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21.08.20

絹村講師による大手製造業の転職経験者に関する研究論文が日本経営倫理学会水谷雅一(論文)賞奨励賞を受賞/事業構想学群

事業構想学群 絹村 信俊 講師は,管理会計・経営管理・組織行動を専門分野として,主に管理会計システムと組織行動の観点から研究に取り組んでいます。絹村講師が執筆した研究論文「わが国大手製造業に勤務する転職経験者の特徴に関する調査:経営理念・組織文化・組織コミットメントの観点からの考察 (『日本経営倫理学会誌』(第28号)掲載)」が,このたび水谷雅一(論文)賞奨励賞を受賞しました。

労働の流動性進む社会,安定した大手製造業も外部人材(転職経験者)を導入する時代が到来

日本の労働の流動性,いわゆる中途採用・転職の広がりは,昔に比べ大分多様化してきています。一方で,自動車産業を始めとした多くの大手製造業はこれまで,離職率が低く安定的な雇用の維持が可能な産業と言われてきました。しかし,2019年5月13日の日本自動車工業会の会長会見で「終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」と示されたように,大手製造業の雇用も終身雇用のような安定的な雇用から,流動的な雇用(転職経験者の増加)へ変化していくことが予想されます。このため,大手製造業は元々雇用が安定している=人材の流動化が進んでいない産業であるために,転職経験者が企業に上手く定着することができないというミスマッチが起こることが大いに想像されます。
今回の研究では,人材の流動化のキーマンでもある転職経験者に焦点を当てて,彼らが企業へ定着することに必要不可欠な観点でもある「経営理念」「組織文化」「組織コミットメント」への意識調査を行いました。

大手製造業に勤務する転職経験者と生え抜き従業員の意識の違いを明らかに

わが国の大手製造業(=資本金3億円超,かつ従業員300人超)の企業に勤務する事務系職種(=企画・財務・経理・人事・総務・営業等職種)の正社員を対象としたアンケート調査を行い,得られたデータを統計分析しました。その結果,以下のことが明らかになりました。

転職経験者は全社レベル・部門レベルともに組織文化の中でも支持的文化(=協調性を重視する仲良し文化)への意識が低い傾向にあること。

転職経験者は経営理念への意識が多様である可能性が示唆されること。

転職経験者は組織文化の中でも革新的文化(=リスクをとってチャレンジングに行う積極的な文化)への意識が多様である可能性が示唆されること。

転職経験者は組織コミットメントの中でも情緒的コミットメントへの意識が多様である可能性が示唆されること。

 同じ組織に勤務する従業員であっても転職経験者と転職経験者以外(所謂生え抜き従業員)とでは,「経営理念」「組織文化」「組織コミットメント」への意識は異なることが明らかになりました。それに加えて,転職経験者は協調性を重視する仲良し文化には染まりにくい傾向にあるようです。これらの結果が示す見解として,転職経験者は即戦力人材であったとしても,経営理念をしっかりと浸透させて,転職先企業について理解を深める必要があると言えます。このようにすることで,企業に対して高い組織コミットメントを示し,業績向上に貢献していくことが期待できるのではないでしょうか。
また,転職経験者の革新的文化への意識が多様である可能性を鑑みますと,組織活性化や組織変革を行わなければならない企業にとっては,転職経験者の受入れ,及び活用は有効な手段の一つであると考えられます。

本研究は,今後の日本的経営の在り方を考える際に貢献する研究論文として評価されました。絹村講師は,「実社会の動きを捉えつつ、学術研究を進めていくことで,学術研究への知見の蓄積、更には企業経営への知見の蓄積にも微力ながら貢献していきたい」とコメントを寄せました。

日本経営倫理学会-水谷雅一(論文)賞奨励賞とは

日本経営倫理学会は,「経営倫理問題に関する事項について,学術的かつ実際的な研究を行い,その研究成果の発表,診断指導技法の開発,国内及び諸外国における関連学会・研究団体との交流及び情報交換並びに連絡提携,関連資料等の刊行等の事業活動を通じて会員相互の協力と資質の向上を促進し,わが国における経営倫理問題の健全な発展に寄与する」ことを目的とし,様々な活動を展開しています。経営倫理学を中心とした研究の奨励に資するため,水谷雅一賞(学会賞)を設け,優秀な著作・論文を審査選定し,これに賞を授与しています。

研究情報

  • 研究論文:「わが国大手製造業に勤務する転職経験者の特徴に関する調査:経営理念・組織文化・組織コミットメントの観点からの考察」
  • 掲載雑誌:『日本経営倫理学会誌』(第28号 2021年)

研究者プロフィール

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