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20.01.10

看護学群・風間逸郎教授が研究指導する学生達が「心筋梗塞でおこる心電図異常のメカニズム」を証明しました

看護学群に所属する風間逸郎教授は,病態生理学・内科学・一般生理学を専門分野としています。また,内科の専門医として臨床にも携わっており,主要な研究のひとつとして「心疾患の病態生理と心電図異常のメカニズム解析」をテーマとした研究を行っています。

このたび,風間教授が研究指導をしている看護学群4年生(高村香乃さん,山田侑奈さん,杉﨑由衣さん,鈴木麻由さん)が「心筋梗塞でおこる心電図異常のメカニズム」を, 世界で初めてウシガエルの心臓を用いて証明しました。

本研究成果は,2019年12月付けで英文雑誌(Journal of Veterinary Medical Science)にも掲載されました。
今回の取組みは,本学・看護学群内で一貫して行われた初の基礎研究成果でもあります。

命の危険が迫る「心筋梗塞」診断の課題“心電図異常メカニズム”

心臓を養う血管(冠動脈)に起こる動脈硬化により,心臓に血液が十分に行き渡らなくなり(虚血性心疾患), その結果, 心臓の筋肉が壊死まで起こしてしまった状態を“急性心筋梗塞”といいます。

心筋梗塞は,迅速に診断して治療を行わないと命にかかわる大変危険な病気であり,症例の約半数は突然発症するといわれています。患者さんが病院に到着してから, 緊急で再潅流療法(閉塞した冠動脈の血流を再開させる治療)が開始されるまでの時間が遅れれば遅れるほど救命率が低下します。

心筋梗塞がおこるしくみ
(風間教授による疾病論I講義資料より)

心筋梗塞の心電図でST部分が上昇するメカニズム
(文献:Kazama I, Takamura K, Yamada Y, Sugisaki Y, Suzuki M. J Vet Med Sci 2019より引用)

発症早期の心筋梗塞を迅速に診断するためには,心電図による検査が最も有用であるとされています。心電図検査は,患者に大きな負担をかけることなく,すぐに波形記録を確認できる検査です。しかし,心筋梗塞の症例全てで特徴的な所見(ST波の異常波形)が見られるわけではなく, そのメカニズムについても一定の見解が得られていませんでした。

世界で初めてウシガエルの心臓を用いた擬似病態モデルを作成

今回の研究は,ウシガエルの心臓を活用した心筋梗塞の擬似病態モデルを作り,“心電図異常メカニズム”を再現し,解析を行ったものです。解析の結果,細胞内からナトリウムイオンを汲み出し,カリウムイオンを取り込む細胞膜上の構造“ナトリウムカリウムポンプ(Na/K-ATPase)”の発現が,心筋梗塞における心電図異常メカニズム(ST波の異常波形)に影響することを明らかにしました。

本研究成果は, 急性期の医療・看護の現場で,命の危険が迫る“急性心筋梗塞”をより迅速に診断できるようにする糸口を世界で初めて明らかにしたといえます。

風間教授は今後も, 臨床から発想した研究の成果を再び臨床に還元することを目標とし,日々研究に取り組んでまいります。学生さんでも教職員の方でも,風間教授と一緒に研究をやってみたい人は,学群を問わず気軽にご一報ください。( kazamai(a)myu.ac.jp メールの際は(a)を@に変えてご連絡願います)


研究成果の詳細について

なお本研究成果は,2019年12月付けで英文雑誌Journal of Veterinary Medical Scienceの電子版に論文として掲載されています。

看護学群4年生の高村さん,山田さん,杉﨑さん,鈴木さんも,本論文の著者として名前を連ねており,風間教授は責任著者(Corresponding author)となっています。

また,2018年以降に風間教授が発表してきた,本研究に関連する研究成果についても,別の英文雑誌に掲載されています。(いずれも風間教授がCorresponding author)

Apparent ST elevation in right bundle branch block pseudo-mimicking myocardial infarction

Partial exposure of frog heart to high-potassium solution: an easily reproducible model mimicking ST segment changes


研究者プロフィール

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