2023年度(令和5年度)3月
宮城大学学位記授与式式辞

はじめに

本日ここに、宮城大学から晴れて学士の学位を授与された425名の皆さん、修士の学位を授与された27名の皆さん、博士の学位を授与された3名の皆さん、ご卒業、ご修了、おめでとうございます。宮城大学を代表して、心よりお祝いを申し上げます。

また、この間、皆さんがこの日を迎えることを心待ちにし、皆さんをさまざまな形で支えていただきましたご家族、そして関係者の皆様にも、お慶びを申し上げます。また御礼申し上げます。

新型コロナウイルス感染症による影響

さて、2019年の秋、中国から始まった新型コロナウイルス感染症はあっという間にパンデミックとなり、2020年に入ってからは、わが国でも猛威を振るい始めました。皆さんの学生生活はコロナへの挑戦の日々と共にありました。

特に学群を卒業された皆さんにとっては、入学式は中止、授業開始も延期され、オンラインでの授業となりました。本学での学びの大きな特徴である地域フィールドワークの実践も叶いませんでした。幸いにも本学では、後期から対面授業を再開しましたが、昨年5月のコロナ感染症の5類移行まで、課外活動などさまざまな面で、活動が制限された学生生活となってしまいました。修士、博士の皆様も、ご苦労されたことと思います。

皆さんにとってかけがえのない月日が、このようになってしまったこと、大変申し訳なく、また心が痛みます。それでも昨年5月以降は、コロナ前とほぼ変わらぬ大学生活を送れたことは、せめてもの救いです。

新型コロナ感染症とVUCAの時代

そして今、皆さんは宮城大学を巣立ちます。さまざまな思いが胸の中に去来していることでしょう。ここで、これから皆さんが生きていく時代について考えてみます。

コロナ・パンデミックは、人類にとっての大きな試練でした。しかし、素早い治療薬やワクチンの開発、ICTを用いた感染拡大防止への取り組みなど、世界は英知を持って克服しました。また、感染拡大下で、WebやICTを駆使した社会のDXは飛躍的に進歩しました。

一方、平和維持の構図にほころびが生じ、ウクライナやパレスチナで戦争が勃発し、未だ終息への道筋も見えていません。そして、このような国際情勢の変化は、石油や食料、木材などの原材料、さらには半導体などの工業製品の供給にも影響を及ぼし、これらを輸入に頼る我が国は、特に大きな影響を受けています。地方の小さな企業も例外ではありません。

さらに地球温暖化による水害や火災などの災害が多発しています。加えて我が国は多くの地震に見舞われています。この元旦の能登半島地震でも多くの方々が犠牲となり、被災した方々は未だ苦しい生活をしています。南海トラフ地震、そして東北太平洋側での再びの地震発生も不可避です。

皆さんはこのような先行きの見えない不確実な時代、いわゆるVUCAの時代に生きています。AIを含めたDX、さらにはグリーントランスフォーメーション:GXがさらに加速し、生活や仕事、そして人々の価値観が大きく変わります。

VUCAの時代に求められるもの

VUCAの時代、誰も将来を予測できませんが、今後、社会で生きていくうえで、私どもに求められる能力は何でしょう。それは「総合知」と「実践力」だと、私は思います。

総合知は、融合知、集合知と言ってもよいかもしれません。現代では知識・技術の進歩とともに学問の専門領域の境界が不明瞭になり、文系と理系の融合も進んでいます。一方で、個別の専門性はより先鋭化、高度化しています。そのため幅広い知識を持って物事を捉え、総合的に理解すること、そして、そのうえで、求められる専門性を自ら身に付けていくことが必要となっています。

企業やいろいろな事業体、保健医療の世界など、皆さんが進まれる環境においてもこのような変革は既に始まっています。IT企業の社長やAIビジネスの方が文系出身であることは珍しくありません。自ら学修できる力は総合知には大切な要素です。また、国際的な情勢と私どもの生活、仕事が密接に関連する今、どんな課題を考える際にも、国際的な感覚、国際力が必要となります。

実践力は何らかを企画し、実行、完遂する力です。このとき、言うまでもなく課題を見極め、解決する方策を、総合知を持って立案しなければなりません。

宮城大学で得たコンピテンシー

これらは「文理融合の集合知」、「グローバルな視点」、「実学に裏付けられた実践」、「課題探求と課題解決」とも言い換えられます。皆さんにとっては、いずれも、とても慣れ親しんだ言葉ではないでしょうか。

宮城大学は、1997年の開学以来、「高度な実学に基づいた確かな実践力、グローバルな視点」を理念に、教育研究を推進してきました。コロナ禍においても、内容をチューンしながら懸命に教育をしてきました。今の時点ではあまり実感はないとは思いますが、皆さんは確実に「宮城大学での幅広い学び、実践を重視した学び」を身に付けています。皆さんの先輩方を見るたびに感じますし、先輩方の就職先の方々からも、その旨の評価をよく聞きます。

皆さんは「幅広い知識に立脚した課題探求と課題解決を実践できる」、「いろいろな専門知識を自ら学修できる」というコンピテンシーを獲得しています。また、宮城大学ならではの地域や生活に密着した課題での卒業論文あるいは卒業製作を全うしました。これは「やり遂げることができる」という最も大切なコンピテンシーです。皆さんは、時代に求められる、これらのコンピテンシーを身に付けているのです。自信を持って社会に羽ばたいてください。

宮城大学コミュニティの一員として 

そして最後になりますが、皆さんは、今までも、そしてこれからも、この宮城大学コミュニティのメンバーです。本学のさらなる発展には、同窓会を中心に本学に関わる方々の力の結集が必要です。皆さんには是非、宮城大学コミュニティの一員として、母校とともに社会の発展に向けて貢献していただければと思います。

終わりに

皆さんが、このVUCA時代に、そして将来にわたって宮城、日本、世界で大いに活躍されていることを心から期待し、私の式辞といたします。

本日は、誠におめでとうございます。

令和6年3月19日
宮城大学長
佐々木 啓一

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