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20.01.01
食産業学研究科の佐々木瞳さんが日本食品科学工学会東北支部令和元年大会で若手奨励賞を受賞
食産業学研究科博士前期課程2年の佐々木瞳さん(金内研究室所属)による「発芽大豆中のニコチアナミン合成酵素に関する研究」が、このたび日本食品科学工学会東北支部令和元年大会で若手奨励賞を受賞しました。
食産業学研究科金内研究室では、乳酸菌や酵母等の微生物や、発酵食品の機能性に関する研究を行っており、醸造過程を体験する現場実習や発酵食品の商品開発も数多く手がけています。
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佐々木さんは、これらの研究活動を通して“大豆中の酵素”に深く興味を持ちました。酵素は、生体で起こる化学反応を促進させるたんぱく質の一種であり、発酵に深く関わる他、あらゆる生体活動に関与しています。食事の際の血圧上昇に関与する酵素があることも知られています。
大豆に含まれ血圧上昇を抑える合成中間体「ニコチアナミン」に着目
本研究では、体内で血圧上昇に関わる酵素(アンジオテンシン変換酵素)の阻害物質である「ニコチアナミン」に着目しました。「ニコチアナミン」は、S-アデノシルメチオニン合成酵素(SAMS)とニコチアナミン合成酵素(NAS)の2つの酵素の働きにより、アミノ酸であるL-メチオニンから生合成される合成中間体で「味噌を食べても血圧上昇しない」根拠として報告されています。健康面で注目されているこの「ニコチアナミン」ですが、植物中に微量しか含まれていないため知見が少ないのが現状です。
そのため、ビール製造時に使う麦芽製造技術を用いて「ニコチアナミン」を酵素的に安定生産し、酵素学的特性を明らかにすることが本研究の目的です。研究の結果、塩ストレス条件下で大豆種子を発芽させることにより酵素活性が上昇することがわかり、これによりニコチアナミンを生合成しやすい分子量や、至適温度などの酵素学的特性を明らかにしました。また、酵素活性の測定方法として、SAMS活性測定におけるマイクロプレートを用いた比色法による活性測定法を確立し、実験方法の簡便化、測定時間の短縮に成功しています。
微量しか含まれていない「ニコチアナミン」安定生産の可能性
「ニコチアナミン」は現状、10mgで10万円と非常に高価です。本研究の成果により、安定的に、安価で高生産できるようになるほか、ニコチアナミン高含有の大豆商品の開発-血圧上昇を抑えることのできる味噌や醤油といった大豆発酵食品の開発が可能となります。このような商品が、日常の食卓で気軽に口にできる日がくるかもしれません。
金内研究室では今後も、ニコチアナミン合成酵素のまだわかっていない酵素学的な性質を明らかにするとともに、「食」で健康に、幸せになる社会を作るお手伝いをしていきます。
日本食品科学工学会東北支部若手奨励賞について
日本食品科学工学会は、農産物の加工に関する研究をスタートとし、現在では食品分野における研究を展開し、その成果を広く人類の健康と福祉に産業を通じて貢献することを大きな特徴としています。今年で創立63年を迎え、わが国最大の食品に関する研究教育と産業のための学会に成長しています。若手奨励賞は、35歳以下の会員による一般講演のうち、優秀な発表に日本食品科学工学会授与されるもので、今年度は約30点の発表のうち、4点が受賞しました。
研究室紹介
金内研究室では、発酵・醸造学を専門分野として、乳酸菌や酵母等の微生物や、発酵食品の機能性に関する研究を行っています。
・金内 誠:食産業学研究科教授、フードマネジメント学類長