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23.09.08
看護学研究科修了生 浦山美輪さんが令和4年度日本医療マネジメント学会賞を受賞/看護学研究科
看護学研究科を2020年3月に修了し、現在、東北大学病院で看護部長として活躍している浦山美輪さんが、修士論文(主研究指導教員高橋教授)を再編し投稿した論文「大規模病院の退院支援看護師による外来患者への在宅療養支援の現状と支援の実施に関連する要因」によって日本医療マネジメント学会賞を受賞しましたのでお知らせいたします。
入院患者のみでなく、昨今の状況に応じて、外来患者の在宅療養支援も
病院と地域をつなぐ「退院調整看護師」の業務範囲が急速に拡大しています
入院患者が退院後の生活に困らないよう、退院調整に関わる「退院調整看護師」が、入院患者の在宅療養支援を行い、病院と地域をつなぐ存在として活躍しています。一方で、後期高齢となった通院患者数の増加や、外来化学療法・内視鏡治療など通院で行える治療方法が増えてきたことから、入院せず医療管理をしながら在宅療養を行う外来患者が増加しつつあります。特に大規模病院では、専門的な医療管理が必要となるため、これら外来患者に対し、退院調整看護師が在宅療養支援を実施しておりその業務範囲は急速に拡大していますが、その対応状況や体制については模索しながら活動しているケースが多くみられます。
「退院調整看護師」の活動の現状を調査
支援が必要となる対象・適切な支援の時期・その方法を明らかにする
浦山さんは、自身も大規模病院に勤務する中で、どういったスタッフがどのように在宅療養支援が必要な患者・家族のニーズをキャッチして退院調整看護師に繋いでいるか、退院調整看護師がどんな状態の患者に何を支援しているのか、その現状と支援が必要と判断された要因を明らかにすることで、外来における今後の在宅療養支援体制をどのように整備すればよいのか示唆されると考え、調査を行いました。
調査の結果、外来患者が在宅療養支援を受ける要因としては「がん終末期」等、疾患の進行や加齢による変化に伴うものが関わっていました。また、退院調整看護師への支援依頼理由としては、「通院困難」や「ADL(日常生活動作)低下」等が多くみられ、病院での対応が難しくなる時期に支援依頼を受けたケースが多くみられました。特に調査の自由記載では「突然の依頼で十分に把握するのが難しい」「依頼があった時には状態が悪化している」等、現場の退院調整看護師の苦労がひしひしと伝わるものがありました。
これらのことから、適切な時期をとらえて在宅療養支援を実施するためには、患者の経過や状況を把握している外来・入院歴のある病棟の間で、支援対象となる患者の情報を共有する体制が必要であることが分かりました。この研究は、高度医療を提供する大規模病院における外来患者の在宅療養支援について、これまで明らかにされていなかった現状を、退院支援看護師を対象とした調査によって把握、在宅療養支援体制における課題を示唆した論文として評価を受けました。
退院調整看護師が行っている外来患者の在宅療養支援が評価されるために
浦山さんは「最近は、外来の看護師も、積極的に患者のインフォームド・コンセント(IC)に同席し、意思決定を支援する取り組みが増えてきました。外来患者・家族のニーズをキャッチし、タイムリーに在宅療養支援を行う機運が高まってきています。組織全体で、より円滑に在宅療養支援ができるよう、体制を整えたいと考えています。今回の調査結果を基に、外来患者の在宅療養支援の体制整備が図られ、現場で対応している退院調整看護師の活動が診療報酬として評価されることを願っています。またこの度、思いがけなく学会賞をいただくことができ、大変光栄に存じます。大学院を卒業後も、論文投稿のご指導をいただきました高橋和子先生に厚く御礼申し上げます。論文の査読を受けたことにより修士論文がブラッシュアップされたことは、自分自身の貴重な経験となりました。退院調整看護師として現場で感じていたことをまとめて発信することができ、とてもうれしく思っています。」とコメントしています。
研究情報
- 受賞名:令和4年度日本医療マネジメント学会 学会賞
- 論文名:大規模病院の退院調整看護師による外来患者への在宅療養支援の現状と支援の実施に関連する要因、日本医療マネジメント学会雑誌、3巻2号pp.74-80、2022
- 受賞者:浦山美輪
- 共著者:高橋和子
日本医療マネジメント学会賞について
日本医療マネジメント学会は、医療の質の向上を求めてクリティカルパスをはじめ医療福祉の連携、安全管理等々、医療福祉の現場における各種の課題の研究、提案を行っています。学会賞は、医療マネジメントの進歩に貢献する最も優秀な論文に授与されます。
指導教員プロフィール
・高橋 和子:看護学群 教授(看護学群長兼看護学研究科長)
地域包括ケアシステムの構築において、地域の住民同士の関わり合いや支え合いを促進する方策を探究しています。また、病院や医療・福祉等のサービス事業所における地域療養者のより良い支援の在り方や、地域で働く看護人材の育成にも取り組んでいます。さらに、自然災害の発生を避けることができない日本において、要介護状態にある在宅療養者の被害を最小限にとどめるための備えを図る方策の提案にも取り組んでいます。