2019年度(令和元年度)9月
宮城大学卒業証書・学位記授与式式辞

本日は、令和になってはじめての卒業証書・学位授与式となる令和元年度宮城大学9月卒業証書・学位記授与式を迎えたわけであります。この度、晴れて宮城大学の学士課程を終え社会人としての新たな人生に臨む卒業生、大学院での研鑽を終え博士号の学位を受ける諸子の1人ひとりに敬意を表し、お祝いを申し上げたいというふうに思います。

さて、私には、今、世界は、冷戦の終結以来最大の変動の時期に直面しているというように見えてきています。この数年を振り返ると、冷戦の終結から30年の間世界で優勢であった自由資本主義体制に対して抑えがたい矛盾を唱える指導者が出現し、これまでの政策を大きく転換する動きが世界中に拡散し、拡大しているというように思われています。

過去において、世界を大きく変えるきっかけとなった二度の世界大戦は、社会の転換と科学技術の発展との共振作用を顕在化させてきました。戦争が兵器関連技術の急速な発展を促し、第二次世界大戦は、原子爆弾という、これまでとは比較にならない残忍性を持った技術によって終結し、技術が新しい世界体制を作り上げる原動力になったわけであります。

続いて世界を分断した東西の冷戦は、情報通信技術の発展が、東西陣営の間に築かれた物理的な壁を無力化して終結に導いたと概括でき、市民がベルリンの壁をハンマーで破壊する映像が、これを象徴する歴史となっています。

そして、21世紀初めから拡大したインターネット技術は世界を覆い、IoT技術がこれから生み出す情報は膨大な情報量となってネットに流れ込み、これを活用するAI技術が大きく社会に展開されていく、という新たな社会像には疑う余地がないのではないかというふうに思います。これに伴い、価値はモノから情報に移り、情報資本に立脚した社会への転換というのがこれから起こっていくのではないでしょうか。

皆さんがこれから活躍する社会は、digitalを活用し、AIによって情報を価値化して競争力を生むという社会になっていきます。皆さんがこれから働く職場でも、いわゆる digitalizationが進んでいくのでしょう。それによって引き起こされる職場の変化、これに皆さんも遭遇することになるのではないかと思います。そういった中で、引き続き働いていくためには、新たな知識を常に取り入れていくことが求められていくのではないかというふうに思います。

大学における課程の修了は、人生の節目として大変重要なものでありますが、勉学からの卒業というものではないわけであります。むしろ、生涯続けなければいけない、新たな知識の獲得と創造のスタートラインに立ったというべきものであるわけであります。

皆さん方が、宮城大学の生活で得たものを糧に、これからのかけがえのない人生を開拓し、華やかな人生とならんことを祈念して、本日の式辞としたいと思います。

令和元年9月18日
宮城大学学長
川上 伸昭

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