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21.05.10

マグネシウム過剰投与が引き起こす「高マグネシウム血症」心電図変化とそのメカニズムを疑似病態モデルで証明/看護学群教授 風間 逸郎

看護学群に所属する風間 逸郎教授は,病態生理学・内科学・一般生理学を専門分野としています。また,内科の専門医として臨床にも携わっており,主要な研究のひとつとして「心疾患の病態生理と心電図異常のメカニズム解析」をテーマとした研究を行っています。このたび風間教授は,「高マグネシウム血症でおきる心電図変化とそのメカニズム」を, 世界で初めてウシガエルの心臓を用いて証明しました。

本研究成果は,2021年4月付けで英文雑誌(Journal of Veterinary Medical Science)にも掲載されました。今回の取組みは,一部で卒業研究の学生さん(当時4年生)への研究指導も行いながら,一貫して本学・看護学群内で行われた基礎研究成果です。

慢性的な便秘症に使われる「酸化マグネシウム製剤」適正使用の呼びかけ

近年,慢性的な便秘症や,他の薬を処方した際に起こる副作用としての便秘症を改善するため,下剤として「酸化マグネシウム製剤」を投与する機会が増えています。同薬については,2020年8月5日に酸化マグネシウム製剤の製造販売を行う計17社が「適正使用のお願い」を発出したことをご存じでしょうか。とくに高齢者や腎臓の機能が低下した患者では,マグネシウムの過剰投与による副作用が起きやすくなっており,医療や看護の現場でも“高マグネシウム血症”に遭遇する頻度が高くなってきています。高マグネシウム血症は,死亡など重篤な転帰をたどる症例が報告されていることから,改めて適正使用が訴えられています。

高齢者で多い「高マグネシウム血症」これまで評価できなかった重症例の心電図異常

高マグネシウム血症の初期には,悪心・嘔吐,全身倦怠感,筋力低下,傾眠傾向などがみられることがありますが,いずれも特異的な症状ではないため,敢えて血液検査を行うまでは非常に診断が難しいといえます。軽症例の場合には,心臓の筋肉内で起きる伝導障害の結果,心電図上でPR間隔やQT間隔の延長,QRS幅の開大などがみられることがあります。しかし重症例の場合には,その伝導障害がより重篤になるため,発見されたときには既に心原性のショック状態や心停止を来してしまっている症例が多く,そのときに起きている心電図異常の詳細までを評価することができませんでした。

世界で初めてウシガエルの心臓を用いた擬似病態モデルを作成,
心電図異常のメカニズムを明らかに

図:高マグネシウム血症による心電図ST間隔の上昇とインスリン(NaK-ATPase刺激薬)による改善効果

今回の研究は,ウシガエルの心臓を活用して高マグネシウム血症の擬似病態モデルを作り,“心電図異常メカニズム”を再現し,解析を行ったものです。解析の結果,高濃度のマグネシウム曝露によって急性心筋梗塞に似た心電図の異常波形(ST間隔の上昇)が見られることを明らかにしました。

さらに,細胞内からナトリウムイオンを汲み出し,カリウムイオンを取り込む細胞膜上の構造“ナトリウムカリウムポンプ(Na/K-ATPase)”の機能異常が,高マグネシウム血症における心電図異常のメカニズムに影響することも明らかにしました。

本研究成果は, 医療・看護の現場で,とくに高齢者や腎不全患者でおきやすい高マグネシウム血症に対する,新たな早期診断のツールとしての糸口を世界で初めて明らかにしたといえます。

風間教授は「今後も,臨床から発想した研究の成果を再び臨床に還元することを目標とし,日々研究に取り組んでまいります。学生さんでも教職員の方でも,一緒に研究をやってみたい人は,是非ご一報ください。在学中だけでも“研究者”になってみたい!学会で発表してみたい!論文の著者になってみたい!という人でも構いません。いつでもスタンバイしてお待ちしております」とのメッセージを寄せました。
( kazamai(a)myu.ac.jp メールの際は(a)を@に変えてご連絡願います)


研究報告の詳細について

なお,本研究成果は,本年4月付けで英文雑誌Journal of Veterinary Medical Scienceに研究論文として掲載されています。
また,風間教授が最近発表した医学・看護学に関連する主な研究成果については,以下の和文・英文雑誌に掲載されています。(いずれも風間教授が責任著者)


研究者プロフィール

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