2018年度(平成30年度)3月
宮城大学卒業証書・学位記授与式式辞

川上学長式辞の様子

今年は例年に比べて足早な春の訪れにより、暖かな日差しがうれしい季節になりました。

まず、本日、卒業証書を受ける423名および学位記を受ける33名の学生の皆さん方のこれまでの学生生活における努力に敬意を表し、列席している副理事長、理事、副学長等をはじめとした本学の教職員を代表して卒業および修了を祝福いたします。

また、本日、年度末のあわただしい時期にもかかわらずご臨席をいただいている宮城県副知事佐野好昭様、宮城県議会議長佐藤光樹様をはじめとした皆様方に御礼を申し上げるものです。あわせて、これまで学生を育て、学生生活を支援していただいたご家族、関係者の皆様に御礼を申し上げるとともに、お祝いを申し上げます。

去る3月11日で、東日本大震災から8年の歳月が流れたことになります。震災を振り返り、震災時および今にまで続く被災者の方々の悲しみやご労苦にお見舞いを申し上げるものであります。先月、私は、石巻市に出張する機会があり、少し足を延ばして大規模な仮設住宅団地が設けられてきた「仮設開成団地」周辺を訪れ、ひと廻りしてまいりました。石巻市は宮城県で最大の津波被害を受けた自治体であるだけに、開成地域周辺には2000戸に達するプレハブ造りの応急仮設住宅が建てられていたのですが、大半はすでに解体されているか解体作業に入り、残された住宅にも人影がまばらで、震災から8年という長大な時間を要したものとはいえ、復興の進展の一側面を感じることができました。

ここに参列している学生の皆さんは、本学在学の期間に、学修、サークル活動やボランティア活動など学内外の活動を通して東日本大震災を振り返り、さらには、復興活動にも加わった方も多いものと思います。すでにあの日から8年を経過したとは言え、震災を経験した私たちには決して忘れることのできない記憶があります。震災復興期間はいよいよあと2年となりました。これから社会で活躍する皆さん方は、復興期間終了後において、宮城県、日本、そして世界において活躍を期待される有為な人材です。震災の記憶を風化させることなく、苦難の経験を糧に、皆さん方一人ひとりが個人の幸福の達成と社会の持続的な発展に貢献していくよう活動することを期待しています。

復興の進展は喜ばしいことですが、これにとどまっていてはいけません。我々が復興に汗を流していたその間も、世界は発展し、他方、東北の過疎化、高齢化といった社会問題は着実に深刻の度合いを増してきています。したがって、一刻も早く将来を見据えた持続的発展へも目を向け、ギアを入れ替えていかなければなりません。

国連は、我々が震災からの復興に取り組んでいた2015年9月に「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を採択し、17の目標と169のターゲットからなる「持続可能な開発目標」、いわゆる「SDGs」を掲げました。SDGsは、前身のミレニアム開発目標とは異なり、全ての国に適用される普遍的な目標であり、その達成のために政府のみならず、民間セクターも含むすべてのステークホルダーの参画が期待されるものとなっています。

国連の決定を受け、わが国は、アクションプラン2018を策定し、SDGs達成に向け、3つの方向性を示して、取り組むこととしています。このうちの2つ目に、SDGsを原動力とした地方の創成や強靭で環境に優しいまちづくりが掲げられ、3つ目に、SDGsの担い手となるよう若者と女性のエンパワーメントを図ることが掲げられています。東北という課題先進地域で学んだ若者である皆さんは、真にSDGs達成の担い手として期待されるものであります。

今、SDGsへの取り組みを宣言する企業、団体が増えてきています。多くの皆さんがこれから働く企業や団体もSDGsを意識した活動をすることになっていくものと思われます。皆さんは、これまで得てきた知識と経験をもとに、自信をもって、大いに力量を発揮して頂きたいと思います。

ところで、日本経済団体連合会が来年度に就職する学生を最後に採用選考に関する指針を廃止するということにしました。このことは、大学生の新卒一括採用を起点とし、年功序列を伴った終身雇用するという従来の日本企業の人事慣行がもはや瀬戸際にあるということを現していると考えるべきものであります。三大メガバンクがそろって、情報化の進展に伴い、数千人を超える大規模な合理化を行うという方針を打ち出したということも記憶に新しいことです。皆さんはこれからの仕事に期待して社会に出ていくわけですが、その仕事が今のまま続くとは保証されません。それまでとは異なった新しい仕事に就かなければならない時に新たな知識や技能の習得が必要とされます。大学から旅立つ今日は、生涯続く学びの入り口に立ったものとみなければなりません。生涯を通じた学びの心がこれからの人生を切り拓き、豊かな生活をもたらすものです。

本年の学部卒業生の約半数の皆さんは、宮城県外に就職し、宮城県から居を移すことになります。私は、仙台を離れて社会人生活のほとんどの期間、東京を仕事場としてきましたが、宮城大学学長に就くために再び仙台に戻り、居心地の良さを味わい楽しい生活を送ることができています。仙台、宮城、そして東北地方は、人々の心の温かみを感じる場所であり、豊かな自然に囲まれ、発展への潜在力を有する地域です。

これから宮城県外に出る卒業生の皆さん、再び宮城県に戻り、就職をしよう、起業をしようという時に、宮城大学は皆さんを歓迎し、いつまでも力になるものです。

最後になりますが、宮城大学における学生生活を満喫し、その課程を無事修了し、これから社会に向かう卒業生、修了生の皆様、宮城大学とのつながりはこれで切れるものではありません。宮城大学は、常に皆さんに寄り添い、必要な時にできる支援をしていきたいと思います。

本日の善き日に当たり、改めてお祝いを申し上げ、式辞といたします。

平成31年3月19日
宮城大学学長
川上 伸昭

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