大学案内2021学長メッセージ
時代とともに、変革し続ける学び場を。
今、世界は変化の奔流の中にあり、人々は先が見通せない焦燥感に捉われています。振り返ってみれば、2019年は米国と中国の間で体制をかけた覇権争いともいうべき対立に身構えたものが、2020年に入るやいなや新型コロナウイルス感染症の世界的大流行が起こり、先行きに対する不透明感が際立ってきています。この感染症がもたらす社会・経済的な困難について、この文章を書いている時点において自信をもって想像することは難しく、私のこのメッセージを読む人々が果たしてどのような社会情勢に置かれているのか見極めることはできません。このように社会は今、大きくかつ急速に変動しつつあり、大学はこのように変化する社会を生き抜いていくことのできる人材を育てていくことを社会から付託されています。
宮城大学は、開学以来、実学を尊重し、実践的な教育を行うことを信条としてきました。その結果、社会で役立つ多くの人材を輩出し、社会の発展に貢献をしてきました。しかし、このような社会の大きな変動を前にこれまでの教育のまま立ち止まっていては時代に取り残されることになります。
このため、2017年度から本学は大学の学びの土台となる基盤教育の充実に取り組んできました。必修科目群「フレッシュマンコア」を設け、少人数によるセミナー形式の授業等を通じて、豊かな人間性と学び続ける力を養います。このような土台の上に実践に基づく知識を身につけることで、社会で即戦力として通用し、かつ、将来にわたって環境変化に対応できる人材となる高い能力を持つことができます。
さらに、2018年度からは、学生の自主的な学びを促進する新たな取り組みを開始しました。大学での学修は、教員が主導する課程に留まらず、自ら、または教員や他の学生とともに主体的・能動的に学ぶ姿勢が不可欠です。そのような学修をあと押しするため、『ラーニング・コモンズ』をはじめとして、講義や演習・実習といった課程にとらわれない学修の場の提供を行っています。
また、2019年度には、大和キャンパスでは開学以来はじめてとなる新棟の建設を開始しました。過去、日本はものづくりの力によって国際競争を制してきたのですが、最近は、「コト消費」、「情報経済」というバズワードに見られるように、モノの価値が低下し、モノ、コト、情報など様々な形態の資源を総合して価値を構築する力、すなわち様々な意味合いのデザイン力が競争を左右する時代になり、国際競争環境に変化が生じています。こうしたことを踏まえ、新棟は、デザイン分野の教育研究環境を整えるものとしますが、キャンパス施設の床面積の拡大は、ことデザインに留まらず、太白キャンパスを含めた全学の教育研究環境の充実につながるものとなります。
これらに留まらず、2020年も引き続き宮城大学は時代に沿った変革に果敢に取り組むことで、若者が持つ成長に対する意欲を引き出し、成長に導いていきます。
理事長兼学長 川上伸昭