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20.11.01

郷古雅春教授と千葉克己准教授による農業農村分野の災害対応ガイドブック(2020年記事/2024年再掲)

事業構想学群の郷古教授千葉准教授が参画する「現場知」研究グループで作成した「現場知に学ぶ 農業・農村震災対応ガイドブック2018」が、今後起こりうる大規模災害の早期・適正な対応に大きく貢献するものとして評価され、このたび農業農村工学会優秀技術賞を受賞しました。(2020年11月公開、2024年再掲)


当ガイドブックは、宮城県ウェブサイトでPDFをご覧いただけます
農業・農村震災対応ガイドブック2018(宮城県農村振興課)
 

記録された「現場知」で、災害への備えを/災害対応ガイドブック

災害復旧の現場担当者は、次なる事態の予想が難しい場合、どうしても受動的な対応にならざるを得ないことが多いと言われます。東日本大震災において多くの現場担当者は未経験の事態に直面し、対応のための予測と備えの大切さを痛感しました。大規模災害で生じる事項は固有性が高いため、定式化されたマニュアル対応には限界があり、現場での創造的な取り組みが求められます。

このたび受賞したガイドブックは、東日本大震災被災県の農業農村整備部局の現場担当者が、災害復旧現場において発災後の事態に当面するなかで得た「現場知」の記録です。郷古教授と千葉准教授は、災害復旧現場で立ち振る舞った担当者への聞き取りによる現場踏査を通じて、法律や事業制度の制約のなかで次々と生じる困難に対し、臨機に現場的解決を与えて社会的要請に応えていく担当者の姿が見えてきたと言います。また、目の前の課題に対して、実用的な対策や工夫、気づき、教訓、知恵を生み出し、困難な状況を乗り越えていく姿も確認されました。こうした過程で生み出されたものを、「現場知」と名づけ、時系列的な課題の発生と現場における解決策やさらなる課題として記録しました。

調査を通して収集・整理した300以上の「現場知」は、短時間で要点把握ができるよう一つずつ個票としてA4判1枚に収め、発災後の復旧対応を時系列に沿って段階的に区分・体系化していきました。今後起こりうる災害に備え、災害が生じた際の早期な復旧対策に資するものとなることを目的としてまとめられています。このガイドブックを時系列的・追体験的に参照することによって、今後起こりうる災害の備えとして活用できるとともに、災害が生じた際の早期な復旧対策にも役立つと考えられています。

郷古教授と千葉准教授は、「このガイドブックは宮城県のホームページなどから誰でも入手することができます。東日本大震災からもうすぐ10年になりますが、災害復旧現場ではまだ多くの課題が残されています。災害への備えとして、多くの人々に手に取ってもらえれば」とメッセージを寄せました。

農業農村工学会-優秀技術賞とは

農業農村工学会は、「農業農村工学の進歩及び農業農村工学に関わる研究者・技術者の資質向上を図り、学術・技術の振興と社会の発展に寄与する」ことを目的とし、様々な活動を展開している、日本学術会議協力学術研究団体です。優秀技術賞は、農業農村工学に関する計画、設計、施工、管理等の単独の技術業績に授与されるものです。

研究情報

・研究名:「現場地に学ぶ 農業・農村震災対応ガイドブック2018」
・科研費番号:基盤研究(B)現場知の体系化による農業農村分野における巨大地震災害対応マニュアルの構築

研究者プロフィール

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