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新着情報

24.05.29

髙橋大河さんが電子情報通信学会SWIM研究会年間優秀論文賞を受賞「IoTを活用した低コストな“わな猟”システムの改良」/事業構想学研究科

5月17日に行われた電子情報通信学会ソフトウェアインタプライズモデリング (SWIM) 研究会において、事業構想学研究科の髙橋大河さん(2024年3月博士前期課程修了)が在学時の研究である「IoTを活用した低コストな“わな猟”システムの改良」によって年間優秀論文賞を受賞しましたのでお知らせいたします。

「IoTを活用した低コストなわな猟システムの改良」は、須栗教授による研究指導の下、一貫して本学の事業構想学研究科内で行われた応用研究成果です。

農山漁村に深刻な影響を及ぼす鳥獣被害、被害額は減少傾向だが・・・
シカ・イノシシの捕獲強化に苦戦

農林水産省による「鳥獣被害の現状と対策」環境省・農林水産省による「抜本的な鳥獣捕獲強化対策」によると、野生鳥獣による農林水産被害額は年々減少傾向にあります。しかし「鳥獣被害は営農意欲の減退、耕作放棄・離農の増加、さらには森林の下層植生の消失等による土壌流出、希少植物の食害等の被害ももたらしており、被害額として数字に表れる以上に農山漁村に深刻な影響を及ぼしている」として更なる対策が必要とされています。特に、ニホンジカ及びイノシシの捕獲強化には苦戦を強いられている報告があげられています。

鳥獣捕獲強化のためICT技術が注目を集める
しかし、現状で利用可能なICT機器はコストも高く、操作も難しい

鳥獣捕獲強化の対策として、捕獲技術の高度化、特にICTによる捕獲技術の活用が強化策の1つとして注目されています。例えば、狩猟の方法の一つで、くくりわな・はこわな・はこおとし・囲いわななど、わなをしかける「わな猟」は、従来では猟師がわなを仕掛けた場所をいちいち見回る必要がありました。ここで、ICT機器を使うことにより遠隔での監視が可能となり効率化を図ることができます。しかし、現状で利用可能なICT機器は導入コストも運用コストも高額であり、現場の猟師が使用するには操作方法も難しすぎる点が課題とされています。髙橋さんの研究は、わなの遠隔監視を安価に実現するシステムを開発したものです。

イラスト:おいけりん

IoTを活用した低コストな“わな猟”システムを提案
一般の狩猟者でも自作できるように

髙橋さんの提案した“わな猟”システムは、子機・中継機・サーバーから構成されています。子機が定期的にわなの状態を調べ中継機に低消費電力の近距離無線で通知、その後中継機が通信キャリアの回線を用いてインターネット上のサーバーに通知する仕組みです。サーバーはデータを受け取るとデータベースを更新し、わなが作動していた場合はユーザーへのメール通知も行います。また、webアプリケーションにより各わなの直近の状態を確認することができます。一人の猟師は法定上限である30機までわなを仕掛けるケースがよく見られますが、既存システムとのコストを比較すると、わなを4機以上設置する場合に今回開発したシステムがコスト的にも優位であることがわかっています。

システムの構成図

子機と中継機

アプリケーション画面

コストの比較

実証実験中に設置した子機

実証実験中に設置した中継器

これらのシステムは、狩猟者が自作することができるようにプログラム及びレシピを公開しています。

公開したプログラム
子機のTWELITE DIP https://github.com/TakahashiTaiga/extension-unit-TWELITE
中継機の TWELITE DIP https://github.com/TakahashiTaiga/repeater-TWELITE
中継機のArduino https://github.com/TakahashiTaiga/repeater-Arduino
webアプリケーション https://github.com/TakahashiTaiga/management-app
公開したレシピ
中継機の作り方 https://ds1.myu.ac.jp/wordpress/index.php/repeater/
子機の作り方 https://ds1.myu.ac.jp/wordpress/index.php/extension-unit/
自作するための材料 https://ds1.myu.ac.jp/wordpress/index.php/resorce/
自作するための準備 https://ds1.myu.ac.jp/wordpress/index.php/prepare/
使い方の詳細 https://ds1.myu.ac.jp/wordpress/index.php/how-to-use/

電子情報通信学会SWIM研究会では、「安価にシステムを購入できる、あるいは自作できる、さらにはコミュニティによって導入運用支援のエコシステムを回すことができる」という事業構想面のコンセプトが高く評価され、優秀論文賞を受賞しました。

指導教員である須栗教授は「髙橋君のこの研究は、学群の卒業論文を更に発展させたものです。彼自身、狩猟免許を持つ狩猟者であり、まず自分が不便に思う点を改善しました。しかし個人の満足に留まらず、広く狩猟者コミュニティに貢献できる内容であることが素晴らしいと思います」とコメントしています。

電子情報通信学会SWIM研究会について

電子情報通信学会SWIM研究会は、Interpriseの価値革新を情報通信技術の力を使って行うことを目標として活動しています。現場ニーズと技術シーズをマッチングするビジネスモデルに関する研究を中心に、情報システムの構築技術、Interpriseを使ったビジネスの事例、社会基盤としてのInterpriseの将来像を研究テーマとしています。
SWIM研究会優秀論文賞は、SWIM研究会で一年間に発表された論文のうちから、優秀論文賞推奨委員会によって最優秀であると審査され、研究専門委員会で承認された論文の著者に贈られる賞です。

指導教員プロフィール

情報システムの設計、構築、試験、運用、技術翻訳を専門分野として、狭い意味のメディアやデザインにとらわれず、様々な情報システムをメディアとしてモデリングし、それを設計して実装して検証することに挑戦しています。

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