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21.09.25
9/25風間逸郎教授・編集の『看護技術』10月増刊号「病態生理からひもとく水・電解質異常」が発刊
看護学群に所属する風間 逸郎教授は、病態生理学・内科学・一般生理学を専門分野としております。このたび、風間教授が編集を担当した『看護技術』10月増刊号「病態生理からひもとく水・電解質異常」がメヂカルフレンド社より発刊されました。
『看護技術』10月増刊号「病態生理からひもとく水・電解質異常」(販売リンク)
本書は、およそ卒後3~5年目くらいの現役の看護師を対象として、臨床の現場でよく遭遇する疾患(脱水、高カリウム血症、低ナトリウム血症、高カルシウム血症など)のメカニズムや治療、看護のポイントについて分かり易く解説した、いわば“教科書”です。臨床の現場や研究分野の最前線で、まさに今活躍中の全国の専門家たちが、各項の執筆を担当しています。
風間教授は本書全体の編集のほか、巻頭言・総論(“病態生理からひもとく水・電解質異常”)の執筆を担当しています。また、本学看護学群の勝沼志保里講師、庄子美智子助教も、風間教授と共著で、 “心電図の基礎(波形の成り立ち)”、 “高カリウム血症に対するイオンチャネルをターゲットとした看護介入”の項を、それぞれ分担執筆しています。 |
本書のテーマ「病態生理でひもとく水・電解質異常」について
“水・電解質異常”といった場合、いったいどこの臓器の病気なのか?なかなかイメージがつきにくい人は多いと思います。しかし、日頃の看護の現場においても、例えば「この患者さんは脱水があるから点滴をしよう」とか、「心不全があるから塩分(ナトリウム)制限が必要だ」とか、「腎臓が悪いからカリウムに気をつけよう」、「手術の後だから輸液を多くしよう」などと、実はすでに数多くの“水・電解質異常”に遭遇し、知らず知らずのうちに対処もしているのです。病気の名前や診断が分からなかったとしても、目の前にいる患者さんが“どうして具合が悪いのか”、“患者さんの体の中でいったい何が起こっているのか”、が分かりさえすれば、その患者さんを何とかすることができます。
“病態生理”とは、病気の“成り立ち”、つまり病気になるメカニズムのことです。病態生理をよく理解することは、医師だけでなく看護師にとっても大切なことです。なぜなら、目の前の患者さんの体の中で今起きていることが分かった後、医師であれば、そこから病気の診断や治療を導き出し、看護師であれば、今行うべき看護(ケア)を導き出すことができるからです。
本書の内容
第1章「解剖生理 総ざらい」
“水・電解質異常症”の主戦場となる“腎臓”に焦点を当て、その正常の形態機能を勉強します。腎臓の最小単位である“ネフロン”を構成する糸球体や尿細管の解剖やはたらきのほか、体液量とナトリウム、水やカリウムの調節のしくみについても解説しています。
第2章「水・電解質異常の病態生理」
本来あるべき正常の形態機能が破綻してしまった場合、どのような異常が起きるのか、そのメカニズム、つまり“病態生理”についても解説しています。本章では、主な電解質異常でみられる心電図所見についても勉強します。心電図は、看護師がいつでもどこでも迅速に行うことができる最も基本的な検査ツールです。心電図の異常所見とそのメカニズムを知ることは、水・電解質異常の病態生理を理解するための大きな“武器”になります。
第3章「よくある水・電解質異常症と看護のポイント」
水・電解質異常のうち、看護師が臨床の現場でよく遭遇する“脱水”、“高・低ナトリウム血症”、“高・低カリウム血症”、“高・低カルシウム血症”に的を絞り、「よくある水・電解質異常症と看護のポイント」について解説しています。それぞれの異常について、①どのような状況で起きる(遭遇する)ことが多いのか、②身体所見(フィジカルアセスメント)との結びつき、③心電図所見(または特徴的な血液・尿検査所見)との結びつき、④一般的な治療法について、そして最後には、⑤それらを踏まえ、どのような看護をすべきか、についても解説しています。
第4章「疾患における水・電解質異常」
“疾患”という切り口から、内科系・外科系を問わず、各専門分野の疾患でみられる水・電解質異常について解説しています。日頃の看護の現場においても、知らず知らずのうちに数多くの水・電解質異常に遭遇していることに、改めて気づくことができます。
第5章「現場で使える水・電解質異常のトピック」
最近、臨床の現場で話題になっている新しいことや、これまで知っているようで実はあまり知らなかったことについて解説しています。
本増刊号を通して、病態生理の知識とは、“学び”、“覚える”ためだけのものではなく、現場で“使いこなす”ためのものであることを、読者の皆さんに体得してもらいます。
コロナ禍の今だから大切にしたい“人に根拠を持って伝える”こと
現在のコロナ禍では、世界中の人々が等しく、いわゆる“がまん”を強いられています。大学でも若い学生さんたちに、「食事は黙って食べないといけない」、「教室はしっかりと換気しないといけない」、「3密は避けないといけない」などと注意せざるを得ません。しかし、“なぜ~してはいけないのか?”まで説明せずに、“これはダメ、あれはダメ”だけでは、説得力がないばかりか、ときには反発を招いてしまうかもしれません。新型コロナの感染対策の場合ですと、例えば「感染したら若い人でも重症化する危険があるから~」とか、「後遺症にかかったら大変だから~」、「変異ウイルスは感染力が強くなっているから~」などと、人を動かすためには、根拠のある説明が必要になります。これは、病気の患者さんに対しても同じことです。病態生理を理解していれば、しっかりとした根拠を持った説明ができ、患者さんに納得してもらうことができるのです。
増刊号の詳細について
「看護技術」(メヂカルフレンド社)10月増刊号は2021年9月25日に発刊されました。
なお、風間教授が最近発表した医学・看護学に関連する主な研究成果については、以下の和文・英文雑誌に掲載されています。(いずれも風間教授が責任著者)
宮城県で発生した新型コロナウイルス感染症患者の特徴 ─第 1 波 88 名の集計から見えた問題点と今後の課題─(本学看護学群学生が筆頭著者)
デュシェンヌ型筋ジストロフィー女性保因者が発症するメカニズムと看護での実践(本学看護学群学生が筆頭著者)
Catechin synergistically potentiates mast cell-stabilizing property of caffeine(本学看護学群学生が筆頭著者)
心電図検査における人為的ミスの発生と予防―ウシガエル心電図を用いた検討―(本学看護学群学生が筆頭著者)
麻疹に対するビタミンA補充療法の意義と看護現場での実践(本学看護学群学生が共著者)
Reciprocal ST segment changes reproduced in burn-induced subepicardial injury model in bullfrog heart(本学看護学群学生が共著者)
Stabilizing mast cells by commonly used drugs: a novel therapeutic target to relieve post-COVID syndrome?
Targeting lymphocyte Kv1.3-channels to suppress cytokine storm in severe COVID-19: Can it be a novel therapeutic strategy?
α 1-Adrenergic Receptor Blockade by Prazosin Synergistically Stabilizes Rat Peritoneal Mast Cells
Acute Bronchitis Caused by Bordetella Pertussis Possibly Co-Infected with Mycoplasma Pneumoniae
研究者プロフィール
・風間 逸郎(かざま いつろう):看護学群教授
病態生理学・内科学・一般生理学を専門分野としております。また、内科の医師として現在も患者さんの診療に携わる中での研究は、常に臨床からの発想に端を発しており、研究の成果を再び臨床に還元することを目標としてきました。そして、遺伝子レベルでの解析から、細胞、生体レベルでの解析まで行うことにより、ミクロの研究とマクロの研究とを結びつけることを常にこころがけています。
・勝沼 志保里(かつぬま しほり):看護学群講師
基礎看護学、災害看護学を専門分野として、災害後長期に避難生活を送る循環器疾患をもつ人の体験や看護ケアの開発に向けた研究に取り組んでいます。近年、災害は大規模化・多様化しており、私たちの生活や健康に深刻な影響を及ぼしています。災害後は生命に直接影響を及ぼすだけでなく、生活環境が変化することにより、健康管理が難しくなり、持病の悪化や健康な人でも体調を崩しやすくなります。
・庄子 美智子(しょうじ みちこ):看護学群助教
修士課程では軽度要介護高齢者の生活機能維持・改善のため、訪問看護師の看護支援に関する研究に取り組みました。臨床では地域包括ケア病棟などにおける退院調整に必要な看護支援に携わり、病院と地域とのシームレスな関わりの重要性について関心を持っています。また、血液透析患者の意思決定支援の過程についての研究に取り組んでいます。
<参考>
看護学群・風間逸郎教授が腎臓の線維化における新規病態メカニズムを発見
看護学群・風間逸郎教授が研究指導する学生達が「心筋梗塞でおこる心電図異常のメカニズム」を証明しました
看護学群・風間逸郎教授がアナフィラキシーに対する新規治療法を発見
看護学群・風間逸郎教授が新型コロナウイルス感染症に対する新規治療法の可能性を発見
新型コロナウイルス感染症の“後遺症”に対する治療法を発見/看護学群・風間逸郎教授
麻疹(ましん)に対する新規治療法の可能性と臨床現場での有用性/看護学群・風間逸郎教授が卒業研究の学生と報告
心電図検査における人為的ミスの発生と予防/看護学群・ 風間逸郎教授が卒業研究の学生と報告
風間研究室の学生が「カフェインやカテキンによる抗アレルギー作用」のメカニズムを証明
風間逸郎教授と看護学群4年生が、女性が筋ジストロフィー(デュシェンヌ型)を発症するメカニズムを発見
宮城県における新型コロナウイルス感染症患者の特徴を明らかに/看護学群・風間逸郎教授が看護学群4年生と報告
マグネシウム過剰投与が引き起こす「高マグネシウム血症」心電図変化とそのメカニズムを疑似病態モデルで証明
風間逸郎教授と庄子美智子助教が、病態生理にもとづき、高カリウム血症に対する看護的介入方法を発見