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20.05.27
看護学群・風間逸郎教授がアナフィラキシーに対する新規治療法を発見
看護学群に所属する風間逸郎教授は、病態生理学・内科学・一般生理学を専門分野としております。また、内科の医師として現在も患者さんの診療に携わる中で、アレルギー疾患の病態メカニズムにも関心を持ち、主要な研究のひとつとして「アレルギー疾患や臓器の線維化における肥満細胞の役割」をテーマとした研究も行ってきました。
このたび、東北大学病院麻酔科学分野との共同研究(風間教授が主導し、東北大学の博士課程大学院生を研究指導)により「アナフィラキシーに対する新規治療法」の可能性を示唆する大変重要な知見を、世界で初めて明らかにしました。
なお、本研究成果については、5月付けで, 英文雑誌(Biomed Research International、風間教授が責任著者=Corresponding author)に掲載されました。
命の危機が迫る重症型のアレルギー「アナフィラキシー」とは
気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎・結膜炎、食物アレルギーなどはアレルギー疾患と呼ばれます。アナフィラキシーとは、これらのアレルギー疾患を引き起こす肥満細胞(=主に粘膜組織に存在する骨髄由来の細胞で、炎症や免疫反応などの生体防御機構に重要な役割を持つ)が過剰に活性化することで放出するヒスタミンによって、全身に強いアレルギー反応が起こる状態のことです。
食べ物(甲殻類・そばなど)や薬(抗生物質や痛み止めなど)のほか、二度目にハチに刺されることなどが引き金となり、全身性の蕁麻疹や呼吸困難、往々にしてショック状態に陥る非常に危険な病態です【図1】。アナフィラキシーに対する治療では、エピペン(アドレナリン)を、すぐに筋肉注射することが大原則ですが、人によってはアドレナリンを投与できないこともあります。
アナフィラキシーを起こす主役である肥満細胞は、ヒトの血液中や、鼻などの粘膜に広く分布しています。そして、ひとたびハチ毒や食べ物、薬などの刺激が加わると、ヒスタミンを含んだ大量の分泌顆粒を細胞外に放出する状態に変容します。この現象は“脱顆粒現象(エクソサイトーシス)”と呼ばれます【図2】。
風間教授はこれまで、肥満細胞の脱顆粒現象を電気生理学的な膜容量の増加として捉え、アレルギー疾患の治療や臓器の線維化との関連から、数多くの研究報告をしてきました。
世界初「アナフィラキシー」に対する有効な治療薬を明らかに
今回の研究では、ラットの体内より採取した肥満細胞に対し、いくつかの薬剤の存在下で脱顆粒現象を引き起こし、その程度を調べました。その結果、プラゾシン(α1受容体阻害薬)という薬剤は、肥満細胞の脱顆粒現象を有意に抑制し【図3】、さらには、アドレナリンによる抑制効果を大きく増強しました【図4】。
さらに今回、風間教授らは、パッチクランプ法という電気生理学的な実験方法によっても、同様の現象を確かめています。プラゾシンは通常、高血圧や前立腺肥大症の治療に多く用いられている薬剤です。今回の結果より、本薬剤がアレルギー疾患に対する治療薬としても有効であり、とくにアナフィラキシーに対しては、第一選択薬とされてきたアドレナリンの治療効果を強める作用があることを、世界で初めて明らかにしたといえます。
風間教授は今後も、臨床から発想した研究の成果を再び臨床に還元することを目標とし、日々研究に取り組んでまいります。学生さんでも教職員の方でも、風間教授と一緒に研究をやってみたい人(在学中だけでも“研究者”になってみたい人!)は、是非ご一報ください。いつでもスタンバイしてお待ちしております。( kazamai(a)myu.ac.jp メールの際は(a)を@に変えてご連絡願います)
研究成果の詳細について
なお、本研究成果は、5月付けで英文雑誌Biomed Research Internationalの電子版(風間教授がCorresponding author)に論文として掲載されています。
また、風間教授がここ数年の間に発表してきた、本研究に関連する複数の研究成果についても、別の英文雑誌に掲載されています。(いずれも風間教授がCorresponding author)
Anti-Allergic Drugs Tranilast and Ketotifen Dose-dependently Exert Mast Cell-Stabilizing Properties