2022年度(令和4年度)宮城大学入学式式辞

まだ寒さが残る今年の春ですが、令和4年度450名の学群新入学生および38名の大学院新入学生の皆さんをお迎えすることになりました。入学おめでとうございます。宮城大学は、皆さんを歓迎し、皆さんとともに歩んでいくこれからに期待を膨らませています。

そして、今日は年度はじめの慌ただしい時期にもかかわらずご列席をいただきました村井嘉浩宮城県知事、菊地恵一宮城県議会議長、浅野元大和町長、関孝ヱ宮城大学後援会長のご来賓の皆様に御礼を申し上げるものです。

3月16日に福島県沖を震源とする地震が発生しました。11年前の震災の記憶をよみがえらせる長時間の揺れに驚かれた方も大勢いたものと思います。ここに、この地震によってお亡くなりになった方々のご冥福をお祈りするとともに被災された皆様にお見舞いを申し上げます。この地震によって本学でも施設・設備の破損が発生しています。新年度の開始にあたり、まだ復旧には至っておりません。学生さんにはいくらかの不便をかけることになるかもしれませんが、ご容赦いただきたく思います。また、入学式を行う予定であった東京エレクトロンホール宮城も被災したので、本学講堂に会場を移すこととなり、新型コロナウイルス感染症感染拡大防止のために間隔を空けた着席となるよう午前と午後の二部に分けた分散実施ということになり、全学の新入学生が時間を共にする貴重な機会である入学式を分割せざるを得なかったことは極めて残念であります。

さて、今年入学した学群生の皆さんは、新たなカリキュラムを受講する一期生となります。5年前に本学は学群制の採用などを柱とする改革を行いましたが、その後の5年間の実績と最近の社会の変化を踏まえたさらなる改革となるカリキュラムです。このカリキュラムでは、将来にわたって学び続けることのできる基礎力を養う基盤教育をさらに充実し、基盤教育から専門教育への連続性を高め、社会の変革に沿ったより高度で実践的な専門教育の展開を図ることとしています。新しいカリキュラムについては、改めて説明があるのでそれをしっかりと聞き、充実した学生生活につなげていっていただきたいと思います。

ここでは、新カリキュラムにも通じる本学の特徴ある取り組みについて述べていきたいと思います。

本学は25年前に看護学部と事業構想学部の2学部体制で開学しました。今日、ステージの後ろに掲げている学章に「ホスピタリティ」と「アメニティ」という言葉が刻まれているように、本学は、いわば、「人にやさしく幸福で快適な社会を作っていく人材を育成していこう」というその後の社会の変化を見通す理念を提示しました。この概念は、今では国連が決議したSDGsに見ることのできる「だれ一人取り残さず持続性と包摂性のある社会を目指す」という概念に通じるものです。SDGsが掲げる17のゴールはどれもチャレンジングでこれを達成するためにはいくつもの革新の積み重ねが必要になります。また、だれ一人取り残さないためには、人々が住まう地域というミクロの目と世界というマクロの二つの視点を持って取り組んでいくことが必要になります。

このため本学は、挑戦をする精神であるアントレプレナーシップと、地域と世界の双方に通じるグローカルな視点の育成を充実しようと取り組みを開始しています。

その一環として、新カリキュラムでは全学共通の科目として「アントレプレナー基礎」の導入や、地域フィールドワークの充実、コミュニティプランナー事業の改善など新たな取り組みを進めてきていきます。

さらに、これまで新型コロナウイルス感染症の蔓延によって海外への渡航が制限されているために縮小していた海外への渡航を含む国際プログラムについて、行き来が可能になる段階で拡充していくよう準備を進めています。皆さんの中には既に長期留学を考え準備をしている人もいるでしょうし、これからの学生生活の中で国外に出ることなど考えもしないという人もいるでしょう。東北地方は東京圏に隣接しているために東京を通して世界を見るという傾向を持ってきたと思います。しかし、これからは情報化の進展なども手伝って直接世界とつながっていくことになります。皆さんが世界に目を向けて、生き生きと交流する姿に期待をしています。本学は、昨年度から始まった6年間の中期計画において、多様な形で学生さんが海外に出る機会を作るプログラムを、年間200人分を目指して拡大していくという目標を立てました。外国で有意義な経験をしていくためには、語学力の鍛錬と渡航に備えた蓄えが必要です。プログラムに参加することを目指して準備を心掛けられることに期待しています。

今、ロシアによる武力侵攻によってウクライナでは日々市民が傷つき、亡くなっていく悲惨な情勢が伝えられています。しかし、ロシアでは、政府の意に沿わない情報は隠され、国民が情報に基づいて主体的に判断する主権が脅かされたさ中にあり、国民が自らの国の進路について自由に主張することができていません。民主主義国家では主権は正しく市民に置かれ、それが行使される環境になければなりません。

日本では、公職選挙法の改正により選挙権年齢が18歳以上に引き下げられてから、すでに4度の国政選挙を経験しました。皆さんの中には昨年の総選挙で投票をしたという人もいるのかもしれませんが、これまでの4回の選挙において、18,19歳の投票率は20歳代とともに常に下位にとどまり続けています。今年は夏に参議院議員選挙が行われます。投票は、民主主義国家において国民が主権を行使する正当な機会です。あなたの意思表示なしに社会の進路が決まっていくことのないよう、今年の選挙においては、真剣に考えて、必ず投票をすることを求めます。

新型コロナウイルス感染症との戦いの終わりは容易には見えてこないようです。これまで多くの大学では遠隔授業が続けられてきましたが、今学期においては文部科学省から対面授業の復活が強く求められる状況になっています。本学では実践的な教育を充実する観点から、昨年度一年間、手厚い感染拡大防止対策を講じることで安全に対面授業を実施した豊富な経験があります。皆さん方も、今日から宮城大学の一員になりました。今日から、学内外を問わず、感染を避けるよう慎重に行動しながら、自身の健康観察を怠らず、少しでも体調の変化を感じたときや感染者との濃厚接触が疑われることとなった場合には無理をせず休むようにしてください。大学に来たときには入り口での入館登録、体温確認など決められたことを確実に行ってください。学内では不織布マスクを正しく着用し、食事などでマスクを外すときには会話を控える、教室の換気は自分たちの手で十分に行う、普段からソーシャルディスタンスをとり、密を避ける、手洗いや消毒をするといった感染防止に効果のある一つ一つの対策を何段階にも怠りなく行っていくことが大切です。これからの学生生活を通して、自身の健康を守るということだけでなく、仲間を思いやりながら皆が健康に過ごすことができるように心がけ、実践することを望んでいます。

最後に、ここに列席している新入学生の皆さんに改めてお祝いを申し上げるとともに、学生さん一人ひとりにとって、宮城大学におけるこれからの日々が充実したものとなることを祈念して、私の式辞といたします。

令和4年4月3日
宮城大学長
川上 伸昭

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