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22.01.28

食産業学群 赤澤助教らが“食感の制御に役立つオリーブポリフェノール”を報告/アメリカ化学会発行『Journal of Agricultural and Food Chemistry』のFront Coverに選出

食産業学群 赤澤隆志 研究室(食品タンパク質機能学研究室)では、加工食品の食感の制御に役立つ新素材の開発に取り組んでいます。このたび、香川大学との共同研究により、ソーセージやかまぼこといったタンパク質ゲル状食品の食感の改良に有用な天然化合物をオリーブの葉から見出し、本研究に関する論文がアメリカ化学会の学術誌「Journal of Agricultural and Food Chemistry」のFront Coverに選出されました。

Akazawa, Takashi, et al. "Impact of an Olive Leaf Polyphenol 3, 4-DHPEA-EDA on Physical Properties of Food Protein Gels." Journal of Agricultural and Food Chemistry 69.47 (2021): 14250-14258. ※本誌はAgricultural and Biological Sciences及びChemistryのカテゴリーにおいて, Q1(4分位したときの上位25%以内)ジャーナルです。

“食感”は、食品のおいしさに欠かせない要素であり、タンパク質でできた網目構造の形で決まる

「ソーセージってどんな食品?」と、グルメレポーターになったつもりで説明してみてください。多くの人が、「プリプリ」や「ジューシー」など、まず“食感”について表現したのではないでしょうか。食品のおいしさに関わる要素のなかでも、食感の印象は重要であると言えます。ソーセージの様な歯で噛んで食べる食品のおいしさには、味や匂いよりも食感が大きく影響するといった報告もあります。「プリプリ」など、食品の食感を表現する日本語の数は英語の5倍以上あり、日本人が食事の中でいかに“食感”を楽しんでいるのかが窺えます。

みなさんも、プリプリのソーセージや弾力のあるかまぼこが好きだと思います。ソーセージやかまぼこ、卵焼き、グミ、マシュマロなど、タンパク質が網目状に繋がった食品を「タンパク質ゲル状食品」と呼びます。これらの食感の良し悪しは、タンパク質同士がどのようにくっつき合い、結果としてどのような網目構造ができるのかで決まります。食感と網目構造の関係性がよくわかる食品に、茹でたまごとピータンがあります。どちらも卵のタンパク質をゲル化させた食品ですが、それらの食感が大きく違うのは網目構造の形が違うからです。おいしい食品の開発にはイメージした食感に近づけることが重要ですが、それにはタンパク質の網目構造の制御が課題となっています。

オリーブの葉に含まれるポリフェノールがタンパク質の網目構造を改変する

今回の報告は、オリーブの葉に含まれるモクセイ科特有のポリフェノール3,4-DHPEA-EDAに着目したものです。ポリフェノールはこれまで、活性酸素の除去や、脂肪の吸収抑制といった生体調節機能が注目されてきました。3,4-DHPEA-EDAも例外ではなく、これまでに抗酸化作用や抗炎症作用などが報告されていますが、今回の報告は、これらの生体調節機能に加えて、「タンパク質ゲル状食品の食感の改良機能をもつ」という新たな知見を示すものです。

赤澤助教は、これまで、独自開発した抽出法でチャノキやミカン、オリーブなど様々な植物からポリフェノールを抽出し、タンパク質ゲル状食品の食感に及ぼす影響を調べてきました。各種ポリフェノール抽出物を添加した卵白ゲルの破断強度や粘弾性、保水性といった食感に関わる指標を繰り返し分析してきました。今回、オリーブ葉には、他の植物にはない、卵白ゲルの硬さと弾力を劇的に高めるポリフェノールが存在することを見出し、質量分析等の構造解析によって3,4-DHPEA-EDAであると特定しました。

3,4-DHPEA-EDAとタンパク質の相互作用を分子レベルで調べたところ、3,4-DHPEA-EDAはタンパク質とタンパク質の間を橋渡しするようにタンパク質分子間を架橋することが明らかとなりました。言わばタンパク質の接着剤として働くということです。このタンパク質同士を接着する効果によって、タンパク質の網目構造を強靭なものへと改変することで食感を改良することができます。

ポリフェノール3,4-DHPEA-EDAはオリーブオイルにも含まれており、私たちもよく口にする成分です。食品加工の現場では、食感の改良を目的にポリリン酸Na、加工デンプン、酵素製剤などの食品添加物が使用されていますが、3,4-DHPEA-EDAはこれらに置き換わる新素材としての可能性を秘めています。

赤澤助教は「今後も、ソーセージや豆腐、プリンなど、様々なゲル状食品の嗜好性の向上に役立つような研究に取り組んでいきますので、本研究室の取り組みをお楽しみに」とコメントを寄せました。

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