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19.11.21

食産業学群菊地研究室の学生達が令和元年度園芸学会東北支部会で発表賞を受賞

食産業学群 菊地研究室では,園芸学を専門分野として,温度や日長などの環境が花卉や施設野菜に及ぼす影響について生理学的側面から解析することで,花卉の成長調節技術や施設野菜の安定生産技術の開発を目指しています。

このたび,菊地研究室(人見翔,川端晴佳,北上佳奈,小林拓也,松本七海)による「有機養液栽培における微生物叢形成機構とそれによる根部病害抑制機構の解析」の研究が園芸学会東北支部会発表賞を受賞しました。

植物の成長に必要な養水分を液肥として与える栽培方法「養液栽培」では,成分調整の容易な化学肥料を使用することが多く,有機肥料を利用する実用的な成功例は報告されていませんでした。これは,有機肥料を直接添加すると,作物が吸収できる状態まで分解(無機化)が進まずに腐敗し,植物に大きなダメージを与えてしまうことが原因となります。

「有機養液栽培」は,その養液中に土壌由来の微生物を添加して培養することにより,従来の養液栽培では用いることのできなかった有機質肥料を無機化して作物を栽培する技術です。有機肥料を用いながら,化成肥料による従来の養液栽培と同等の品質・収量が得られるだけでなく,根部病害を抑制できる利点があります。

病害抑制効果をもたらす微生物の可能性に着目

本研究では,「病害抑制効果」は添加した微生物が病原菌に阻害的に働くのではないか,ということを仮説としています。そのため,研究の過程では,どのような土壌の微生物がより病害抑制に有効であるか,またその作用機作について検討しました。

その結果,畑作地よりも森林などの土壌のほうがより養液中における病原菌の増殖を阻害すること,また土壌由来の微生物が根の周りに形成するバイオフィルムが病原菌の作物への感染を阻害していることなどが明らかとなりました。

今後はこの知見を深めるほか,有機養液栽培への未利用資源の活用についても検討を行っていく予定です。研究が進めば,食品の製造過程などで捨てられていた未利用資源を肥料として,農薬を使用しない安全な野菜を作る,といったことが可能になるかもしれません。

園芸学会東北支部「発表賞」について

園芸学会東北支部会は,東北地方の現場に即した園芸に関する研究および技術の進捗を図るために親学会である園芸学会より発足した団体です。東北支部は1979年の設立以来,研究や普及活動を高揚する目的で支部大会を毎年開催し,東北6県の園芸分野に関係する大学,試験研究機関,企業の所属会員が研究発表を行い,なかでも優れた研究成果を発表した者に発表賞を授与しています。

研究者プロフィール

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