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21.04.30
宮城県における新型コロナウイルス感染症患者の特徴を明らかに/看護学群・風間逸郎教授が看護学群4年生と報告
看護学群に所属する風間 逸郎教授は、病態生理学・内科学・一般生理学を専門分野としており、内科の専門医として、現在も患者さんの診療に携わっています。このたび、宮城県から公表された資料をもとに、県内における新型コロナウイルス感染症流行の“ 第1波” 88 例(2020年2月29日~4月28日)について、症状の内訳、発熱の特徴、診断に至るまでの日数など、主に症状や経過を中心にデータを集約し、感染者の特徴やその問題点を整理しました。そのうえで、次の流行に備えた感染対策など、宮城県民として実践できる内容を考察、宮城大学研究ジャーナル(創刊号(第1巻第1号))にも発表しました。
本研究は、昨年度、看護学群4年生だった西野拓人さん(現・JCHO仙台病院)が、“宮城県における新型コロナウイルス感染症の特徴”をテーマとした卒業研究を行うにあたって風間教授がその指導を行いまとめたものです。今回、宮城大学研究ジャーナル(創刊号)に発表した論文は、西野さんが筆頭著者、風間教授が責任著者となっています。 |
宮城県における新型コロナウイルス感染症患者の年代と感染対策
宮城県の新型コロナウイルス感染症患者は、20~50 代が全体の80% を占め、なかでも20 代と30 代の合計が約半数を占めていました。学生の占める割合が高い仙台市の人口動態を反映したものといえます。このうちで感染経路が特定できるケースのほとんどが、夜間繁華街の飲食店など、クラスター発生箇所での感染でした。これらの発生箇所の多くでは、マスクの着用、大声の回避、手洗いまたは手指消毒、十分な換気、3 密(密閉、密集、密接)の回避、のいずれかが徹底されていなかったことが後に判明しています。従って、若い世代ではとくに、このような基本的な感染対策を徹底したうえで、例えば“ 閉ざされた狭い空間で大人数での集まりを控える” などといったより具体的な行動変容を促すことが重要であるといえます。新型コロナウイルス感染症は、インフルエンザなど他の感染症とは異なり、無症状または症状が軽い期間であっても感染力が高いことが特徴です。そのため、活動力のある若い世代は、自分たちは無自覚のまま感染を拡げてしまう可能性があることを常に考えて行動する必要があるといえます。
宮城県における新型コロナウイルス感染症患者の症状の特徴
初発症状では男女ともに発熱が最も多く、倦怠感、咳嗽、咽頭痛、頭痛などの感冒症状・全身症状が続きました。嗅覚・味覚障害や消化器症状は、初発症状ではなく経過中に出現した例が多く、若い世代ほど多彩な症状が出現しました。初発・経過中を問わず発熱の症状があった患者の体温分布では、37℃台が全体の約半数を占め、37℃台後半が最も多くみられました(17 例、23%)。また、発熱した患者の約70% では4 日以内に解熱していましたが、約35% の患者では一時的に解熱した後、再び発熱していました。宮城県における新型コロナウイルス感染症の症状の特徴としては以下の場合が多いことが挙げられます。
① 3 つ以上の症状を併発する
②軽症の症状が1 週間程度続く
③発熱しても一時的に解熱し再度発熱する
だからといって、例えば、“ 熱が出て、のどの痛みと咳がある”というだけで、“ 新型コロナウイルス感染症に罹患してしまった”と短絡的に考えることはできません。しかし、“これらの症状は新型コロナウイルス感染症の症状の一部かもしれない”という意識は常に持っておく必要はあります。そして、症状が多岐にわたったり、少しでも長く続いたりする場合には、まず大学や職場を休む、早めに医療機関を受診または接触者外来に相談するようにすることは、新型コロナウイルス感染症の早期発見と感染拡大防止のために非情に重要です。
今回の研究の結果、宮城県における新型コロナウイルス感染症の第1波では、全国に比べればそれほど保健医療体制が逼迫しておらず、患者自身の初動の遅れによる診断の遅れはみられませんでした。その後の第2~4波においても、宮城県とくに仙台市は、全国に比べて若い人の人口比が高いため、若い世代の感染が目立ちますが、それが後になって高齢者へと広がり、高齢者施設でのクラスターの多発、重症者・死亡者数の増加につながっています。また、若い人で無症状・軽症であったとしても、長引くコロナ後遺症に苦しむケースも多くなってきています。最近の変異株の流行により、若い人たちでも新型コロナウイルスに感染しやすく、重症化しやすくなることが分かってきましたが、私たちが行うべき基本的な感染対策は全く変わりません。マスクの着用、手洗い、換気、3密の回避、大声を出さない、などを徹底することで感染の拡大を防止しつつ、学校や社会・経済活動も両立させていくことが、今後の“ ウイズ・コロナ”、つまり“ 新型コロナウイルス感染症と上手に付き合いながら生活していく” ための基盤になるといえるでしょう。
風間教授は「今後も、臨床から発想した研究の成果を再び臨床に還元することを目標とし、日々研究に取り組んでまいります。学生さんでも教職員の方でも、一緒に研究をやってみたい人は、是非ご一報ください。在学中だけでも“研究者”になってみたい!学会で発表してみたい!論文の著者になってみたい!という人でも構いません。いつでもスタンバイしてお待ちしております」とのメッセージを寄せました。
( kazamai(a)myu.ac.jp メールの際は(a)を@に変えてご連絡願います)
研究報告の詳細について
なお、本研究成果は、本年3月付けで宮城大学研究ジャーナル(創刊号)に資料論文として掲載されています。
風間教授がこれまで発表してきた“新型コロナウイルス感染症”に関連する主な研究成果については、以下の動画や英文雑誌で紹介されています(いずれも風間教授が責任著者)。
「生活習慣病と新型コロナウイルス感染症」(Youtube動画)
Stabilizing mast cells by commonly used drugs: a novel therapeutic target to relieve post-COVID syndrome?
Targeting lymphocyte Kv1.3-channels to suppress cytokine storm in severe COVID-19: Can it be a novel therapeutic strategy?
また、風間教授が最近発表した医学・看護学に関連する主な研究成果については、以下の和文・英文雑誌に掲載されています。(いずれも風間教授が責任著者)
Catechin synergistically potentiates mast cell-stabilizing property of caffeine
(本学看護学群学生が筆頭著者)
心電図検査における人為的ミスの発生と予防―ウシガエル心電図を用いた検討―
(本学看護学群学生が筆頭著者)
麻疹に対するビタミンA補充療法の意義と看護現場での実践
(本学看護学群学生が共著者)
Reciprocal ST segment changes reproduced in burn-induced subepicardial injury model in bullfrog heart
(本学看護学群学生が共著者)
α 1-Adrenergic Receptor Blockade by Prazosin Synergistically Stabilizes Rat Peritoneal Mast Cells
Acute Bronchitis Caused by Bordetella Pertussis Possibly Co-Infected with Mycoplasma Pneumoniae
研究者プロフィール
・風間 逸郎(かざま いつろう):看護学群教授
<参考>
風間教授が主催する生理学研究所研究会(上皮膜研究グループ)が9/5~9/6開催されます
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看護学群・風間逸郎教授がアナフィラキシーに対する新規治療法を発見
看護学群・風間逸郎教授が新型コロナウイルス感染症に対する新規治療法の可能性を発見
新型コロナウイルス感染症の“後遺症”に対する治療法を発見/看護学群・風間逸郎教授
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