建設環境材料学研究室
北辻 政文(環境システム学科/教授)
日本の輸入量は約8億トンで、輸出量は1億2000万トンと収支バランスが極めて悪く、物が国内に蓄積する社会構造となっています。そして輸入されたものは数年後には廃棄物となり、毎年4億5000万トンの廃棄物が発生しています。この量は、本学から見える太白山(標高321m)に換算すると約40座にもなります。
建設業は、これらの廃棄物のリサイクルに大きな貢献をすると考えています。なぜなら建設業は、10億トンという他の資材では例を見ない量を毎年消費しており、その規模の大きさからリサイクル材を有効、かつ大量に受け入れ可能な産業だからです。
一方、地球の天然資源も石炭と鉄を除けば後50年で無くなるといわれています。建設業も例外ではなく、良質な骨材(砂利、砂)の枯渇が問題となっており、細骨材(砂)の不足はとくに深刻な状況です。このため廃棄物を資源として有効利用することは、建設業の材料不足を補ううえでも有益です。同時に限りある天然資源の延命化に繋がり、将来の世代のために貴重な資源を多く残せることになります。
この様な社会背景から、当研究室では、無機系の各種廃棄物を建設材料として有効利用するための研究を行っています。
FAコンクリートへのプレフォーム型エントレインドエアーの適用に関する基礎的研究
FA(フライアッシュ)は石炭火力発電所から大量に発生する産業副産物です。このFAをコンクリートに混ぜると長期強度が増加し、また、コンクリートに有害なアルカリシリカ反応の防止対策にもなります。しかし、FAに含まれる未燃カーボンがコンクリートに必要な空気の混入を妨げます。そこで、本研究では未燃カーボンの影響を受けにくいプレフォーム型の微細空気を開発しました。これにより、FAの利用拡大が期待されます。
石炭ガス化溶融スラグのコンクリート用細骨材としての利用に関する基礎的研究
石炭ガス化複合発電は、蒸気タービンにガスタービンを組み合わせた高効率石炭火力発電技術です。本研究は、この発電システムで生成された石炭ガス化溶融スラグの品質とこれを用いたコンクリートの性質を明らかにし,さらに実証試験の一環として、鉄筋コンクリート製品を作製し、実用の可能性について検討したものです。研究の結果、スラグを用いたコンクリートは強度および耐凍害性において問題なく、利用できる可能性が高いことが明らかになりました。