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新着情報

20.01.28

食産業学群 須田義人教授が日本食品免疫学会大会でポスター賞を共同受賞「ブタ由来乳酸桿菌ライブラリーの構築とイムノバイオティック評価」

食の安全と美味しさの観点から動物の能力を遺伝的に改良する研究を行う食産業学群の須田義人教授が、このたび日本食品免疫学会の学術大会(JAFI2019)で「ブタ由来乳酸桿菌ライブラリーの構築とイムノバイオティック評価」と題して扇隆介氏(東北大学)、北澤春樹教授(同)とともに一般演題(ポスター)発表を行い、2019年度の優秀発表としてポスター賞を共同受賞しました。

生産現場で求められている低リスクの抗菌剤代替物-イムノバイオティクス

ブタの生産現場では、幼若期における細菌・原虫等による下痢症や、腸管の慢性炎症が問題となっており、これらの予防や治療の手段として、一般的に抗菌剤等の医薬品が使用されています。しかし、それによって薬剤耐性菌が出現するリスクや、消費者の抗菌剤残留汚染への不安が増大しているのが現状です。そのうえ、これらの症状がウイルスによって引き起こされる場合、抗菌剤は効果がないとされています。

こうしたことから、感染症予防効果のある低リスクの抗菌剤代替物が求められており、プロバイオティクス(乳酸菌やビフィズス菌をはじめとする腸内細菌のバランスを改善し宿主に有益に働く微生物の活用)が注目されています。今回の研究では、そのプロバイオティクスの中でも特に粘膜免疫調節作用を発揮する菌種であるイムノバイオティクスに着目しています。

母ブタのミルクからイムノバイオティクス候補の菌種を確認、乳酸桿菌ライブラリーを構築

この研究では、母ブタより採取したミルクを次世代シーケンサーにより菌叢解析(微生物集団の遺伝子解析)を行い、微生物の種類と割合を解析。それにより一個の菌で形成されたシングルコロニーを割り出し、乳酸菌などのグラム陽性桿菌を選び出して菌種を確認。この、選抜されたイムノバイオティクス候補となる菌株により、ブタ腸管上皮(PIE)細胞を用いて、ウイルスモデルへの刺激を確認し、炎症関連遺伝子の発現調節(特定の遺伝子産物の合成を増減させるメカニズム)を評価しました。

その結果、ミルクにはイムノバイオティクス乳酸菌候補となるLactobacillus属の存在が認められ、Lactobacillus plantarumが7菌株得られました。この7菌株は、体内に侵入したウイルスに働きかけて、その作用を弱めたり消滅させたりするⅠ型インターフェロン(IFN-β)の顕著な発現増強を発揮する菌株であることが確認され、イムノバイオティクスとして有用な菌株であることが示唆されました。また、これら一連の手法を用いて、イムノバイオティクスとして有用な乳酸桿菌ライブラリーの構築を行いました。菌など微生物のライブラリー化は、情報リストと菌株そのものを保存することをいいます。ライブラリー化することによって、今後の発展的な研究や、製品展開などに役立てることができます。

仔豚への乳酸菌飼料素材の投与

仔豚への乳酸菌飼料素材の投与

ブタ小腸組織のパイエル板画像

ブタ小腸組織のパイエル板画像

仔豚への乳酸菌飼料素材の投与

仔豚への乳酸菌飼料素材の投与

これらのイムノバイオティクス菌株は、抗菌剤代替品として家畜の健全な育成に役立つ可能性があり、安全な畜産物の生産によって人びとの健康生活にも貢献することが大いに期待されます。また、母ブタのミルク由来のイムノバイオティクス乳酸菌が今後さらに明らかにされれば、母から子へと受け継がれる体の粘膜上皮に存在する機能性乳酸菌を優先的に摂取することで、健康維持・向上が期待できることも示唆される可能性があります。​​​​​

須田教授は、今後も東北大学をはじめ複数の研究機関や大学と共同で互恵的に研究を加速し進める予定です。

 「安全・安心な家畜と美味しい畜産物の生産を目指し、またその知見が人の生活と健康維持に大いに役立つように研究と教育に奮闘していきたいです。『母の愛は生まれ出る瞬間にも子に伝わる』凄さを証明したいと思います。興味のある人はぜひ一緒に研究しましょう」とコメントを寄せました。

日本食品免疫学会とは

日本食品免疫学会とは、食品免疫学を新しい科学分野として確立させ、食品の免疫調節機能に関する科学的根拠を提供しつつ、その関連分野を進歩発展させることにより国民の健康維持増進に貢献することを目的として平成16年6月に設立された学会です。食品免疫に関する研究に取り組んでいる産官学の研究者有志が、食品のもつ免疫調節機能の体系化・評価方法の確立を目的に平成13年10月に設立した食品免疫学研究会が前身となっています。発表ポスター賞は、学術大会の一般演題(ポスター)発表の中で、優秀な研究発表に与えられる賞です。2019年度は、51件の発表の中から7件が受賞しました。

・業績:「ブタ由来乳酸桿菌ライブラリーの構築とイムノバイオティック評価」
・共同受賞者:扇隆介(東北大学)、須田義人(食産業学群 教授)、北澤春樹(東北大学)

研究者プロフィール

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