新着情報

19.12.27

2019年度学術情報センター主催のFD(ファカルティ・ディベロップメント)を開催しました

オープンアクセスの動向を踏まえ今後の学術情報のあり方を議論

宮城大学学術情報センターは,図書館の企画運営を中心に,本学における教育・研究・地域貢献の資源としての学術情報の収集,保存,流通・発信を担っています。近年,デジタル化をはじめとする技術革新やインターネットの発展等の外部環境の大きな変化のなかで,図書館もまた変化を余儀なくされています。今回,そのような外部環境の変化のなかでも喫緊のトピックとなっているオープンアクセス(オープンサイエンス)について,第一人者をお招きしてご講演いただくことでそれらの動向を学内に紹介すると同時に,本学のみならず大学図書館全般における今後の学術情報のあり方について議論を行いました。

また,本企画は学内向けの研修ではありましたが,東北地域においても貴重な機会となると考え,東北一円の大学図書館を中心にご案内を差し上げ,東北大学はじめ仙台圏はもとより,北は青森,南は福島からも10名を超える多数のご参加をいただき,さらに有意義な場とすることができました。


主旨説明と講師紹介

最初に,茅原学術センター長より,オープンサイエンスについてあまり議論されてこなかった本学の現状と,この機会にその動向を学内で広く共有し,今後の学術ジャーナルの整備やAPC(Article Processing Charge)の問題,また学術機関リポジトリの活用等を考えていくきっかけとしたい旨のFD主旨説明がなされ,ご登壇いただくお二人の講師のご略暦等が紹介されました。

尾城 孝一 講師

最初のご講演の講師は国立情報学研究所(NII)・オープンサイエンス基盤研究センターの尾城孝一さんです。尾城さんは,東京大学付属図書館事務部長をはじめ国立大学付属図書館の現場を歴任されると同時に,我が国において学術ジャーナル高等やオープンサイエンスに対応する中心的な組織である「大学図書館コンソーシアム連合(JUSTICE)」を立ち上げ,初代局長を担われるなど,まさに日本のオープンサイエンスを牽引してこられた方です。

林 和弘 講師

もうお一方の講師は,文部科学省科学技術・学術政策研究所の林和弘さんです。林さんは自らも化学分野の研究者として研究に従事するなかで,当該分野の代表的学会の電子化・オープン化に長年携わられ,それらのご体験を活かして現職ではオープンサイエンスのご研究と政策立案の両面で活躍をされています。また,シチズンスサイエンスの実践的活動も行われています。


講演Ⅰ:オープンサイエンスの動向とオープンな学術出版エコシステム

はじめに,国立情報学研究所の尾城さんより「電子ジャーナルの価格問題とオープンアクセスを巡る国内外の動向について」というタイトルでご講演をいただきました。国内外の動向と我が国の取り組みを網羅的にご紹介いただくと同時に,目指されるのは単なるOA出版モデルへの転換だけではなく,商業出版社に依存しない学術情報のエコシステムを学術コミュニティが自ら作り出していくことである,という貴重な提言をいただきました


講演Ⅱ:オープンアクセスがもたらす弊害と希望(シチズンズサイエンス)

つぎに,文部科学省科学技術・学術政策研究所の林さんより「ジャーナルのオープン化がもたらす光と影〜オープンアクセスが研究者に与える影響とは〜」というタイトルでご講演をいただきました。オープンアクセスの進展にともなう「影」(APCの不透明性・高額化や,いわゆるハゲタカジャーナル等)について,これからの図書館職員に求められる職能や大学のイメージ戦略も含め包括的に解説いただくと同時に,シチズンズサイエンスや,学術情報のエコシステムについての情勢のご紹介と具体的な提言をいただきました。


質疑・議論とエンディング・リマーク

公演後に質疑応答と議論が時間を延長して行われました。学内の複数の教員からAPCに関する質問と提言がなされました。また,本学事業構想学群特任教員・学術情報センター学芸員の小川特任准教授からはオープンサイエンスに向けた具体的なTODOをこの場で共有することが提起され議論が行われました。さらに風見事業構想学群長からは,オープンサイエンスの流れのなかでシチズンズサイエンスにつながる部分は,事業構想学群地域創生学類が担うべき研究や地域貢献の一つとして捉えていける旨積極的な提言がなされました。

最後に,川上学長から講評とあいさつがあり,これまで自らもオープンサイエンスの推進を担ってきた学長からは「やるかどうかではなく,いつ・どのようにという段階にはいっている」と,本学でもオープンサイエンスを推進していく方向が示されました。


開催概要

令和元年(2019年)学術情報センターFD(ファカルティ・ディベロップメント)
オープン・アクセス・ジャーナルの動向と本学における学術情報および研究資源の今後

・開催日時:2019年10月4日(金)16:00~17:00
・開催場所:宮城大学太白キャンパス講義棟1F大講義室(宮城県仙台市太白区旗立二丁目2番1号)
・参加者:本学教職員及び役員57名,東北地区大学図書館協議会会員館など8機関12名,総勢69名が参加

・主催:宮城大学学術情報センター


学術情報センター

学術情報センターは,学術資料の収集・提供を通じて本学の教育・研究支援に取り組むとともに,対外情報発信を行っている機関で,大和・太白図書館を所管しています。学術資料については,紙ベース資料の良いところを活かしつつ,電子化を促進しています。また,学内研究の成果等を集積してデジタルアーカイブ構築を進めています。2014年からイベント「六限の図書館」を開始するとともに,図書館空間を利用した学修支援と学生アクティビティ,地域に向けた生涯学習機会の提供に努めています。

TOP