新着情報

24.01.11

(開催終了)1/18~1/28本学卒業生・佐藤早苗による「南相馬のコウバ写真展」仙台アーティストランプレイスで開催中

1月18日~28日にかけて仙台アーティストランプレイスにおいて「南相馬のコウバ写真展」が開催されますので案内いたします。本写真展は、フォトグラファーとして活躍する事業構想学群卒業生-佐藤早苗(sanas photo works)氏による写真による展示です。会場デザインは同じく事業構想学群卒業生でもある貝沼泉実特任助教が、フライヤのデザインを事業構想学群卒業生の佐々木享氏が行っています。入場無料、どなたでもご観覧いただけますので、ぜひご来場いただけますと幸いです。開催概要はこちら

本展は弊社が手がけた南相馬市にある小さな工場(コウバ)の改修工事を題材とした写真展になります。既存家屋の記録から引渡しまでの数ヶ月の間、私と共に現場に帯同した写真家佐藤の視点から、その工事プロセスや周囲に在る折々の光景の断片をそのまなざしと共に描きます。同時に本展は佐藤の同窓でもある建築家貝沼泉実氏、デザイナー佐々木享氏、近年仙台を拠点として活躍する作曲家秩父英里氏の視座をかけあわせ、展示空間を構成しています。各々の立場から佐藤の写真に向けられたまなざしの交錯も併せて皆さまにご覧いただければ幸いです。
工事が着工した2023年は東日本大震災から12年を経た節目の年でもありました。甚大な被害を被災した沿岸部や中心市街地に幾度となく足を運ぶ中で、日々を営む人々の持つしなやかな強さや次代への兆しを感じることも多くありました。東北のどこかのある街でくらす人々の姿にも思いを巡らせていただければ幸いです。
2024年1月 小池宏明[小池宏明建築設計事務所]

30年分の家族の記憶とこれから過ごす時間が建物によって結びつき、続いていく様子を、今の私が表現できる限り全部残したいと思った

2022年12月、最初の撮影の日。遠足の前日のようなわくわく感と、初めて飛行機に乗った時のような緊張を感じながら現場に入る。その場所の空気に実際に触れて、想像していた以上の撮影意欲がふつふつと湧き上がる。床の塗装の擦れ、机に無造作に敷き詰められた資料の切り抜き、スチールラックに片付けられた多くの工具、キャラクターのシールや虫かご、子どもの工作物。至る所に混在する、30年間「コウバ」で流れてきた時間の痕跡に、夢中でシャッターを切る。2023年2月、工事は進み、30年分の痕跡が取り払われスケルトンになった「コウバ」。今までを支えてきた建材と新しい建材が交わる様子を見て、これからここに流れる時間そのものだと感じた。2023年4月、刻々と現場が変化していく中、いつも同じ場所から降り注ぐ光はとても印象的だった。変わらないということが、この場所に流れる空気が穏やかである理由だと思った。私が「南相馬のコウバ」を訪れたのは全部で7回。残した写真は1500枚以上。短い期間で写した記録は、この場所に流れる時間のほんの一部でしかないけれど、「コウバ」の今までとこれからに寄り添う写真を少しでも残すことができていたら嬉しい。(佐藤早苗)


佐藤 早苗(フォトグラファー/sanas photo works)


1987年山形県生まれ/2010年宮城大学事業構想学群デザイン情報学科卒業

サークル活動で一眼レフを始めたことをきっかけに写真を撮る仕事を目指すようになる。卒業後は冠婚葬祭専門の写真スタジオに就職。それから14年、自身の結婚や出産といったライフイベントを挟みつつ、2020年よりフリーランスとして活動。より幅広く人々の今を写真に残している。

※宮城大学の広報フォトグラファーとしても多く活躍いただいています。


みていないものをみる写真

中田 千彦

「真」を「写す」から写真、と言うがそうなのか。その哲学的な?話題に切り込むのも良いが、むしろ私自身「みていないものをみる写真」という世界観に惹かれている。

イタリア語で写真機(カメラ)のことを“macchina fotografica”と表す。Macchinaは機械で、写真を撮る機械と記される。このfotograficaのfotoは写真と言う日本語訳よりもかえって図像のような感触のある言葉のようだと感じている。そしてイタリア語でカメラ(camera)というと「部屋」という意味がある。装置として目前の図像を捉える機械。ここで、この写真機という機械(=機構)は「みていないものをみる」仕掛けとして組み立てられてきたということについて改めて確認をしておきたい。

例えば、いわゆる一眼レフカメラは、撮影者がシャッターを切った瞬間、ファインダーから覗いている目の前の光景(光の入射)を一旦遮断し、フィルムのある小さな暗室(部屋=カメラ)に光を迂回させてフィルムに感光させる機構である。大判の写真機も同様でレンズを抜けた光をガラス面に映して構図などを決め、フィルムを挿入してシャッターを切る。つまり、撮影した図像を撮影者はみていない。瞼を閉じた時の目前の図像をフィルムに感光させたもの、ということになり、撮影した図像は実際には瞼を閉じている間のものなので、みたままのものではないということになる。この機構そのものが「写真を撮る」「写真に写る」という行為の醍醐味だと常々考えている。

最近はミラーレスカメラなどがデジタルカメラとして流行しているが、レンズを通した図像を受光するイメージセンサーが色情報として分解、分析して小さなモニターに再投影したものを覗いていることになるので、目前の物体に照らされた光そのものを目撃していることにはならない。アナログカメラのような素朴で質素な光と眼球の関係ではないにせよ、やはり撮影されたものは見ているわけではないと言えるのではないか。

絵画の世界では「写実」という言葉を使うことがある。「実」と「真」は似て非なるものごとかもしれないが、いずれにせよ「実」と「真」を追い求めたいという欲求が溢れでてくる言葉である。いや、むしろ写真にしても写実にしても、写したものはそもそも機構や行為そのものでは捉えられなかったものであると腹を括った方が良いと思っている。

だからこそ、見たいと思ったこと、見えていると思い込みたいものが写されたものではなく、みることそのものが不可なもの、あるいは見ようともしなかったことを「みることができるようになる」何かとして向き合う方が健全な気がするし、多くの写真作品からはそうした気配を感じてしまうことを認めた方が良いのではないか、と考えている。

もっと気楽に言えば「みていないものをみる写真」に対峙する。そうした時空間としての写真鑑賞体験を心のどこかで楽しみにしている。本展も、こうした私の期待に何かの形で応えてくれるものではないだろうか、と思いつつ開催が待ち遠しい。

開催概要

展示名称 南相馬のコウバ写真展
開催日程 2024年1月18日(木)~1月28日(日)、11:00~19:00※最終日は17:00まで、1/22(月)は休廊です
開催場所 仙台アーティストランプレイス(980-0012宮城県仙台市青葉区錦町1-12-7門脇ビル1F)
料金 入場無料、どなたでもご観覧いただけます。
内容

小池宏明建築設計事務所が手掛けた、南相馬市にある小さな工場の改修工事を題材とした写真展です。写真は佐藤早苗氏が撮影したものです。1月20日(土)、27日(土)、28日(日)、各日14時からギャラリートークを実施予定。また、佐藤早苗による撮影イベントも開催します。
詳細は佐藤Instagramにて

※本学卒業生が多く関わっています。
写真:佐藤早苗(sanas photo works)、会場デザイン:貝沼泉実(KAI ARCHITECTS・宮城大学事業構想学群特任助教)、グラフィック:佐々木享(Tohl Design)

主催 小池宏明建築設計事務所(代表の小池氏は、東北大学卒業生・仙台建築都市学生会議OBです)
協賛 有限会社今野住建
後援 公益財団法人 仙台市市民文化事業団、河北新報社、Date.FM
問い合わせ

小池宏明建築設計事務所 info(a)hkaa.jp

※メールの際は(a)を@に変えてご利用ください。

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