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24.03.06

2/20令和6年能登半島地震災害支援緊急報告会を実施しました/看護学群

令和6年1月1日に発生した能登半島地震の被災地である石川県に,勝沼志保里(看護学群講師)が1月24日~1月27日の4日間,宮城県看護協会災害支援ナースとして派遣され統括リーダーとして活動しました。勝沼講師から避難所の状況や活動内容について,宮城大学の学生・教職員向けに報告する会を2月20日に実施しましたのでお知らせいたします。

東日本大震災の発生から13年,教訓は活かされているのか
災害支援における課題は何か,災害看護や災害支援について考える

報告会では宮城県看護協会の災害支援ナースについて,派遣までの流れ・避難所(いしかわ総合スポーツセンター)での活動が報告されました。“災害支援ナース”とは,災害看護の研修を受け,災害発生時に被災した医療機関や社会福祉施設,避難所で支援活動を担う看護師です。都道府県ごとに登録されており,都府県看護協会会員,看護師・保健師・助産師・准看護師の実務経験年数が5年以上,災害支援ナースの養成研修の受講が必要です。勝沼講師も宮城県に登録された災害支援ナースであり,地震発生後はウェブサイト等での情報収集を行いながら,派遣要請に備えて活動に必要なもの(身分証,PC,バッテリー,体温計・血圧計,等),身を守るもの(アルミシート,防犯ブザー,常備薬等),生活用品(簡易食・水,衣類,簡易トイレ,等)の調達と,こころとからだの準備を整えました。

地震発生から災害支援ナース派遣までの流れ
避難所の状況に合わせた活動展開と,勝沼統括リーダーの活動について報告

1月9日,被災エリアが全国から支援が必要な広域支援対応(レベル3)になったことを受け,災害支援ナースへの派遣要請が行われ,職場の勤務調整の上16日に派遣が決まりました。勝沼講師は23日に仙台を出発予定でしたが,新幹線の架線事故や寒波による交通障害があったため1日遅れの出発となりました。翌朝に新幹線が再開し,11時30分に避難所(いしかわ総合スポーツセンター)に到着し活動を開始しました。

避難所であるいしかわ総合スポーツセンター,メインアリーナでは,1.5次避難所として230~240名が避難生活をしており,サブアリ-ナでは,施設避難一次待機所として20~120名が一時避難の上,適切な施設への移動が調整されていました。避難所は,水や電気等のライフラインがあり個室テントや段ボールベット等の生活環境も比較的に整えられていましたが,滞在期間が長くなるとともに,発熱,下痢・嘔吐などの感染症が疑われる症状や,持病が悪化する等,診療所を受診する方も増えていました。このため,災害支援ナースは日勤と夜勤を通して衛生環境の整備,健康観察が必要な方への体温・脈拍・血圧測定などを行うとともに,栄養不良や段ボールベッド等により生じた褥瘡に対する処置や予防ケア,認知機能低下があり徘徊や夜間せん妄が生じている高齢者の方の見守り等を行いました。

勝沼講師はこれら災害支援ナースの活動における統括リーダーとして活動しました。災害支援では,避難所開設時の初動体制の構築や支援者が次々代わる中でよりよい支援を行っていくため,多職種連携が極めて重要となります。統括リーダーの役割には,宮城県から派遣の看護師4名と6都県から集まった24名の業務分担や,避難者の生活支援にかかわる多職種との業務調整が含まれています。医師,薬剤師,保健師,DMAT※,DPAT※,DWAT※,JRAT※,JDA-DAT※等の支援チームとの連携・協力に加えて,日本看護協会や宮城県看護協会への活動報告や情報共有も積極的に行いました。東日本の際と違う点は,コミュニケーションにLINEやChatwork(チャットワーク)を活用できた点です。

  • DMAT(Disaster Medical Assistance Team:災害派遣医療チーム):発災直後の急性期医療を行うチーム
  • ※DPAT(Disaster Psychiatric Assistance Team:災害派遣精神医療チーム):被災地域の精神医療の提供と保健活動を行うチーム
  • DWAT(Disaster Welfare Assistance Team:災害派遣福祉チーム):災害時要配慮者に対する福祉支援を行うチーム
  • JDA-DAT(The Japan Dietetic Association-Disaster Assistance Team:日本栄養士会災害支援チーム):栄養・食生活の支援を行うチーム
  • JRAT(Japan Disaster Rehabilitation Assistance Team:日本災害リハビリテーション支援協会):生活不活発とそれに伴う災害関連疾患の予防と対策を行うリハビリテーションチーム​​​​​​

報告会の後半では,参加者と勝沼講師によるディスカッションを行いました。参加者にとって,身近に災害支援を考える機会となるとともに,課題やこれから大切となる考え方が示す話題が展開されました。寄せられた質問と,その回答をいくつかご紹介いたします。

  • 質問「自己完結型の災害支援は原則ですが,4月からの改正医療法等に基づく派遣では,国からのサポートがあるのでしょうか。また,東日本大震災から避難所対策の進展はありましたか?」
  • 勝沼「派遣要請では国や都道府県と看護協会の連携が図られますが,実際の支援活動では国のサポートは定まっていなく,自己完結型での準備の必要性があると考えます。また,避難所の個別テントや衛生環境の整備・設備は豊富で,工夫されたものが多く設置されるようになったことは大きな進展であると感じました」
  • 質問「南海トラフを危惧し,災害看護に関心を持っていますが,実際の話を聞き,課題が多いことがわかりました。災害時に活動する看護師として心掛けていることは何か教えてください」
  • 勝沼「災害時には混乱し,様々な状況が偶発的に生じますが,避難者の生活を守るために支援に携わる人と活動体制を組織化する視野を持つことが大切であると考えます。また,非常時であっても人を尊重する姿勢や態度を忘れずに,生活を援助することが重要だと思います」

開催概要

イベント名 令和6年能登半島地震災害支援緊急報告会
開催日時 2024年2月20日(水)14:30~15:30
場所 宮城大学大和キャンパス本部棟302講義室

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