2024年度(令和6年度)3月
宮城大学学位記授与式式辞
ここに晴れて、宮城大学から学士の称号を授与された看護学群92名、事業構想学群202名、食産業学群126名、合わせて420名の皆さん、ご卒業おめでとうございます。そして修士の称号を授与された看護学研究科4名、事業構想学研究科5名、食産業学研究科14名の皆さん、さらに博士の称号を授与された事業構想学研究科2名、食産業学研究科2名の皆さん、誠におめでとうございます。皆さんが学問と真摯に向き合い、研鑽を重ねてこられた成果を今ここに大輪の花として咲かせたことに、心より敬意を表します。
また、この日を心待ちにされ、皆さんをあらゆる形で支えてこられたご家族、関係者の皆さまに大学を代表して深く御礼を申し上げます。皆さまの温かい励ましとご協力があったからこそ、本日の晴れの門出を迎えることができました。
そして、御多用にも関わらず御臨席を賜りました伊藤哲也宮城県副知事、本木忠一宮城県議会副議長、石井幹子宮城大学経営審議会委員、髙橋かおり宮城大学後援会長に、本学を代表いたしまして厚くお礼申し上げます。
さて、皆さんの学生生活を振り返る上で、まず触れなければならないのは、新型コロナウイルス感染症の影響です。学群ご卒業の皆さんの入学式は、感染防止のため2部制で開催され、入学後も対面での授業が解禁されたものの、講義や実習、課外活動には大きな制約がありました。そして海外研修や地域との連携活動も中止・縮小を余儀なくされるなど、多くの戸惑いや困難を体験されたことと思います。2023年5月に感染症法上の位置付けが5類に移行しましたが、コロナ以前を経験したことのない皆さんにとっては、その後も手探りでの学生生活であったものと思います。しかし、そのような中でもICTの積極的な活用や、教員と、あるいは学生同士での新たなコミュニケーション手段の模索によって、知識と経験を積み重ねてこられた皆さんの努力には、改めて大きな拍手を送りたいと思います。
一方、コロナ禍だけでなく、私たちを取り巻く社会も大きく変化しています。VUCA、すなわち変動性・不確実性・複雑性・曖昧性がますます顕在化し、環境問題や社会課題の解決に向けたSDGsの取り組みが叫ばれる一方で、政治や経済の混乱が世界中で進行しています。戦争や価値観の揺り戻し、SNSでの真偽入り混じった情報の拡散など、「正義」や「倫理観」が崩れかける中で人々の分断が広がっています。こうした社会情勢がもたらす影響は計り知れず、これまで当たり前とされていた価値観が揺らぎ、私たちの思考や行動の基盤を大きく変えつつあります。
このような混迷の時代にあって、私たちに求められるのは「物事の本質を見極め、幸福な社会の実現のために尽力する」という姿勢です。流布する情報に翻弄されるのではなく、真に正確で重要な情報を見極める眼を養い、その上で多角的な視点から社会の課題を捉えて解決策を導き出す力が一層求められています。多様な価値観の衝突、グローバル化の進展がもたらす複雑な問題に取り組むためには、専門的知識やスキルのみならず、広い教養、人間性、そして多様性を尊重する感性が欠かせません。
だからこそ、皆さんが宮城大学で培った学びが大きく生かされるのです。本学では「学問知」と「高度な実学」を融合させることで課題を探求し、解決へと導く力を育むことを教育の柱に据えてきました。看護学群・研究科においては、地域や患者さまの生活を見つめ、そのニーズに寄り添った看護実践力を、事業構想学群・研究科では、ビジネス構想や地域デザインを多角的に取り込んだ企画や政策提言の実践力を、食産業学群・研究科では、食生活や産業構造の理解に基づいた食を通じた健康増進や地域振興の企画力・実践力を磨いてきました。それぞれが文理の枠を超え、SDGsの視点を取り入れながら、社会課題の解決に直結する学修を積んできました。
こうした学びのプロセスにおいて、皆さんは多様な人々と協働しながら課題を探究してこられたはずです。自分とは異なる専門領域を持つ仲間や地域の方々との議論を深め、共通の目標を見出し、試行錯誤を繰り返しながら成果を創り上げる。その過程で身につけた「課題探求力」「課題解決の実践力」、そして「やり遂げる粘り強さ」は、これからの時代を切り開く原動力となるでしょう。そして、これらの力こそが、幸福な社会を形作るための基盤とも言えます。宮城大学での学びは、まさに世の中に貢献し、より良い未来を創造するために不可欠な「人としての総合力」を養ってきたのです。
本学の卒業生・修了生は、こうして身につけた力を携えて、すでに社会の様々な舞台で活躍されています。皆さんも、そうした先輩方の後に続き、宮城大学で培った知性と実践力を生かして、新しい価値や社会システム、ビジネスを創造し、人々の暮らしを一層豊かにするため、力強く前進してください。
もちろん、これからの人生で想定外の困難や挫折に直面することもあるでしょう。しかし、そのようなときこそ、宮城大学での日々を思い出していただきたいのです。仲間、教員とともに、何度も失敗を重ねながらも、ワクワクしながら進んできた体験こそが、皆さんにとって大きな支えとなるに違いありません。VUCAの時代だからこそ、得られるチャンスも大きいのです。皆さんがこれまでに培ってきた課題解決力、協働力、そして人間力があれば、どのような荒波に直面しても乗り越えていけるはずです。
卒業・修了した後も、皆さんはいつまでも宮城大学コミュニティの一員です。同窓会の活動や母校とのつながりを通じて、皆さんのキャリアや研究、社会活動に関するヒントを得る機会がきっとあるでしょう。後輩たちの育成に協力し、共に社会に貢献していくことは、皆さんが「先輩」として担う大切な役割でもあります。宮城大学が紡いできたネットワークや精神を共有しながら、ともに未来を創ってまいりましょう。
最後になりますが、皆さんがこの激動の時代に、宮城、日本、そして世界を舞台に、多種多様な領域で大いにご活躍されることを心から期待し、私の式辞といたします。どうか胸を張って、次のステージへと羽ばたいてください。宮城大学は、いつでも皆さんを応援しています。
本日は、誠におめでとうございます。
令和7年3月19日
宮城大学長
佐々木 啓一
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