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25.12.25
11/11令和7年度 自治体向けセミナー『自治体政策の課題と展望』を開催しました/研究推進・地域未来共創センター
令和7年11月11日、大和キャンパスで自治体向けセミナーを開催しました。本セミナーは、研究推進・地域未来共創センターが企画・主催し、自治体職員の皆さんが実務に役立つ知識や手法を学ぶとともに、担当職員同士の意見交換や交流の機会とすることを目的として、小規模の研究会形式で開催しています。今年度は東北農政局との共同企画とし、持続可能な農山村の実現を目指してオーガニックビレッジ宣言を行った宮城県内の大崎市、加美町と、現在計画中の石巻市の実践事例を紹介。現場での工夫や課題を共有し、今後の自治体政策に活かせる具体的手法や制度の活用策について考えるとともに、後半では宮城県農政部の担当者を交え、フロアの参加者を交えて意見交換・ディスカッションを行いました。

冒頭では、東北農政局宮城県拠点地方参事官の長田恵理子氏より、「みどりの食料システム戦略」やオーガニックビレッジに関する政策動向と、各地域への展開状況について解説がありました。2006年の有機農業推進法制定から、2021年のみどりの食料システム戦略、2022年のオーガニックビレッジ支援開始までの経緯を紹介するとともに、現在全国で150市町村が取組を開始し、学校給食での有機食品活用も9割に達するなど事業の進捗が報告されました。今後はオーガニックビレッジ(産地)と都市部(消費地)との連携拡大や、ビレッジ間連携による広域流通、観光・福祉との連携を通じた地域活性化など、オーガニックビレッジを軸としたまちづくりが重要とされ、国の交付金による支援メニューも紹介されました。
千葉副センター長
東北農政局 長田地方参事官
続いて、宮城県内3自治体による事例発表を行いました。
大崎市(産業経済部 世界農業遺産推進監 安部祐輝氏)
大崎市は、令和7年3月にオーガニックビレッジ宣言を行いました。大崎市では、世界農業遺産に認定された「大崎耕土」を基盤として、伝統的水管理システムを活かした持続可能な水田農業を推進しています。令和4年に「有機農業・グリーン化推進協議会」を設立し、スマホ水管理や自動抑草ロボット「アイガモロボ」を導入するとともに、冬期湛水「ふゆみずたんぼ」や生物調査を通じ、生物多様性保全と観光の両立を目指しています。また、新規有機ほ場での有機JAS認証の推進、学校給食への有機米提供などの事例について報告がありました。
加美町(農林課 課長 尾形一浩氏)
加美町は、令和7年4月に宮城県内の町として初めてオーガニックビレッジ宣言を行いました。加美町では、伝統的な農業文化を継承しつつ、有機農業の拡大に挑戦しており、JA加美よつば有機米生産部会を中心とした、有機米の栽培面積の拡大への取り組みを行い、環境保全と生産性向上の両立を目指しています。また、学校給食への有機米提供や地域イベントでのPR活動、児童の田植え体験や生物調査など教育連携にも力を入れており、今後は担い手確保や有機野菜の品目拡大、販路強化を課題に、持続可能な農業モデルの構築を目指していることなどが紹介されました。
石巻市(産業部 農林課 課長 佐々木憲明氏)
最後に、現在オーガニックビレッジ宣言の準備を進めている石巻市から事例紹介がありました。石巻市では、令和7年5月に「有機農業推進協議会」を設立。有機農業実施計画の策定を進める中で、抑草対策や機械導入を支援し、流通・消費段階ではECサイト活用や学校給食への有機米提供、地元飲食店との連携を強化しています。また、試食会やイベント出店を通じて地域内への周知やPRも進めながら、令和7年度内のオーガニックビレッジ宣言を目指しています。今後は、申請に向けた地域内の合意形成や、販路拡大、担い手育成を課題に、広域的な有機農業ネットワーク構築を目指しています。
大崎市 安部世界農業遺産推進監
石巻市 佐々木課長
加美町 尾形課長
宮城県農政部 高澤技監
後半のディスカッションでは、登壇者4名と宮城県農政部 技監兼副部長 高澤和寿氏を交えて、現場の課題や展望について意見交換を行いました。高澤技官からは、県の支援制度や交付金に関する紹介があり、自治体間の情報共有の重要性についても確認されました。また、「地域のブランド化や観光との連携」「教育効果を活かしたPR」「担い手の確保」など、幅広い視点から現場の課題や、持続可能な農業や農村の展望について意見交換が行われ、オーガニックビレッジを核とした地域づくりの可能性が広がる議論となりました。

開催概要
| 事業名 | 令和7年度自治体向けセミナー『オーガニックビレッジが拓く地域デザイン-みどりの食料システムで活かす里地里山- |
| 開催日時 | 2025年11月11日(火)14:00~16:30 |
| 開催場所 | 宮城大学大和キャンパス 交流棟2階オープンスタジオ PLUS ULTRA- |
| 登壇者 | ・東北農政局 宮城県拠点 地方参事官 長田恵理子氏 ・大崎市 産業経済部 世界農業遺産推進監 安部祐輝氏 ・加美町 農林課 課長 尾形一浩氏 ・石巻市 産業部 農林課 課長 佐々木憲明氏 ・宮城県農政部 技監兼副部長 高澤和寿氏 |
| 参加者 | 県内自治体職員 |
| 主催 | 宮城大学 研究推進・地域未来共創センター / 後援 東北農政局 |
宮城大学研究推進・地域未来共創センター
宮城大学の教育や研究に関わる知的財産を活用し、地域の企業、自治体、学術・研究機関、金融機関等との連携を進めながら、新たな研究開発や地域未来共創プロジェクトを推進し、真に豊かで持続可能な地域社会を実現していくために設立。本センターは、本学における看護学群、事業構想学群、食産業学群、基盤教育群の各領域及びそれらの横断的な教育・研究の成果を基に、東北・宮城の様々な地域の資源や人材を新たな発想と視座から連携し、地域未来共創を推進するプラットフォームを構築していきます。

