「宮城大学広報ツールのトータルデザイン」について

宮城大学では、2018年より全学的な大学広報に取り組むため、ウェブサイトや大学案内をはじめとした広報ツールのリニューアルに取り組んできました。このたび、これら一連のデザインワークが「宮城大学広報ツールのトータルデザイン」として、2021年度グッドデザイン賞を受賞しました。公立大学における大学広報施策のグッドデザイン賞受賞は、国内では初の事例となります。

宮城大学広報ツールのトータルデザイン (2021 GOOD DESIGN AWARD 公式サイト)
宮城大学のブランド構築のためのデザインガイドラインプロジェクトです。これによって、以前はバラバラだった広報物の全てを、統一的にデザイン可能となりました。大学特有の保守的な意思決定の場を考慮し、適切なコンセプトを軸としたガイドラインを規定することで、大学が社会に向けるメッセージを端的にアウトプットできる広報デザインを構築しています。

ステークホルダーの多さや、制作期間の短さ
統一感のあるデザイン展開は難しいとされる大学の広報ツール展開

日本の大学はいくつもの側面を持っています。体系的な知識を学ぶ「学問の場」、新しい発見や知識を見つける「研究の場」、「社会とのつながり」を見つけていく場、いろんな仲間や世代の違う方とのコミュニケーションを学ぶ場、これらにとらわれず、新しい挑戦を行う場。多くのステークホルダーがあり、大学を支える教職員もみなそれぞれの想いを持っています。

少子化が進み、学びの機会が広く提供される昨今「大学が本来持っている独自の魅力」をどのように見つめ、いかに情報発信すべきなのか。コミュニケーションの課題にどの大学も直面しています。

その一方で、公立大学は、少ない人員・予算で効率的な運営が必要とされ、多くの場合は事業の根本的な整理や、コンテンツの深堀を行うための十分な制作・検討の時間を確保できず、広報ツールは基本的にバラバラに展開されがちです。宮城大学が持つ広報ツールも以前はバラバラに展開されており、その魅力を十分に伝えきれずにいました。

大学が持つ複雑さに向き合い、情報の取捨選択と情報源の集約を徹底
シンプルにアウトプットするデザインガイドラインを構築

大学が持つ活動を掘り下げるためには、教職員間のコミュニケーションとデザインに費やす時間の確保が必要になります。宮城大学では、同じデザインチームで全てのツールを長期的・包括的に取り組める環境を作り、リサーチ・現状把握から、広報ツールの事業整理を行い、デザインガイドライン(考え方)を構築しました。学内の多くのスタッフ・所管と対話を繰り返し、情報の取捨選択と優先度整理を徹底することで、伝えるべきコンテンツやイメージを最も際立たせ、様々な分野の考え方を包括するデザインコンセプトを全てのツールに展開しています。一時的・一元的な上書きではなく、伝える情報の本質と向き合うために基本に準拠したデザインは、公立大学法人としての宮城大学にふさわしい、信頼性と可能性を感じさせる印象を与えることを意図しています。

※クリックでパネルを確認いただけます

デザインの力で、大学を支える様々な人々の想いや力を結集していくために

震災から10年、宮城大学はビジネスのデザイン・社会のデザイン・生活に関わるデザインを通して、東北におけるデザインの拠点をつくろうとしています。実践的な学びを通して地域貢献する“地域の大学としてあるべき姿”を考えるために、宮城大学は「デザインの力」で、大学を支える様々な人々の想いや力を結集する必要があります。

派手な広告やイベントではなく、大学の活動を自分たちのメディアで魅力的に発信し続ける地道な戦略ではありますが、大学に関わる学生・教職員に対して「自分たちがどんな大学で、何を扱っているのか、その魅力を自らが再認識する」効果があり、発信量の大幅な増加・メディア掲載の増加・志願者の増加のみでなく、学内・外で分野を超えた共創を生み出すような広がりさえも見せています。

このような広報ツールのトータルデザインに至るプロセスは、大学広報の基本的な形であると考えられます。このプロセスを、同じ状況で苦しむ多くの現場で共有し、東北のみでなく地域全体を盛り上げていけることができるかもしれません。


以下のメディアでご紹介いただきました。
・2021年11月2日:仙台経済新聞:「宮城大の広報ツールが『グッドデザイン賞』受賞 4年にわたる取り組みに評価」
・2021年10月31日:河北新報社会面:「宮城大公報スマートに、21年度グッドデザイン賞、学校案内やロゴ刷新、ブランド力強化」
・2021年10月21日:一般社団法人公立大学協会公式サイト:「『宮城大学広報ツールのトータルデザイン』が2021年度グッドデザイン賞を受賞しました」


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グッドデザイン賞とは

グッドデザイン賞は、1957年に創設された日本で唯一の総合的なデザイン評価・推奨の仕組みです。デザインを通じて産業や生活文化を高める運動として、国内外の多くの企業やデザイナーが参加しています。これまで受賞件数50,000件以上にのぼり、受賞のシンボルである「Gマーク」は、よいデザインを示すシンボルマークとして広く親しまれています。製品、建築、ソフトウェア、システム、サービスなど、私たちを取りまくさまざまなものごとに贈られます。かたちのある無しにかかわらず、人が何らかの理想や目的を果たすために築いたものごとをデザインととらえ、その質を評価・顕彰しています。


宮城大学の広報について

宮城大学では、大学広報を“大学が社会からの信頼や支持を得て社会で存続しつづけるための重要なコミュニケーション手段”として位置付け、広報活動を展開しています。2018年より広報委員会を再構築、情報整理や基本的な施策を定めた「広報基本方針」を整備すると同時に、他大学のリサーチや各ターゲットへのアンケートを実施。2019年4月より主要事業であるウェブサイトと大学案内をリニューアルし、その後広報誌や学内センターごとのパンフレット、オンラインオープンキャンパスや震災10年事業といった特設サイトへの展開を図っています。

  • 大学広報(ウェブサイト・パンフレット) [宮城大学広報ツールのトータルデザイン]
  • 15-06 ブランディング・CI/VI、受賞企業:公立大学法人宮城大学 (宮城県)、受賞番号:21G151364
  • プロデューサー:宮城大学事業構想学群 教授 中田 千彦
  • ディレクター:宮城大学事業構想学群 講師 高山 純人/宮城大学食産業学群 教授 中村 聡
  • デザイナー:公立大学法人宮城大学事務局企画・入試課 中木 亨、株式会社フロット 多田 直歳、小林 康
    株式会社ブレインパワード 松田 健一、ストロボライト 渡辺 然、布施 果歩

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