課題はほぼ毎日。特に苦労したことは、発音の矯正と地元企業へのインタビューの課題。企業の検索からアポイントメントをとるまで、右も左もわからない状態でトライし続けた記憶がある。教授陣は非常にフレンドリーで、自宅に招かれホームパーティーに参加したこともしばしば。生徒一人一人のバックグラウンドを考慮した指導を行っている。勉強は大変だったが、時間もたっぷりあったので英語漬けの毎日を送れた。
【寮生活】
積極的にジムに通いトレーニングに勤しんだ。参加自由のダンス教室やトレーニング教室が多数あり度々参加した。ルームメイトはアメリカ人で、関係も良好でトラブルなく過ごせた。
【冬休み】
寮にも滞在できず、フロリダに移ることもできなかったので3週間近くニューヨークの友達のもとにステイさせてもらった。クリスマスから年末年始にかけて、世界で最もエキサイティングな街New York Cityで過ごし、その後もカナダのナイアガラの滝まで足を延ばすなど、極寒ながらも最高の時間を過ごすことができた。
3.3.2 Disneyでの生活 ~学ぶ編~
そしていよいよ1月6日にフロリダ・オーランドに到着し、早速インターンシップが開始された。様々なオリエンテーションなどへ参加した後の印象は、何もかもが綿密にオーガナイズされているということだった。事実、ディズニー側にとって、大規模な人数グループのインターンシップの受け入れは年に3,4回は企画されており何も特別なことではないようだった。
ディズニーに活動の拠点を移したのちも、ビザのスポンサーはUNCGであることに変更はなく、現地ではUNCG生として扱われることになる。ビザの保持のために、スポンサーであるUNCGに対してレポート提出が義務付けられており、それを怠ると最悪インターンシップ参加権利を失い強制帰国させられることになる。そのレポート内容は、与えられたテーマの中から一つを選び、無論英文で書き上げるというもので、大体1週間に1回という提出頻度であった。テーマはどれもオーランドでの生活に基づいたもので、現場での研修や仕事から学んだこと、文化的背景から生じた問題とその解決策、などであり日々の生活を文章化しまとめるためのものであった。日々を漠然と過ごすのではなく、しっかりと形に残すために重要な課題であったと思われる。
前期は週に2クラス&先ほどのUNCGへのレポート課題提出がほぼ週に1度あり、休日なしの過酷スケジュールであった。選択クラスは、Advanced Studies in Hospitality Managementと、Disney Exploration seriesのCommunication Processの2つ。 Advances Studies in Hospitality Managementではディズニーが提供するホスピタリティのみならず、アメリカでのホスピタリティの考え方についてケーススタディを通して学んだ。Communication Processでは、ディズニーワールドリゾートのバックグラウンドで活躍するマネージャーたちの話を聞いた。
後期は、週に1度のクラスのみで、Marketing Youというクラスを選択した。キャリアアップのための自己分析論を学び、英文履歴書の書き方やアメリカの就職活動の様子について学んだ。非常に有用な内容で、帰国後も就職活動の場でその知識を活用している。こちらも提出課題に悩まされたが、日本にいたときとは全く違うアングルから自分を深く見つめなおす良い機会であった。
クラスの総括として、4時間という長丁場ではあるが質が高く、レポートやプレゼンテーションを通して確実に知識を身につけることができる。グループワークも多く課され、ディスカッションを深めながら、与えられた課題について解決策を導いていった。クラスで提出する課題のレポート書式は、アメリカの大学で使われているフォームと同じもので細部の規約が厳しく、フォームの項目で満点をもらえるまで時間がかかった。しかしその分、一つ一つのレポートに対して教授からフィードバックがもらえるので、それを繰り返すことでレポートの質が上がっているのを実感することができた。ディスカッションに関して言えば、世界各地から集まった学生たちと議論するという滅多にない体験をすることができた。反省点としてはもっと積極的に発言などしてクラスに参加できたらよかった。何度注意されても一向に私語を慎まない南米人と、意見を聞かれてもダンマリのアジア人とで国民性の違いがはっきり見て取れる興味深い機会でもあった。
3.3.3 Disneyでの生活 ~暮らす編~
3LDKの部屋を6人でシェアするという生活は波乱に満ち溢れたものだった。リビングやキッチンは6人共同のスペースで、最初にルールを決めても次々に問題が発生し皆が頭を悩ませた。原因は文化の違いと言ってしまえば簡単だが、同じ国の出身でも一人一人慣習は異なるものである。そこはもう個人の常識に任せるとしか言えないことも多々あった。だが頼みの綱であるその常識も、全員が共通して思い描くものなど存在しない。「言わなくても察してくれる」という日本人独特の意識は通用しない。それどころか、言ってもわかってくれないことの方が多かった。わかってくれないという意味は、話を聞いてくれない、呼びかけても応えてくれない、こちらが嫌がるのを知っていても改善しない、ということも含む。私はもともと潔癖なほどのきれい好きなので、全く掃除しないルームメイト達に代わって毎日のように色々な個所を掃除していた。それを見たメキシコ人のルームメイトから、「あなたはきれい好き過ぎて気味が悪い」と言われたこともあった。そんな状況下で、いかに全員が気持ちのよい生活を送ることができるか。そこではいくらかの衝突があり、そして当然多くの妥協と寛容の精神が必要とされた。
食生活に関して言えば特に苦労はなかった。もともと料理が好きだったので、日本では手に入らない食材を使って創作料理に挑戦したり、スシを友人にふるまったりして自炊を楽しむことができた。フロリダに着いてから肉類は一切口にしなかったので、栄養的にバランスを考えながら料理に励んだ。アメリカは、ファーストフード社会といわれる一方で、ベジタリアンフードやオーガニックフードに関して日本の比にならないほど発展している。食生活への意識の差がかなり大きいのだ。事実、オーガニックフードラバーズのメッカ「Whole Foods Market」では肥満体形な人を一人も見かけたことがない。オーガニックフーズを意識して食べるようにすると、もちろんコストはかなり高くつくが、アメリカでも健全な食生活を送ることは十分に可能なのだということを学んだ。
インターンシップ後期の休日はリフレッシュのため、職場の友人たちと遊びに行ったり、買い物にでかけたりすることが多かった。オーランドは世界有数の観光地のため、WDW以外にもテーマパークが数多くあり、遊ぶ場所に事欠くことはなかった。私のお気に入りは、SeaWorldというテーマパーク。日本でいう水族館複合型テーマパークといったところ。かなり質の高いイルカやシャチのショーが見ることができるうえ、WDWにはないスリリングなジェットコースターが楽しめる。買い物場所は、アウトレットだけでも多数あり、出かけるたびに両手いっぱいの袋を抱えることになってしまった。寮の近くに位置した「Orlando Premium Outlet」は、今秋泉にオープンした「Izumi Premium Outlet」と同じ会社のものであり、その雰囲気なども非常に似ているところがある。その意味で、Izumi Premium Outletに買い物に出かけると、Orlando Premium Outletのことが思い出され懐かしい気分になる。そしてここで声を大にして言いたいことは、遊びに行くにしても、買い物するにしても、ディズニー以外のホスピタリティを勉強するという気持ちは常に持ち続けるように気をつけていた、ということだ。
3.3.4 Disneyでの生活 ~働く編~
Walt Disney World Resortのテーマパークの一つ、Animal KingdomのDinolandエリアに配属され、Finding Nemo The Musicalのシアター(Theater in The Wild. 以下TITWと表記)の案内係及び、BoneYard(以下、BYと表記)でオペレーターとして従事した。
【BoneYardでの業務】
BYは子供向けのプレイグラウンドで、アスレチック広場のようなもの。子どもたちはロープクライミングや滑り台などで遊ぶことができる。Digsiteと呼ばれる、恐竜の化石を掘り起こすための砂場と連結している。一人での入場を許されるのは7歳以上の子供で、それ以下の場合は保護者を連れていなければ入場することはできない。多くの場合は家族連れで訪れる。
ここでのメイン業務は、子どもたちの安全を守ることである。遊びに夢中になった子供たちほど危険なものはない。子どもたちが安全に遊べるように、親と協力しながら子供にルールを教える、というのが理想像である。しかし、その肝心の親たちが曲者であった。ルールをしっかり教えながら、子どもと一緒に楽しめる、という親は全体の1割にも満たず、残りの9割の親たちにキャストメンバーはみな頭を悩ませていた。ケース1は、ここぞとばかりに子供をほったらかして休憩する親たち。子どもが他人に迷惑をかけていても見て見ぬふりを決め込む。しかし、ふと自分の子供の姿が見えなくなると「うちの子が見当たらないわ!!」と突然キャストメンバーに食ってかかり迷子探しを依頼することが多々あった。そしてケース2は、わが子だけは特別、とばかりに率先してルールを破る親たち。小さい子が順番を守って列に並んでいたとしても平気で横入りしたり、危険を顧みない遊び方を教えたりすることもあった。こういった大人たちに、注意を促すのも必要な業務であった。
全体としてみれば、働く上でそれほどの熟練したスキルは必要とされないため、インターンシップ開始当時はここに多く割り当てられ、仕事や環境になれるため時間を費やした。仕事内容そのものはそれほど大変なことはないのだが、勤務時間が長いこと(平均10時間、多い時には14時間)、そして野外のため夏は灼熱であることが最もつらい点であった。ただ後述するシアターでの業務に比べるとストレスが少ないうえ、見回りがウォーキング運動にもなるのでインターンシップ後期には週に1回のリフレッシュ時間として満喫できた。
【Theater in The Wildでの業務】
2年ほど前に新しくできたシアターで、一度に1800人程度収容可能。ミュージカルは1日5回(繁忙時は6回)公演される。公演時間は約40分で、開演30分前に開場する。非常に人気のため、開場直後に満席となることも多く、繁忙時には1時間以上前から長蛇の列ができる。繁忙時以外にも、公演40分前にはゲストたちが行列を作り始める。定員に達するか、開演3分前になるとそれ以降の入場はいかなる理由を持っても認められない。
シアターでの業務は、外部チームと内部チームに分かれて行われる。両チームは連携を取って、人数の調節や、情報の共有などをする。この連携がうまくいかないと、定員以上のゲストが入場してしまいトラブルのもとになる。情報の共有が成功の鍵で、そのためインカムセットや無線ラジオ、電話など多くの道具が使用される。ゲストと対峙しながら、かつ同時にチームが発信する情報をキャッチしなければならなかったので、高い英語力と集中力が常に必要とされる現場であった。
シアター内部での仕事の醍醐味は、ゲストを上手に誘導し、席を無駄なく埋めていくこと。ゲストが好き勝手に好きな場所に座ってしまうと、全てのゲストが着席するまで時間がかかってしまうし、ゲスト同士のトラブルが起きてしまう場合もある。そのため、最も効率的な方法でゲストを所定の位置に誘導し、より多くのゲストがショーを見ることができる状態にすべく様々な工夫がなされた。その基本的な工夫の一つとして、すでに着席しているゲストに対し、席を詰めてもらうように呼び掛けるという仕事があった。一人ひとりに頼んでいてはきりがないので、何百人単位に対して大声で席を詰めてもらうよう叫ばなくてはならない。ゲストが不快な思いをしないように、パフォーマンスを交えて楽しく呼びかける必要があるのだが、私はこれで何度も失敗してしまった苦い経験がある。原因は、大声で英語を話さなければならないというプレッシャーと、それを何百人に聞かれるという恥ずかしさからパニックになってしまうことで、私の叫んだ内容をゲストが理解できず、会場が静まり返ってしまったこともあった。この他にも、シアター内部の仕事としては、内部チームを総括し外部チームへ指示を出すというMain Usherという大役があった。所謂全ポジションのリーダーであるため大変な役割で、最初の頃は周りが見えずリーダーとしての役割を全く果たすことができなかった。しかし、辛抱強くサポートしてくれた同僚たちのおかげで、インターンシップ後期ではチームの信頼を得ながらリーダーとして仕事をこなすことができるようになった。(ちなみに、どのポジションになるかはCDSとよばれるシステムによって、出勤時コンピュータにログインした時にランダムに割り当てられる。ローテーションがあり、1日3~5個のポジションにつくことになるが、運が悪いと一日中同じ仕事である場合もある。)
シアター外部での仕事は、開演前はゲストの誘導や体の不自由なゲストの介助などで、開演後はゲストトラブルに対応することだった。前述のとおり、開演3分前もしくは定員に達成するとそれ以上のゲストの入場はできない。入場を締め切った後は必ず、まだ開演まで1分あるのだから入場させろ、中に家族が自分の分の席を確保している、10分前から並んでいたのになぜ入場できないのだ、とゲストが押し寄せてくる。これら全てのゲストに対し理由を説明し、納得してもらうためには辛抱強くゲストと話す他方法はない。ゲストに怒鳴られたことは何度もあったし、英語をまともに話せるキャストメンバーを連れて来いと罵られたこともあった。タフな精神が必要とされる仕事であった。
職場環境に言及すれば、私にとって最高のものであったと言える。唯一の日本人として歓迎され、多くの同僚に可愛がってもらえた。インターンシップ開始当初は英語もろくに話せず、うまく打ち解けられなかった。しかし、本当に温かい人ばかりで、私が打ち解けるまで何度も何でも話しかけてくれたり、遊びに誘ってくれたりした。毎日笑いが絶えない職場で、楽しいこともつらいことも共有し合える雰囲気があった。いつまでたっても半人前の私を、皆がサポートしてくれたおかげで、どんなにつらいことがあっても仕事を続けることができた。また、みんなに恩返ししたいという一心から、少しでも進歩しようと頑張り続けることができた。
システムの話をするならば、日本のようなマニュアルは存在しない。もちろん、“ディズニーのルール”、“ディズニー流のホスピタリティ”は徹底的にたたきこまれるが、基本的には自由に接客することができる。つまり、自分が楽しいと思えるスタイルで接客することができる。これが仕事をする上で一番の魅力であったように感じられる。キャストメンバーが仕事を楽しめなければ、ゲストを楽しませることはできない。これがウォルトディズニーの方針で、キャストメンバーの満足度を高めるため様々な催しが開催され、キャストメンバーであることを楽しむことができるように配慮されていた。研修制度は非常に充実しており、ひとりの研修生に一人のトレーナーが付き、実践、理論の両面から仕事を教えてもらえる。何かトラブルが発生した際にはすぐにマネージャーに相談するように奨励されているし、実際に私も仕事以外のことでも多々助けてもらうことがあった。
3.3.5 最も価値のある財産―友人
プログラムを振り返って最も価値のある財産は何だろうと考えてみると、それはかけがえのない友人たちに出会ったことであると断言できる。この友人たちがいなかったら、私の経験に価値は生まれないかもしれないというほど貴重な存在であったし、これからもそうである。友人との距離の取り方や接し方は日本人のそれとは全く異なり、初対面でも気兼ねなく遊びに行ける雰囲気であった。
友人たちとは、数えられないほど買い物にでかけ、仕事終りに飲みに行き、休日にはテーマパーク巡りをし、最高の時間を共有することができた。中でも、2008年7月に、ブラジル人の親友と、ルームメイトとルームメイトの同僚の4人で参加した「ディズニークルーズライン」は感動の連続であった。キャストメンバー割引によって、一般価格から半値以下になった価格からは考えられないほど豪華な内容で、贅沢の限りをつくした3日間を過ごした。美しい島々が見渡せるオーシャンビューの部屋に、豪華な食事と上級のテーブルサービスとエンターテイメントに加えて、24時間どこにいても提供される軽食やスナックのサービス、毎晩開催されたクルーズラインでしか見ることができない貴重なミュージカル、そして極めつけはあのパイレーツオブカリビアンの「フライングダッチマン号」が浮かぶディズニーのプライベートアイランドを独り(?)占めというまさに至福の時間と空間。豪華客船を余すことなく堪能し、それと同時にウォルトディズニーのホスピタリティの質の高さに改めて感心した出来事であった。
3.3.6 目標とその達成度、プロス・コンス
最大の目標であった英語の上達については、リスニングスキルにおいてのみある程度達成できたと言える。ただ、リーディング力とスピーキング力は伸び悩んでしまった。前者については、アカデミック学習の機会が少なかったことが原因と考えられる。後者は、日常生活には困らない程度の力はついたものの、ネイティブスピーカーとスムーズに会話ができる、というレベルまでは到達することができなかった。
一方で、視野を広げるというあいまいな目標であったにも関わらず、視野が広がった手ごたえが感じられた。異文化を知り、そして自文化を見直し、それを共有・受け入れることができたこと、そして何よりその違いを楽しむことができたことが大きい。そういう考え方もあるのか、と何度も思う場面があり、そのたびに新たな角度から物事を見つけられるようになった。
このプログラムに参加したことで得られたこと(プロス)と、その対価として支払ったものや努力(コンス)は、以下のことである。
プロス
・かけがえのない友人たちができたこと。
・実践英語が学べたこと。
・多様な文化への寛容性が養えたこと(ダイバーシティ)
・日本文化の見直し・価値の再発見ができたこと
・プロフェッショナルとして仕事をすることの誇り
・リーダーシップ、タイムマネージメントなどのビジネススキル
・チームで一つの事を達成させる喜び
・ハプニングを自分で解決する力(問題解決力)
コンス
・1年間の休学期間
・費用
・ストレスや疲れからくる体の不調
・歯科トラブル
結論
プロスを得るためには、ある程度の代償(コンス)を支払わなければならないものの、1年という休学期間や費用に見合う以上の経験が得られたと私自身は実感している。「学ぶ・暮らす・働く」のテーマとおり、あらゆる面から成長材料が得られた。時の経過とともに非日常生活が日常生活へと変わっていき、その中で起こる問題や課題に次々に対処しながら日々成長できたように感じている。この経験で培ったことを、今後のキャリアにどう活かせるかを考えると、ここからが本番だともいえる。
3.4 国内インターン事例
ここでは、日本国内でインターンシップを経験した4人の事例をあげる。
3.4.1 設計事務所への研修事例
◆ 基本情報◆
宮城大学事業構想学部デザイン情報学科4年 M・Oさん
・期間・・・3週間
・勤務地・・・東京都内の設計事務所
・業務内容・・・設計・模型作り・会議への参加
・勤務時間・・・1日あたり12時間
・報酬…昼食代のみ
3.4.1.1 きっかけ
このインターンシップは、大学でアレンジされたものとは別に企業が個別に募集する形をとっている。大学がアレンジしたインターンは地元企業がメインであり、希望した環境が得られなかったため、本人はこの個別募集インターンへの応募を決めた。
3.4.1.2 業務内容
勤務地は東京都内の設計事務所である。研修期間は3週間だった。業務内容は多岐に渡り、模型作りや図面の作成など、大学で学んだ知識・スキルを活かすことのできるものがあった。また、打ち合わせに参加し、自分のアイデアを受け入れてもらうことができるなど、大学では得がたいことを経験できた。その分,朝の10時~夜10時まで勤務という、かなりの勤務時間にもなっているが、充実感を得ることはできたようだ。費用面に関して、宿泊費は自己負担で報酬は無かったが、昼食代はすべて会社側が負担していた。実際の業務に触れたことで、大学で学んだ知識を活かせることを肌で感じことができ、また自分の意見を会社側が受け入れてくれたことによって、本人の自信になったようだ。
3.4.1.3 プロスおよびコンス
このインターンで得られた最大のプロスとして、就職活動へのモチベーションアップが挙げられる。設計事務所で働き、会議に参加し、さらに学生である自分の意見を取り入れてもらったことが、自信へと繋がり,就職活動を動機づけることになった。
コンスとしては、やはり諸費用の負担である。研修先での滞在期間が3週間ということもあり、宿泊費の負担はかなり大きかったようだ。また、得られたものとして、モチベーションの高まりを挙げたが、費用対効果を考えるとそれほど得られたものが大きかったわけではない。
大学側が提供するインターンシップでは学生本人が望んでいる企業とマッチしなかったため,この事例では,自ら費用を負担してまでインターンに参加する必要があった。
3.4.2 ホテルへの研修事例
◆ 基本情報◆
宮城大学事業構想学部事業計画学科4年R・Sさん
・期間・・・6日間
・勤務地・・・仙台市泉区内のホテル
・業務内容・・・レストランでのウェイター
・勤務時間・・・8時~5時
・報酬・・・なし
3.4.2.1 きっかけ
このインターンシップは、本学で2年次に開講された科目を通じて参加したものである。現在観光系のゼミに所属している本人は,もともと興味があった観光・宿泊系へのインターンシップを決めた。
3.4.2.2 業務内容
この企業は仙台市泉区に位置するホテルである。インターンシップでの業務内容は、主にホテル内のレストランでのウェイターとしての接客である。それだけではなく、厨房内での皿洗いや客室の清掃も行っていた。これらの業務は、社員がホテル内で行う仕事とほぼ同じである。他にはホテル内の施設の見学などを行い、この企業ついての理解を深めた。社員と同じ業務をこなすことで、責任を持って仕事に取り組むことができたようだ。仕事に対する金銭的な報酬は無かったものの、最終日にはフランス料理でもてなされた。これはホテルらしい報酬といえる。
3.4.2.3 プロスおよびコンス
このインターンで得られたプロスとしては、大きく2点ある。まず、大学での学びと現実との関連を、実体験をとおして把握できたことである。実際の業務を自分も行うことにより、大学での勉強が実社会とどう結びついているかを理解し、それと同時に仕事の厳しさを知ることができた。2つ目としては、仕事に対する認識が変わったことで、目前に控えていた就職活動へのモチベーションが上がったことだ。
しかし、当然マイナスの面もあった。国内でのインターン全般に言えることであるが、研修期間が短いことである。仕事に慣れてきたころに終わってしまうのだ。また、事前に何の連絡もなしに、制服のクリーニング代金を負担させられた。学内のインターンに関して、選考基準が曖昧である点もコンスとして挙げられる。当初は旅行会社へのインターンを希望していたが、選考により他の企業への変更となった。しかし、その企業も理由が良く分からず変更となり、最終的にこのホテルに決定した。このようなことから、学生側が納得する説明をすることが大学側に求められる。
3.4.3 投資銀行への研修事例
◆ 基本情報◆
東京大学4年 K・Mさん
・期間・・・1週間
・勤務地・・・東京都内の外資系金融証券会社
・職種・・・金融商品の組み合わせによるポートフォリオ作成によるプレゼンテーション
・報酬・・・1日あたり1万円
・勤務時間・・・8時半から終電間際
3.4.3.1 きっかけ
この企業を選んだ理由は、これから就職活動を行うにあたり、熱意を持って働く人に接することで、これからのキャリアビジョンと金融世界に関するインスピレーションを得ようといった目的を持っていたためである。
3.4.3.2 業務内容
研修先の会社は,M&Aアドバイザリー・資本市場業務・自己資本投入業務を主な業務としている世界的な投資銀行である。東京支社は1986年に設立された。インターンシップでの業務内容は大きく3つあり、ありとあらゆる金融商品を組み合わせてポートフォリオを作り、その案をプレゼンして会社に売り込むというもの。これは3人によるグループワークで、資料も与えられた。期間は実質48時間であった。次に、個人プレゼンとして、ビジネスモデルの研究をするものと、証券化・サブプライム問題をまとめるものがあった。それらに1日ずつ割り当てられた。研修期間中は常に社員と触れ合う機会があり、学生としてというより社員の一人としての扱いだったため、モチベーションを保つことができた。
3.4.3.3 プロスおよびコンス
このインターンは夏休みの時間に余裕があるときに行われたので、時間的負担はなかった。また、外資系企業ということもあり、報酬として1日1万円と交通費が支給されたので、費用の負担は参考文献の購入費のみであった。インターンでは社員だけではなく、起業した学生や帰国子女など志の高い学生とのつながりを持てた。さまざまな人と触れ合うことにより人脈も広がり、また刺激を受け就職活動へのモチベーションをあげることができた。
しかし、期間が短いことがデメリットとして挙げられる。もっとも大変だったのが、労働時間だった。朝8時半集合で、終わるのは終電間近だったことである。まさに、外資企業では根性が大切であると、身をもって体感したようだ。
このような肉体的な負担はあるが、将来のキャリアプランに関するビジョンを得るという点からも、メリットは大きい。
3.4.4 設計事務所への研修事例
◆ 基本情報◆
東北大学経済学部4年K・Sさん
・期間・・・2カ月間
・勤務地・・・コンテンツ作成ベンチャー
・業務内容・・・会社本来の業務とは別プロジェクトの立ち上げ
・勤務時間・・・上記期間内で200時間以上
・報酬・・・研修費として最初の2ヶ月で2万円と業務上の交通費
3.4.4.1 きっかけ
このインターンシップは、東北大学が用意したプログラムを通じてのものである。大学側がリストアップした企業は、およそ15社。その中から,企業からの紹介文にもっとも熱意が感じられたこのベンチャー企業にインターンシップを決めた。
3.4.4.2 業務内容
この企業は、モバイルコンテンツの製作・運営を主に行っている。インターンシップの内容としては、企業の業務とは別のプロジェクトを立ち上げ、また、セミナーの開催などがメインである。インターンを開始してしばらくすると、新たにデザイナーズファームというプロジェクトを立ち上げる話が持ち上がり、プロジェクトのリーダーとして活動した。このプロジェクトの業務内容は、製作企業側の利益があまり無く、単価の安いデコメなどの作成である。依頼主からこのベンチャー企業が受託し、デザイナーズファームが作成するという構造である。デザイナーズファームは20名ほどから成り、仙台の学生・主婦などが主なデザイナーである。学生・主婦は小遣い稼ぎやデザインのスキルを上げることができる上に、企業としては人件費が掛からなくて済む。当初、デザイナーズファームはこのベンチャー企業の一部署という扱いであったが、現在ではスピンアウトし、独立した別組織となって現在も活動している。
デザイナーズファームの話が来てから立ち上がるまでに、インターンの期間は終わってしまった。理由は簡単で、初めてのことで何から手をつけて良いのか分からず、何もしなかったのだ。このプロジェクトは社員から怒られて、やっと立ち上がった。しかし、インターンの期間は終わっている。そのため本人は,インターンとは別に,デザイナーズファームを継続して運営指揮することになった。
3.4.4.3 プロスおよびコンス
最終的な目標としては、プロジェクトを軌道に乗せることである。現在でも組織が受け継がれ運営されているので、その目的は達成されたといっても良いだろう。また、プロジェクト立ち上げに時間を費やしてしまったため、迷ったらまず実行することが重要であることに気付かされた。しかし、インターンの成果が形として残り、行動の変化に繋がったことはメリットとして挙げられる。
しかし、デメリットとしては期間である。実際の業務に本気で携わるのであれば、2ヶ月という期間は短すぎた。そのため、任意の形でインターンを継続することになってしまった。その一方で、組織の運営のために費やした時間は膨大であり,プライベートな時間を犠牲にせざるを得なかった。
このインターンシップでは、企業側と学生側の温度差が無く、双方にとってプラスのことがあった。企業にとっては新たなビジネスチャンス、学生にとっては自信と行動の変化である。企業と学生の温度が、高いところで一致していることが、インターンシップにとって重要なのだろう。
3.4.5 国内インターンシップに関する考察
上記の4事例を見てみると、インターンシップに参加することで、全員が就職活動・仕事へのモチベーションが上がっていることが分かる。仕事の現場で、業務を与えられ社員と同等の扱いをされ、評価をされるため、責任感が生まれる。また、実際の業務を行うことで、大学で学んでいる事と現実の違いに気付き、反対に学んだ知識との関連にも気付いていく。想像していたよりも仕事内容が厳しいことも多い。しかし,それらを乗り越えたことで、結果的に自信につながり、また、自分の改善点が見えてくることによって、それを克服しようとする。そのことが、就職活動・仕事に対するモチベーションアップにもつながっている。しかし、費用対効果を考えてみると、どうだろうか。全員がインターンへの参加がモチベーションアップにつながり、学業への意欲も湧いたようだ。しかし、モチベーションアップと同時にかなりの費用がかかっている。たとえば、研修先への交通費・宿泊費である。ほとんどの企業において、インターンシップへの交通費の補助などがない。また、勤務地が国内ということから、気軽に経験を多くつめる事からプロスとも受け取れるが、その分インターンに軽い気持ちで参加してしまうことも多い。上記の事例からも、国内インターンシップでは、プロスとコンスを天秤にかけてしまう傾向があるように感じられる。
一方、ディズニーを例に国外でのインターンを考えてみる。プロスとしては語学力の向上が第一であるが、その他にも多くのことがある。学んだ知識を活かして実際に接客をするなど、実践を通して語学力・コミュニケーション能力を高めていける。しかし、コンスとして、精神的・身体的な負担、そして多額の費用負担である。慣れない環境に長い間滞在し,食生活や文化の違いなどによるストレスから体調を崩しやすい。しかし、国内インターンとは異なり、これら経済的・精神的・身体的な負担があるからこそ「必ず何かを得よう」という気持ちになる。つらいことを乗り越えることで、結果として自信に繋がる。国外でのインターンシップはコンスがあるからこそ、その何倍ものプロスを得られると考えられる。
もちろん一概に国内インターンシップが悪いということはいえない。国外インターンシップのようにコンスをプロスに変えることができれば,国内インターンシップを理想的な成長の場にすることができるだろう。
4 分析・考察
第3章で紹介した事例に基づき、国際・国内インターンシップのプロス・コンスを中心に2つのインターンシップ形態について考察・分析する。
4.1 国内インターンシップのプロス・コンス
国内インターンシップの4つの事例からプロスをまとめると“就職活動へのモチベーションの向上”、“自分の行動の変化”、“実際に企業で働く人との交流”の3点が挙げられる。インターンシップという形で自分が将来生きていく社会に出て、その社会で実際に働く人々と共に仕事をすることで、自分自身の将来について考える機会が増えたことにより就職活動へ向けた意気込みがかわっていったと考えられる。さらに、自ら社会に飛び込む機会を与えられたことにより、自身の心の中でも、それまでの受動的な気持ち・態度から自発的かつ積極的な気持ち・態度そして行動へと変化を及ぼしていった。そして、国内インターンシップで最も大きなプロスと言えるのが、実際に企業で働く人と交流できることである。自身が大学を卒業して進む先である日本の企業で実際に働く社員と共に仕事をすることで、学生気分がなかなか抜けない自分に刺激を受けることができる。そしてその上で人脈を広げることもできる。これは今後の就職活動や、その後の社会人としての人生にも大きく役立つことであると考えられる。
一方、国内インターンシップのコンスをまとめると、“費用”、“期間の短さ”の2つが挙げられ、それに加えて、人によってはプロスよりコンスのほうが大きいインターンシップであったと感じさせてしまう場合があるということがある。費用については、国際インターンシップのように“参加費”といった費用が発生することはあまりないが、職場までの交通費、遠方での研修の場合は研修期間中の宿泊費等は自費でまかなう必要がある。そのうえ、国内インターンシップにおいては給与が支払われるケースは多くない。そういった状況により、費用も国内インターンシップにおけるコンスの1つであるととらえることができる。そして次に挙げられるのが期間の短さ。国内インターンシップの期間は企業によって異なるが、多くが1週間~1ヶ月であり、国際インターンシップと比較してもそれは短い。研修期間が短いが故に、参加したプロジェクトの途中で研修が終了してしまったり、職場に慣れることに尽力し、こころざし半ばで研修が終了してしまったりするケースも少なくはない。これらの場合は期間の短さも国内インターンシップのコンスと考えることができる。最後にコンスがプロスよりも大きく感じられてしまう場合もあり得ることについてだが、これは生じた代償(費用等)に対して、身になったこと・得たことが少ないと感じてしまうことがケースも存在するということである。これは企業側のインターンシップに対する意向と学生側がインターンシップに求めるものが異なることも一因となっているが、不本意のままインターンシップを終えてしまう場合がある以上、この点も国内インターンシップのコンスと考えることができる。
4.2 国際インターンシップのプロス・コンス
第3章の3つの国際インターンシップの事例に基づき国際インターンシップのプロスをまとめると、“大きな成長”、“英語力の向上”、“人種の壁を越えた人々との交流”、“価値観の変化”の4点が挙げられる。異国の地で生活し、学び、そして働くという経験の中で今まで出会ったことのない問題と出会うことも多かった。しかし、そのたびに正面からそれらにぶつかり、自身で解決する術を探していくことで問題解決能力を身につけることができた。また、日本ではなかなか経験することのできない、様々な国籍の仲間との共同生活を通して、自立して生活する力や、協調性、柔軟性を養うことができた。そういった新しい体験を通して精神的にも大きく成長できたと考える。そして英語力。現地の語学学校に通い実用英会話の基礎を学び、その上でWDWにてネイティブスピーカーとともに働くことを通して、生きた英語を学ぶことができた。さらにWDWではアメリカ人はもちろん、ヒスパニック系や日本人以外のアジア人などさまざまな人種の人々がキャストメンバーとして働いているため、彼らとの人種の壁を越えた交流を通して自分自身の価値観が変わり、視野が広くなっていくのを感じることができた。
そして国際インターンシップのコンスとしては、“休学・留年”、“留学費用”、“身体的負荷”の3つが挙げられる。今回筆者ら3名が参加した国際インターンシップの期間は7ヶ月から10ヶ月。そのためどうしても1年間の休学が必須となり、それに伴い1学年留年しなければならない。もっとも、宮城大学には「留学」という制度があり、この制度を利用すれば1年分の学費は免除され、休学と同じ扱いになるが、復学する際は今まで在籍していた学年ではなく、1年進級した学年に復学できる。実際に今回のプログラムに参加した宮城大学の学生の中でもこの制度を利用した学生もいる。しかし、筆者ら3名の場合は3年後期からのプログラム参加だったため、就職活動の時期を考慮し、この「留学」の制度ではなく、休学・留年という方法をとった。休学・留学、いずれの方法をとるにせよ、1年間大学を離れなければならず、それまでの生活を一転させなければならないためこれは大きなコンスの1つであると考えられる。そして費用の問題。費用は通常の留学よりは若干安価ではあるが、語学学校の学費とWDWでの研修費用を合わせて100万円、それ以外にも渡米の際の旅費や生活費等が必要となるため場合によっては200万円近くの費用が必要になってしまう。WDWの研修では給与が支払われるため幾分かは還元されるが、それでも多額の費用が必要であるのは事実であり、これもコンスと考えることができる。そして最後に身体的負荷。外国で暮らすということは、生活習慣や食事を含め、それまでの生活のほとんどが変化することになり、その地の文化に否応なしに順応することが必要とされる。その環境の急激な変化により、身体的に大きな負荷がかかることは否めない。さらにWDWでの研修は、“ハード”の一言に尽きるもので、時には息つく間もないほど忙しく働かなくてはならず、それによっても体は大きなダメージを受けた。加えて、医療環境や保険制度・対象範囲等も日本とは異なる。実際に、日本の他の大学から参加した学生で、米国の歯医者にかかり、その治療があまりにも日本とは異なったため、WDW研修中にも関わらず一時的に日本へ帰国せざるを得なかった学生もいたほどである。そういった状況も手伝って研修中は体の不調があっても医者に行くことは難しかった。こうした理由により国際インターンシップにおいて受ける身体的負荷もコンスの1つであると考える。
4.3 考察
これら両インターンシップ形態のプロス・コンスを分析する中で、国内インターンシップにおいてはプロスとコンスの結びつきが弱く、一方で国際インターンシップはコンスさえもプロスになりうるのではないかという両インターンシップ形態の決定的な違いにたどり着いた。国内インターンシップにおいて、プロスとコンスは別々の存在であるが故に、場合によってはプロスよりコンスのほうが大きく感じられてしまう。そのために、不本意なまま、あるいは、満足感を抱く前にインターンシップを終えてしまう場合があるのではないだろうか。一方、国際インターンシップでは、それまでの自分の生活を一転し、多額の費用をかけるという大きなコンスを払うからこそインターンシップに参加する覚悟が決まり、それがより大きなプロスにつながると考えることができる。そのため研修に求めるものや研修中の態度や行動は人によって異なるが、誰もが何らかの点でやり遂げた実感を持って日本に帰ってくることができるのである。生じるコンスがあまりにも大きいが故に、たとえ国際インターンシップでの研修で得たものはなかったと感じたとしても、あの辛い期間を乗り越えることができた、それだけでも大きな達成感を得ることができるのだ。よって我々は国際インターンシップにおいては、コンスですらプロスへつながっていくと考える。
5 結論
今まで見てきた事例や分析から導き出された結論を、次のような数式で表現した。その意味や根拠については、下記のように考察をまとめた。
国際インターンシップ=プロス×コンス
国内インターンシップ=プロス±コンス
考察1:国際インターンでは、得られたもの(プロス)、支払った代償(コンス)さえも自分の力になる。つまり、プロスとコンスが掛けあわせることでより大きな成果が得られる。
→支払った代償が大きいため、それ相応の覚悟と決意を持って臨む態勢が確立できる。中途半端な気持ちは生まれず、自分のやるべきこと・目標を、短期的・長期的に明確にし、行動するので、成果が出やすい。その結果として、大きな成長を感じることができる。満足度が高いので、代償に価値が見出せる。
考察2:国内インターンシップではプロスとコンスが別の存在である。
→もちろんある程度の代償を支払う必要はあるが、日常生活の中で収まる範囲内であるため、それほど大きな志をもって臨む場合が少ない。それに比例して、短期内で飛躍的な成果が得られる場合が少ない。長期間の場合でも、日常生活(大学の講義や課題、アルバイトなど)でのワークと同時に取り組まなければならないため、集中力を持続するのが困難で、成長曲線が安定しない。それゆえ国内インターンシップでも大きなプロスは得られるが、人によってはコンスのほうが大きく感じられてしまう。
考察3:国際インターンシップはインターンシップの理想系であり、国内インターンシップとは違った+αの体験をすることができる。
→参加への心意気、規模や参加した後の充実感を鑑みると、国際インターンシップは必要な要素がすべて集約されているように思われる。また、参加することにより派生して起こる+αの出来事も、全てが成長材料であり(そしてそれを成長材料として受け止めることができる)良い意味で予想を遥かに凌駕した収穫が得られる。インターンシップの目的は、社会を知り、就労を経験し、そして何よりも自分を成長させることだと考える学生にとって、国際インターンシップはまさに理想のプログラムであると言える。
考察4:ディズニープログラムへの参加によって創造されたキャリアバリュー
→ディズニープログラムに参加した3名としては、プログラムへの参加は払った代償以上の成果を出し、自分のキャリアを作り上げる上で非常に有益な経験であったと考えている。異世界に飛び込んだことにより、外部からの刺激による成長はもちろんのこと、自己の内面を深く見直し成長させることができた。対人関係において、自分の世界が広がり、様々な人々との関わり合いからワールドスタンダードを学ぶこともできた。世界を舞台に努力・そして成長したという経験は3名に誇りと自信を持たせる結果となった。この経験がもたらす影響は測り知れず、まさにこれからの人生・キャリアを左右するほど大きな価値を見いだせたことは間違いない。
“寄り道のススメ”
国際インターンシップと国内インターンシップでは寄り道の大きさは違う。一見すると大きな寄り道をすると不利なように思えてしまうが、大きな寄り道をしたからこそ得られることが必ずある。リスクを負うことを恐れずその世界に飛び込めば、自分が今まで見えなかった世界が広がっていることに気がつくだろう。その意味で、学生へはインターンシップへの参加を強くお勧めしたい。その際は、国際・国内/長期・短期を問わず、自分の支払う代償と成長目標を事前に明らかにすることを忘れないでほしい。そうすることにより、プログラム参加中の成長速度が飛躍的に伸びるだけではなく、よりリアリティと重みをもって物事を受け止められるようになるからだ。前述のとおり、ディズニープログラムに参加した3名は、ディズニープログラムへ参加したこと、そして成長して帰ってきた自分たちに強い誇りを抱いている。私たちは、今回の“寄り道”を自分たちの人生の中で輝かしい経験として自負しており、その経験から自信を持って、恐れず寄り道をしてみることをお勧めしたい次第である。
“周囲のサポート体制の重要性”
最後に、蛇足的ではあるが周囲のサポート体制の重要性について少し言及させていただきたい。国際・国内を問わずインターンシップへ参加する学生に対して、大学側のより充実したサポート体制を求めたい。例えば、単位の互換に関してもう少し多くの選択肢と柔軟性があればよいと感じた。また、インターンシップに興味がある学生の窓口的役割を担うことはもちろんのこと、大学全体がインターンシップへの参加を奨励するような雰囲気作りを期待したい。現在、特に国際インターンシップに関してはサポート体制が形成されつつあるが、私達が切り拓いたこの道を大学として継承してもらえることを切に願っている。
謝辞
ディズニープログラムへの応募・参加、そして本総合研究をサポートして頂いた全ての方々に対し、この場をお借りして心より感謝の意を表明いたします。
プログラムに参加するにあたり、本大学の国際センター、そして事務局の方々には、応募や渡米に関して各種手続き等を円滑に進めるように取り計らって頂きました。そして、田代久美先生には、プログラムの応募から参加中の全ての過程において、細やかな配慮と現地での温かい励ましの言葉を頂きました。お仕事の枠を超えたお心遣いに、言葉では表しきれない感謝と尊敬の念を抱くばかりです。
また、本総合研究への取り組みにおいては、ご担当の小嶋秀樹教授には多大な助言を頂きました。本論文を完成させることができたのも一重に小嶋先生のご指導があったからこそであります。
改めて皆様に、深く感謝申し上げます。誠にありがとうございました。
【参照HP】
日本におけるディズニー国際カレッジプログラムに関するNPO法人WILによるHP
http://www.npowil.org/disney/index.html
ディズニー国際カレッジプログラムに関するDisneyによるHP(英語)
http://www.disneyinternationalprograms.com/
【付録】
・Disney International College Program期間スケジュール

・フードオペレーション事例での勤務地(Disney’s Hollywood Studio内)

・マーチャンダイズ事例での勤務地(EPCOT内)

・アトラクションオペレーション事例での勤務地(Disney’s Animal Kingdom内)
