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20.10.29

9/12宮城大学で「日本ルーラルナーシング学会学術集会」をオンライン開催

2020年9月12日(土),宮城大学大和キャンパスで,日本ルーラルナーシング学会第15回学術集会がオンライン開催されました。※当初は全国から多くの参加者を迎える予定でしたが,コロナ禍の影響をうけリモート方式により開催しました。

災害や,高齢化・過疎化する地域の保健医療を考える/ルーラルナーシング

東北宮城の地は,東日本大震災後の復興と中山間地域の過疎化といった課題に直面してきました。 “ルーラルナーシング”とは「へき地看護学」とも言います。へき地(過疎地域,豪雪地帯,山村,離島等)における保健医療の確保のため,へき地での看護の実態やその改善に向けた研究を実践し,へき地で活躍する看護職を支援することが本学会の目的です。第15回学術集会は本学看護学群の大塚 眞理子教授が大会長を務めました。

地域医療の現状を共有/「特定看護師」どのような役割を果たすか課題に

学術集会は,「看護から発信するコミュニティづくり~この地の歴史と文化を生きる人々ともに~」をテーマとして①会長講演/②教育講演/③理事会&学術集会ジョイント特別企画の3部構成で実施しました。

①会長講演では,大塚眞理子教授が「コミュニティケアを担う看護師の活動」と題した講演を行いました。②教育講演では,東北医科薬科大学医学部の古川勝敏教授が「東北の地域医療の現状と展望」と題し,東日本大震災後の被災者の縦断的健康調査を基に,継続した地域医療の必要性が強調されました。③理事会とのジョイント企画では「これからのルーラルナーシングを担う人材育成」をテーマにしたシンポジウムを実施,特定行為研修修了看護師(特定看護師)を養成している自治医科大学看護学部の村上礼子教授と,東北医科薬科大学病院で特定看護師を配置して地域活動をしている瀬戸初江看護部長が話題提供を行い,参加者とWEB上で活発なディスカッションを行いました。特に,特定看護師がルーラルでどのような役割を果たしたらよいか,まだまだ養成数も少なく,社会的に認知度が低い特定看護師と,へき地の病院や診療所の看護師,行政の保健師がどのように連携してルーラルナーシングを担っていくのか,本学会の新たな課題が明確になりました。

※「特定看護師」とは、2015年10月に厚生労働省が施行した「特定行為に関わる看護師の研修制度」による特定行為研修を修了した看護師で,医師が作成した手順書にもとづいて特定の医療行為が実施できます。そのため,タイムリーに必要なケアが行えるようになるほか,チーム医療の一員として医師と患者の間に入り,患者や家族ケアの向上も期待されています。

今回の学術集会で発表された,被災地や過疎化する中山間地域の看護実践や看護職の姿は,東北宮城の看護職を養成する宮城大学看護学群の看護教育にも示唆を与えるものであったと言えます。

日本ルーラルナーシング学会とは

日本ルーラルナーシング学会は,へき地(過疎地域,豪雪地帯,山村,離島等)を含む地域の中核病院・保健所等に勤務する看護職やへき地看護学(ルーラルナーシング)に関心を寄せている教育研究者が共に努力し,ルーラルナーシング実践の向上,そのための研究の実施・積み重ねをめざす学会として,2005年3月に設立されました。へき地で活躍する看護職を支援する組織として,そして,へき地での看護の実態を明らかにし,その看護の改善に向けた研究を実践し,日本におけるルーラルナーシングの構築をめざす学会です。

東北宮城の地では,2011年3月の東日本大震災からすでに8年が経過し,様々な震災復興・地域再建の取り組みが行われております。さらに,2019年10月に東日本・北日本を襲った台風19号の被害もまた甚大なものでした。東北の災害に際しては全国の看護職の方々からの支援に感謝を申し上げます。また,今回の東北宮城での学術集会開催は,復興状況についてご報告できる機会とも思っております。

 近年は災害への防災対策が進んでおりますが,思いがけない災害が起こりますと都市部においても保健医療や福祉が途絶えてしまいます。また,東北の各地では,人口の高齢化と人口減少・過疎化が広がっております。ルーラルナーシングは,保健医療や福祉にアクセスしにくい地域あるいは住民への看護学でもあり,看護活動を通した地域の活性化,地域づくりもルーラルナーシングの課題です。

 本学術集会では,保健医療や福祉にアクセスしにくい地域に暮らす人々への看護を通し,看護から発信するコミュニティづくりについて,皆様と対話し議論したいと思います。今回,皆様にご参集いただくことはかないませんでしたが,「看護から発信するコミュニティづくり-この地の歴史と文化と今を生きる人々ともに-」をテーマに,当初から準備した企画や一般演題の抄録集を作成し,一部WEB 開催をすることといたしました。また,理事会と学術集会とのジョイント企画「これからのルーラルナーシングを担う人材育成」をWEB配信いたします。多くの皆様のご参加を心よりお待ちしております。

2019年12月吉日

学術集会長 大塚眞理子(宮城大学)

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