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21.01.14

風間研究室の学生が「カフェインやカテキンによる抗アレルギー作用」のメカニズムを証明

看護学群の風間逸郎教授は,病態生理学・内科学・一般生理学を専門分野としています。また,内科の専門医として臨床にも携わっており,主要な研究のひとつとして「アレルギー疾患や臓器の線維化における肥満細胞の役割」をテーマとした研究を行っています。

このたび,風間教授が研究指導をしている看護学群4年生の佐藤雪音さん,八嶋美咲さんが「カフェインやカテキンによる抗アレルギー作用」のメカニズムを, 世界で初めて実験により証明しました。今回の取組みは,本学・看護学群の学生が主体となり,一貫して本学群内で行われた基礎研究成果です。

本研究成果は,2021年1月6日付けで英文雑誌(Allergy, Asthma & Clinical Immunology)にも掲載されました。2名の学生はともに主体的に本研究に取り組んだため,“equally contributed authors”として,共同で本英語論文の“筆頭著者(even first author)”となっています。(風間教授は責任著者)

アレルギー疾患を引き起こすメカニズム,ヒスタミンを抑える従来の治療法

私たちがよく耳にするアトピー性皮膚炎,花粉症,アレルギー性鼻炎・結膜炎,気管支喘息,食物アレルギーなどはアレルギー疾患と呼ばれます。アレルギー疾患の主役は,気道,鼻,眼などの粘膜に存在する肥満細胞とよばれる免疫細胞です。この肥満細胞は,ひとたび花粉やほこり,食べ物,薬などの刺激が加わると,ヒスタミンを含んだ大量の分泌顆粒を細胞外に放出し,気道,鼻,眼などの粘膜に作用して,いわゆるアレルギー症状(かゆみ,鼻汁,くしゃみ,気道の閉塞など)を引き起こします。

従来の治療法は,放出されたヒスタミンのはたらきを抑える“抗ヒスタミン薬”によりアレルギー症状を緩和するものですが,今回の研究は,ヒスタミン放出前の段階,肥満細胞に刺激が加わった状態である“脱顆粒現象(エキソサイトーシス)”に着目しました。

カフェインやカテキンがヒスタミン放出前の段階である“脱顆粒現象(エキソサイトーシス)”を抑制することを明らかに

今回の研究では,ネズミの体内より採取した肥満細胞に対し,カフェインやカテキンの存在下で,アレルギー症状を引き起こすヒスタミンの放出状態である脱顆粒現象を意図的に引き起こし,その程度を調べました。その結果,カフェインの用量が一定値以上になったとき,その用量に比例して抗アレルギー作用が働くという結果となりました【図1】。カテキンも,高用量では肥満細胞の脱顆粒現象を抑制しましたが,低用量ではその効果はほとんど見られませんでした。ところが驚くべきことに,単独では効果がなかった低用量のカテキンを合わせて用いることで,カフェインによる脱顆粒抑制効果を大きく増強しました【図2】。今回の結果により,カフェインやカテキンは肥満細胞からの脱顆粒現象を直接抑えることによって抗アレルギー作用を発揮することを,世界で初めて明らかにしたといえます。

図①カフェインによる脱顆粒抑制
(文献: Yashima M, Sato Y and Kazama I. Allergy Asthma Clin Immunol 2021より引用)

図② カフェインとカテキンによる相乗効果
(文献: Yashima M, Sato Y and Kazama I. Allergy Asthma Clin Immunol 2021より引用)

カフェインやカテキンは,症状を軽減し,自然治癒能力を高めるような,いわゆる対症療法的な処置とは異なり,根本的に肥満細胞からヒスタミンが放出される前の段階を抑えることができます。つまり,従来の治療法である抗ヒスタミン薬よりも強力な抗アレルギー作用を発揮できる可能性があります。

さらに本研究では,少量のカテキンを併用することにより,カフェインが有する抗アレルギー効果を相乗的に強めることができることも発見しました。カフェインやカテキンはコーヒーや緑茶といった嗜好品に含まれ,日常的に多くの人に愛飲されています。成分として食事やサプリメントの中に含めることもできるので,今回の発見は今後,医療や看護の現場でも応用できるかもしれません。

風間教授は「今後も,臨床から発想した研究の成果を再び臨床に還元することを目標とし,日々研究に取り組んでまいります。学生さんでも教職員の方でも,一緒に研究をやってみたい人は,是非ご一報ください。在学中だけでも“研究者”になってみたい!学会で発表してみたい!論文の著者になってみたい!という人でも構いません。いつでもスタンバイしてお待ちしております」とのメッセージを寄せました。
連絡先メールアドレス:kazamai(a)myu.ac.jp ※メールの際は,(a)を@に変換ください


研究報告の詳細について

なお,本研究成果は,2021年1月6日付けで英文雑誌Allergy, Asthma & Clinical Immunologyの電子版に論文として掲載されています。佐藤と八嶋さんは “equally contributed authors”として,共同で本英語論文の “筆頭著者(even first author)”となっており,風間教授は責任著者(Corresponding author)となっています。これまで風間教授が本学看護学群の学生を指導しながら発表してきた研究成果については,以下の和文・英文雑誌に掲載されています(いずれも風間教授がCorresponding author)。

心電図検査における人為的ミスの発生と予防―ウシガエル心電図を用いた検討―(本学看護学群学生が筆頭著者)
麻疹に対するビタミンA補充療法の意義と看護現場での実践(本学看護学群学生が共著者)
Reciprocal ST segment changes reproduced in burn-induced subepicardial injury model in bullfrog heart(本学看護学群学生が共著者)

また,風間教授がこれまでに発表してきた,本研究報告に関連する主な研究成果についても,別の英文雑誌に掲載されています(いずれも風間教授がCorresponding author)。

Stabilizing mast cells by commonly used drugs: a novel therapeutic target to relieve post-COVID syndrome?
Targeting lymphocyte Kv1.3-channels to suppress cytokine storm in severe COVID-19: Can it be a novel therapeutic strategy?
α 1-Adrenergic Receptor Blockade by Prazosin Synergistically Stabilizes Rat Peritoneal Mast Cells
Anti-Allergic Drugs Tranilast and Ketotifen Dose-Dependently Exert Mast Cell-Stabilizing Properties
Hydrocortisone and dexamethasone dose-dependently stabilize mast cells derived from rat peritoneum
Clarithromycin Dose-Dependently Stabilizes Rat Peritoneal Mast Cells
Olopatadine inhibits exocytosis in rat peritoneal mast cells by counteracting membrane surface deformation
Mast cell involvement in the progression of peritoneal fibrosis in rats with chronic renal failure


研究者プロフィール

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