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新着情報

25.11.20

【宮城県×宮城大学】10/25 DX人材育成プログラム 「Downstream から学ぶDX」全体スクーリング2を実施(2025年度)/事業構想学群

宮城大学では、宮城県からの受託事業により、県内の中小企業等においてDX推進を担う方々を対象としたDX人材育成プログラム「Downstreamから学ぶDX」リカレント教育プログラムを実施しています。本プログラムは、受講生が8月から12月までの15週間にわたり、自らの職場における具体的な課題解決に向けたPoC(概念実証評価)に取り組む実践的な人材育成プログラムです。10月25日、プログラムの折り返し地点として全体スクーリング2を開催しました。今回のスクーリングでは、受講生同士が進捗状況を共有するとともに、昨年度の受講生によるPoC事例の発表が行われ、現場を巻き込むコンセプト検証の重要性について学ぶ貴重な機会となりました。

過去受講生に聞く、現場メンバーを巻き込むコンセプト検証の重要性

2024年度の受講生である齋藤房子氏が登壇し、自身がDDXプログラムで取り組んだ「製造現場におけるデータの一元管理」のPoC成果について発表しました。齋藤氏は自動車部品製造業に勤務しており、昨年のプログラムを通じてデータ活用の重要性を認識したと言います。齋藤氏が勤める職場では、生産状況やトラブル内容の記録が部署によってバラバラに管理されており、紙やExcelでの分散管理により、最新版がわからなくなったり、部署ごとに異なる数字が出たりといった混乱が続いていました。

齋藤氏のPoCでは、職場のMicrosoft 365環境を活かし、ノーコードアプリPower Appsを使って現場の担当者がトラブル内容を簡単に入力できるアプリを開発しました。入力したデータはクラウドデータベースに蓄積され、BIツールと連携させてダッシュボードやグラフによる可視化を行いました。特に齋藤氏が重視したのは、現場の人と一緒に作り上げることでした。「実際に現場で働く人が使いやすいと感じない限り、この取り組み自体は定着しない」という考えのもと、現場のニーズを丁寧に把握することに注力しました。最初は現場メンバーから強い拒否反応がありましたが、「このアプリを作るのに、この項目はどこに置いたらいいですか?」「どういった項目があるとわかりやすいですか?」という会話を重ねることで、現場の皆さんが「自分たちも一緒に作っている」という感覚を持てるよう工夫しました。その結果、段々と拒否反応が薄れ、最初は紙と並行して運用していたものの、アプリの方が入力が簡単だとわかり、いつしか現場の人たちが自ら紙を使わなくなったと言います。

さらに齋藤氏は、「DXに取り組む上で最も大切なのは、まず視野を広げ、自分たちの課題に気づくことだと学びました。さまざまな業種の方々が参加するこのプログラムで、他社の課題や取り組みを直接聞くことで、自分自身や自社を客観的に見つめ直す貴重な機会となりました。このプログラムを通じて、自分の意識や会社の方々の意識が変化したことが一番の成果でした。」と振り返りました。

多様な業種における現場課題への取り組み

本プログラムでは、受講生が7つのチームに分かれ、各チーム4人前後のメンバーにメンターが1名ずつ配置される体制でPoCの検討を進めています。この日は、各チームから現在の進捗状況を発表し、プログラム開始から8週間が経過した時点での取り組み内容や課題、今後の方向性について共有しました。受講生の業種は、製造業、医療機関、飲食業、林業、情報通信業、大学事務職員など多岐にわたっており、それぞれの業界が抱える特有の課題に対して現場起点の観点からアプローチしています。取り組んでいるテーマも、業務効率化、データの一元管理と可視化、人材育成・教育支援、顧客サービスの向上、安全管理システム、AIやBIツールを活用した意思決定の高度化など、幅広い分野にわたっていることが報告されました。受講生同士が互いの取り組みから新たな気づきを得る機会となりました。

PoCの本質、実装ではなく検証に重きを置く

渋田一夫教授から、PoCの本質についての重要な解説がありました。「PoCというのはProof of Conceptの略で、Cはコンセプト、つまり概念を検証するという作業なのです。課題があって、その解決策はこれじゃないかな、あれじゃないかなといろいろ挙げてみる。それを実際に何らかの方法で検証してみる。検証が済んだら、次は別の案を検証してみるという繰り返しです。進めていくうちに実装に重きを置いてしまうことがよくありますが、むしろ検証をするためなら、ペーパープロトタイプ、つまり紙芝居でもよいのです。大事なことは、解決策が正しいかを確認すること、すなわち検証をすることです。」12月の最終発表会に向けてPoCを進める受講生に対し、渋田教授は「実装ではなく検証こそが本質である」というメッセージを強く伝えました。

対等な関係で作り上げるプログラムの意義

プログラム責任者である中田千彦教授は、今がちょうどプログラム全体の3分の2の地点であることを踏まえ、「単に家で講座を受けているだけでは得られない学びがここにあります。自分がどの位置にいるのか、周りにどんな人たちがいて、どんな取り組みをしているのかを見渡してみることで、最後のラストスパートでどんな進め方をすれば、自分が希望している成果にたどり着けるかを考えることができます。」と、受講生同士が互いの取り組みを参照しながら学ぶことの価値を強調しました。「この場所にこれだけ多様な方が集まったことが最高の瞬間だと思っています。教員とメンター、そして受講生のみなさんが対等な関係で一緒にプログラムを作り上げられたことが、とても意義あることです。」と述べ、このプログラムが一方的な教育の場ではなく、全員が共創して学び合う場であることを伝えてスクーリングを締めくくりました。

本プログラムは、現場・川下(Downstream)からのDXという理念のもと、受講生が自らの職場における具体的な課題に向き合い、実践的なスキルと視野を広げることを目指しています。今回の全体スクーリングを通じて、受講生はPoCの本質についての理解を深めることができました。残り約1カ月半、受講生は12月13日に予定されている最終発表会に向けて、コンセプトの検証と現場メンバーの巻き込みを重視しながら、それぞれのPoCに取り組んでいきます。

「Downstreamから学ぶDX」特設サイトでは、修了者へのインタビュー動画も公開しています。

開催概要

イベント名 Downstream から学ぶDX 全体スクーリング2
日時 2025年10月25日(土)13:00~16:00 (相談会 11:00〜12:00) 
会場 宮城⼤学⼤和キャンパス 交流棟2階 PLUS ULTRA−
受講者数 プログラム受講生のうち22名 
受講費 無料
受講方法 事前申込制
主催・問い合わせ

宮城大学DDX事務局
電話:022-377-8194 / メール:downstreamdx@gmail.com

 

宮城県令和7年度産業デジタル専門人材育成業務について

人口減少・高齢化が進展する中で経済成長を実現するには、生産性向上が不可欠であり、そのためには DX(デジタルトランスフォーメーション)が重要となっています。しかしながら、DX推進の中心的な役割を担うデジタル人材の不足は深刻化しており、中小企業のDX推進を妨げる要因の1つに挙げられています。本事業では、県内産業のDX推進を加速化させるため、専門的な技術力、新たな価値を創造できる企画力を持った人材を育成することを目的としています。

宮城大学について

宮城大学は、グローバルな視点で地域社会の発展に貢献できる人材の育成を理念の一つとして掲げ、実学を尊重し、実践的な教育に取り組んでいます。具体的には、現代社会の諸課題を多角的・グローバルな視点で論理的にとらえ、その課題解決に向けた事業を実行可能かつ持続可能なものとして構築する能力を身につけるとともに、豊かな人間性を基盤として地域資源の活用や新たな価値創造を志向し、産業、行政及び社会の各分野で先導的役割を担うことができる挑戦意欲旺盛な人材の育成を目指しています。これまでも中小企業を対象とした「Downstream から学ぶ DX」リスキリングプログラム、高校生を対象とした「未来志向型アントレプレナーシップ教育プログラム」など様々な実践志向の教育プログラムを展開し高い評価を得ています。

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