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24.09.19
風間教授が英文書籍「Tea in Health and Disease Prevention(2nd edition)」で、カテキンやカフェインによる抗アレルギー効果について執筆/看護学群
看護学群の風間逸郎教授は、病態生理学・内科学・一般生理学を専門分野としています。また、内科の専門医として臨床にも携わっており、主要な研究のひとつとして「アレルギー疾患や臓器の線維化における肥満細胞の役割」をテーマとした研究を行っています。このたび、分担執筆した英文書籍「Tea in Health and Disease Prevention(2nd edition)」がElsevier社より発刊され、風間教授が第51章「Catechin: Features and linking effects on caffeine and mast cells」を執筆しました。こちらは2021年に公開した下記記事の研究に、メカニズムについての総説を加えたものです。
Tea in Health and Disease Prevention(2nd edition)
Tea in Health and Disease Prevention, Second Edition, is an organized, efficient resource that will help readers find quick answers to questions and will help inspire further studies for those interested in tea research. This is a must-have reference for researchers in food science and nutrition, as well as nutritionists and dieticians.
- 発行元:エルセビア
- 発行年月:2024年9月
- 編集:Victor R Preedy, Vinood Patel
- Hardback ISBN:9780443141584
- eBook ISBN:9780443141591
※風間教授は第51章「Catechin: Features and linking effects on caffeine and mast cells」を執筆。
世界中で愛飲されている様々な種類の茶の成分、最新の研究成果を幅広く紹介する英文書
本書は、栄養学・食品科学・薬学などを専門とする研究者や医療従事者を対象として、世界中で愛飲されている様々な種類の茶の成分による健康増進作用・疾病予防・最新の研究成果に至るまで幅広く紹介・解説した英文書籍です。2012年に発行された第1版から12年ぶりに改訂された今回の第2版では、ポリフェノールをはじめとする茶の成分による人体・臓器への影響やそのメカニズムだけでなく、近年明らかになってきた、疾患に対する予防効果についても詳しく解説されています。各研究分野や臨床現場の最前線で、まさに今活躍中の世界の専門家たちが、各章の執筆を担当しています。
風間研究室の学生が「カフェインやカテキンによる抗アレルギー作用」のメカニズムを証明(2021年記事再掲)
風間教授が研究指導をしている看護学群4年生の佐藤雪音さん、八嶋美咲さんが「カフェインやカテキンによる抗アレルギー作用」のメカニズムを, 世界で初めて実験により証明しました。今回の取り組みは、本学・看護学群の学生が主体となり、一貫して本学群内で行われた基礎研究成果です。
本研究成果は、2021年1月6日付けで英文雑誌(Allergy, Asthma & Clinical Immunology)にも掲載されました。2名の学生はともに主体的に本研究に取り組んだため、“equally contributed authors”として、共同で本英語論文の“筆頭著者(even first author)”となっています。(風間教授は責任著者) |
アレルギー疾患を引き起こすメカニズム、ヒスタミンを抑える従来の治療法
私たちがよく耳にするアトピー性皮膚炎、花粉症、アレルギー性鼻炎・結膜炎、気管支喘息、食物アレルギーなどはアレルギー疾患と呼ばれます。アレルギー疾患の主役は、気道、鼻、眼などの粘膜に存在する肥満細胞とよばれる免疫細胞です。この肥満細胞は、ひとたび花粉やほこり、食べ物、薬などの刺激が加わると、ヒスタミンを含んだ大量の分泌顆粒を細胞外に放出し、気道、鼻、眼などの粘膜に作用して、いわゆるアレルギー症状(かゆみ、鼻汁、くしゃみ、気道の閉塞など)を引き起こします。
従来の治療法は、放出されたヒスタミンのはたらきを抑える“抗ヒスタミン薬”によりアレルギー症状を緩和するものですが、今回の研究は、ヒスタミン放出前の段階、肥満細胞に刺激が加わった状態である“脱顆粒現象(エキソサイトーシス)”に着目しました。
カフェインやカテキンがヒスタミン放出前の段階である“脱顆粒現象(エキソサイトーシス)”を抑制することを明らかに
今回の研究では、ネズミの体内より採取した肥満細胞に対し、カフェインやカテキンの存在下で、アレルギー症状を引き起こすヒスタミンの放出状態である脱顆粒現象を意図的に引き起こし、その程度を調べました。その結果、カフェインの用量が一定値以上になったとき、その用量に比例して抗アレルギー作用が働くという結果となりました【図1】。カテキンも、高用量では肥満細胞の脱顆粒現象を抑制しましたが、低用量ではその効果はほとんど見られませんでした。ところが驚くべきことに、単独では効果がなかった低用量のカテキンを合わせて用いることで、カフェインによる脱顆粒抑制効果を大きく増強しました【図2】。今回の結果により、カフェインやカテキンは肥満細胞からの脱顆粒現象を直接抑えることによって抗アレルギー作用を発揮することを、世界で初めて明らかにしたといえます。
カフェインやカテキンは、症状を軽減し、自然治癒能力を高めるような、いわゆる対症療法的な処置とは異なり、根本的に肥満細胞からヒスタミンが放出される前の段階を抑えることができます。つまり、従来の治療法である抗ヒスタミン薬よりも強力な抗アレルギー作用を発揮できる可能性があります。さらに本研究では、少量のカテキンを併用することにより、カフェインが有する抗アレルギー効果を相乗的に強めることができることも発見しました。
近年の健康ブームにより、コーヒーや緑茶による健康作用が注目されるようになっています。例えば1日3~4杯のコーヒーには、抗酸化作用、抗癌作用、老化を遅らせるはたらき、美肌作用、脂肪燃焼作用、疲労抑制作用などがあることが分かっています。 また、緑茶についても抗酸化作用のほか、乳癌の予防効果、腸内環境改善効果、糖や脂肪の吸収を穏やかにするダイエット効果、血糖や血圧の上昇を抑制する効果、抗菌・抗ウイルス効果などがあることが分かってきました。カテキンやカフェインやカテキンは緑茶やコーヒーといった嗜好品に含まれ、日常的に多くの人に愛飲されています。成分として食事やサプリメントの中に含めることもできるので、風間教授らの今回の発見は医療や看護の現場だけでなく、日常生活の中でも十分に有用性が高いと言えます。
風間教授は「今後も、臨床から発想した研究の成果を再び臨床に還元することを目標とし、日々研究に取り組んでまいります。学生さんでも教職員の方でも、一緒に研究をやってみたい人は、是非ご一報ください。在学中だけでも“研究者”になってみたい!学会で発表してみたい!論文の著者になってみたい!という人でも構いません。いつでもスタンバイしてお待ちしております」とのメッセージを寄せました。
連絡先メールアドレス:kazamai(a)myu.ac.jp ※メールの際は、(a)を@に変換ください
研究報告の詳細について
なお、本研究成果は、2021年1月6日付けで英文雑誌Allergy, Asthma & Clinical Immunologyの電子版に論文として掲載されています。佐藤と八嶋さんは“equally contributed authors”として、共同で本英語論文の“筆頭著者(even first author)”となっており、風間教授は責任著者(Corresponding author)となっています。「Tea in Health and Disease Prevention」(2nd Ed, Elsevier)は2024年9月に発刊されています。なお、風間教授がこれまで発表してきた、本執筆内容に関連する主な研究成果については、以下の英文雑誌に掲載されています。(いずれも風間教授が責任著者)
- Lemon Juice and Peel Constituents Potently Stabilize Rat Peritoneal Mast Cells
- (本学看護学群学生が筆頭著者)
- Prazosin Potentiates Mast Cell-Stabilizing Property of Adrenaline
- (東北大学で研究指導した大学院生が筆頭著者)
- Catechin synergistically potentiates mast cell-stabilizing property of caffeine | Allergy, Asthma & Clinical Immunology | Full Text (biomedcentral.com)
- (本学看護学群学生が筆頭著者)
- Cetirizine more potently exerts mast cell-stabilizing property than diphenhydramine (jst.go.jp)
- (本学看護学群学生が筆頭著者)
- Pyridoxine Synergistically Potentiates Mast Cell-Stabilizing Property of Ascorbic Acid (cellphysiolbiochem.com)
- (本学看護学群学生が共著者)
- Potential prophylactic efficacy of mast cell stabilizers against COVID-19 vaccine-induced anaphylaxis | Clinical and Molecular Allergy | Full Text (biomedcentral.com)
- Stabilizing mast cells by commonly used drugs: a novel therapeutic target to relieve post-COVID syndrome?
- Anti-Allergic Drugs Tranilast and Ketotifen Dose-Dependently Exert Mast Cell-Stabilizing Properties
- Hydrocortisone and dexamethasone dose-dependently stabilize mast cells derived from rat peritoneum
- Clarithromycin Dose-Dependently Stabilizes Rat Peritoneal Mast Cells
- Olopatadine inhibits exocytosis in rat peritoneal mast cells by counteracting membrane surface deformation
- Mast cell involvement in the progression of peritoneal fibrosis in rats with chronic renal failure
研究者プロフィール
・風間 逸郎(かざま いつろう):看護学群教授
病態生理学・内科学・一般生理学を専門分野としております。また、内科の医師として現在も患者さんの診療に携わる中での研究は、常に臨床からの発想に端を発しており、研究の成果を再び臨床に還元することを目標としてきました。そして、遺伝子レベルでの解析から、細胞、生体レベルでの解析まで行うことにより、ミクロの研究とマクロの研究とを結びつけることを常にこころがけています。
<参考>
- 風間教授と4年生が「レモンやその成分による抗アレルギー作用」のメカニズムを解明
- 風間教授が高齢者でカリウム代謝異常症が起きやすいメカニズムのひとつを明らかに
- 第101回日本生理学会大会で看護学群4年生が学生ポスター賞を受賞「高カリウム血症の心電図変化と急性期治療薬の作用メカニズム」
- 若年者で新型コロナウイルス感染後に長引く症状の特徴を明らかに/看護学群・風間教授の指導の下、看護学群4年生と宮城大学事務局が共同で調査
- 高カリウム血症の心電図変化と急性期治療薬の効果を明らかに
- 急性下壁心筋梗塞で起きる心電図の“鏡像変化”のメカニズムを明らかに
- 新型コロナウイルス感染症の後遺症でおきる“ブレインフォグ”のメカニズムのひとつを報告
- 病態生理にもとづき、高カリウム血症に対する新規治療法について報告
- 三環系抗うつ薬(アミトリプチリン)中毒で起きる心電図変化とそのメカニズムを明らかに
- 新型コロナウイルス感染症の第6波と第7波における若年者の症状の特徴を明らかに
- 抗ヒスタミン薬による抗アレルギー作用の新たなメカニズムを明らかに
- 若年者における3回目の新型コロナワクチン接種後の副反応の特徴を明らかに
- 慢性腎臓病で新型コロナウイルス感染症が重症化するメカニズムのひとつを明らかに
- 風間研究室で「急性下壁心筋梗塞」で起きる心電図変化とそのメカニズムを証明
- 風間教授が卒業研究の学生と「ビタミン類が有する抗アレルギー作用」のメカニズムを解明
- 気管支喘息に対する水泳の有用性を明らかに
- 風間逸郎教授と佐藤泰啓助教が、統合失調症に対する新規治療法の可能性を明らかに
- 「第99回日本生理学会大会」/看護学群学生3名と助手1名も筆頭演者として発表
- 若年者における新型コロナワクチン接種後の副反応の特徴を明らかに
- 新型コロナワクチン接種後の“アナフィラキシー”に対する予防法を発見
- 新型コロナワクチン副反応に対する非ステロイド性抗炎症薬の有用性を明らかに
- 看護学群・風間研究室の学生が「高カリウム血症の心電図変化とそのメカニズム」を証明
- 風間教授・編集の『看護技術』10月増刊号「病態生理からひもとく水・電解質異常」発刊
- 病態生理にもとづき、高カリウム血症に対する看護的介入方法を発見
- マグネシウム過剰投与が引き起こす「高マグネシウム血症」心電図変化とそのメカニズム
- 宮城県における新型コロナウイルス感染症患者の特徴を明らかに/風間逸郎教授が学生と報告
- 女性が筋ジストロフィー(デュシェンヌ型)を発症するメカニズムを発見
- 風間研究室の学生が「カフェインやカテキンによる抗アレルギー作用」のメカニズムを証明
- 心電図検査における人為的ミスの発生と予防/ 風間逸郎教授が学生と報告
- 麻疹(ましん)に対する新規治療法の可能性と臨床現場での有用性/風間逸郎教授が学生と報告
- 新型コロナウイルス感染症の“後遺症”に対する治療法を発見/風間逸郎教授
- 風間逸郎教授が新型コロナウイルス感染症に対する新規治療法の可能性を発見
- 風間逸郎教授がアナフィラキシーに対する新規治療法を発見
- 風間逸郎教授が研究指導する学生達が「心筋梗塞でおこる心電図異常のメカニズム」を証明
- 風間逸郎教授が腎臓の線維化における新規病態メカニズムを発見