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25.06.11

看護学群卒業生の太齋澪さんが日本看護技術学会第22回学術集会卒業研究交流セッション最優秀賞を受賞/看護学群

看護学群金子健太郎講師は、自律神経の観点から看護技術を科学し、新しい看護介入の開発を目指し研究に取り組んでいます。金子研究室に所属していた看護学群の太齋澪さん(2024年3月卒業)が、日本看護技術学会第22回学術集会卒業研究交流セッション(2024年10月27日:札幌市)にて発表された「スマートウォッチを用いた呼吸トレーニングが循環動態と自律神経系機能に及ぼす影響」を発表し、卒業研究交流セッション最優秀賞を受賞しましたのでお知らせいたします。

「スマートウォッチを用いた呼吸トレーニングが循環動態と自律神経系機能に及ぼす影響」をテーマとした本研究発表内容は、金子健太郎講師による研究指導の下、一貫して本学の看護学群内で行われた研究成果です。なお、卒業研究交流セッション最優秀賞の表彰は、2025年10月11~12日に京都で開催される第23回学術集会で行われます。

過度なストレスが与える心身への影響とその対処法とは?

過度なストレスが長時間続くと、自律神経系や内分泌系にさまざまな不調を引き起こします。交感神経が優位な状態では、呼吸は浅く速くなり、十分な換気ができなくなることがあります。また、呼吸と循環動態は密接に関わっており、例えば、ストレス下では呼吸だけではなく心拍においても「揺らぎ(変動)」が小さくなります。その結果、自律神経系の予備能力や調整能力が失われがちになります。

このような状態に対しては、「呼吸セルフコントロール」と呼ばれる一定のリズムで呼吸を整える方法が効果的であるとされ、質の良い睡眠やリラックスする時間と同等の効果があることが明らかになっています。意識的な呼吸法を取り入れることで自律神経の働きが調整され、ストレスに対する有効な対処法となると考えられています。

スマートウォッチで効果的なストレスマネジメントを可能に

近年、健康管理のツールとしてスマートウォッチが広く普及してきており、中でも一部のスマートウォッチには呼吸トレーニングモードが内蔵され、ストレスマネジメントに活用できる特徴を有しています。今回の研究では、若年健常男性を対象に、スマートウォッチを用いた呼吸トレーニングが循環動態と自律神経系機能にどのような影響をもたらすか検討することを目的としました。

その結果、対象者全例において呼吸トレーニング実施前後では心拍数が減少することをスマートウォッチの記録から確認できました。また、介入3週間後に安静時心拍数および呼吸数の減少傾向と、心拍変動における副交感神経成分(HF)の増加、交感神経と副交感神経のバランス(LF/HF)といった自律神経系機能に減少傾向がみられたことから、スマートウォッチを用いた呼吸トレーニングの継続的な実施は、安静時の副交感神経活動が高まる傾向が示されました。これらのことから、日常生活においては「緊張している時に深呼吸をして対応する」だけではなく、日頃から深くゆっくりとした呼吸を意識することで副交感神経活動の力を高め、過緊張状態となることを予防できます。また、健康面からいえば血圧を安定化させる効果が期待できると考えられます。くわえて、本研究のようなスマートウォッチのガイドに従った呼吸トレーニングの実施は簡便かつ測定値が可視化できるという点からも、セルフモニタリングに有効であることが示されました。

図1.心電図から観察できる心拍のゆらぎ「心拍変動」

図2.【イメージ】心拍変動(左)と、それを周波数解析した結果(右)(ヒトの場合)

今回受賞した太齋さんは「半年間という短い期間での研究でしたが、大学での4年間看護学を学ぶ中で生じた興味や疑問をゼミ生と共有し合い、大学生活の集大成として卒業研究に取り組み、金子先生やゼミ生との研究の成果を発表することができました。チームで毎日のように測定・記録を重ね、看護師として行っていた一つひとつのケアの重要性を実感することができ、看護がもたらす影響について改めて考えるきっかけとなりました。」とコメントしています。

指導教員の金子健太郎講師は、「今回受賞いただいた研究課題は、当時のゼミ生と試行錯誤しながら、限りある卒業研究の期間で多くの時間と濃密なエネルギーを割いて取り組んだ研究でした。卒業研究に誠実に取り組んだ姿勢が実を結ぶ形となり、指導教員としても大変嬉しく思っています。あわせて、この研究に協力してくださった研究対象者にも感謝しています。後進の学生が続いてくれるように、これからも楽しみを見出しながら研究活動を行ってまいります。」とコメントしています。

金子講師は、オープンゼミ「カネケンケン」を主宰し、学群や学年をこえた学生同士の交流を図り、自由に集まり、楽しく学び合える場づくりを続けています。心電図をはじめとする身体のしくみや看護学における実験研究に関するテーマも扱いながら、「ちょっと不思議」「もっと知りたい」に寄り添う学びを探究しています。カネケンケンに興味のある方や金子講師と一緒に研究がしてみたいという方は、是非ご一報ください。(kanekok (a)myu.ac.jp メールの際は(a)を@に変えてご連絡願います)​​​​​

日本看護技術学会について

一般社団法人日本看護技術学会(Japanese Society of Nursing Art and Science)は、看護技術に関する研究・教育・実践の向上を目的とした学術団体です。看護の基本となる「看護技術」を科学的に検証・発展させ、より質の高い看護を実現するために活動しています。「日本看護技術学会学術集会 卒業研究交流セッション」は、看護系大学・短期大学・専門学校などで取り組んだ卒業研究の成果を、学会の場で発表・交流できる特別なセッションです。主に、看護学生や初期キャリアの若手研究者を対象とした発表の機会として位置づけられており、看護技術の探究心を育てることや、学生の研究意欲や論理的思考力を高めることにつながります。

指導教員プロフィール

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