新着情報
21.04.15
病気に負けない体をめざして~食と免疫~ /食産業学群 森本 素子 教授による健康増進のススメ
先日、オンライン公開講座「コロナ禍で活きる宮城大学の知」を公開しました。動画の中では、病気に負けない体を作るために、生活習慣と免疫の関わりについてお話ししています。
感染症を防ぐときに重要な「3つの視点」
感染症にかかるかどうかは、3つの要因によって決まるといわれています。
①「病原体が存在すること」 ②「環境」 ③「宿主要因」
①「病原体が存在すること」、当たり前ですが、病原体が存在しないと感染症は発生しません。②「環境」、病原体があったとしても、それが増える環境でなかったり、媒介するものがなかったりすると感染は広がりません。最後に③「宿主要因」、これは私たちのことですが、私たちの健康状態によっては病原体が存在しても病気になりません。
つまり、病原体を存在させなくするにはどうしたらいいか?ウイルスが広がる環境を断つにはどうしたらいいか?ウイルスが存在しても跳ね返せる体になるにはどうしたらいいか?ということを考えていけば、感染症は防ぐことができるわけです。今回はこの「宿主要因」についてお話します。
病原体が体の中に入らないようにする/入ってしまったら免疫系でたたく
病原体を体の中に入れないためには、皮膚、気道の粘膜、消化管の粘膜が生体バリアとして重要です。そのしくみについては動画で詳しくご紹介しています。
次に免疫です。免疫とは、病原体をやっつけるしくみと思われている方が多いかもしれませんが、私たちの体の免疫系は、相手が悪い奴かどうかはあまり気にしていません。自分が大好き。自分以外は大嫌い、とはっきりきっぱりしています。そして自分ではないものが入ってきたら、排除。それが免疫系のしくみです。
免疫系には、液性免疫と細胞性免疫の大きく分けて2種類があります。液性免疫の中心になる抗体はタンパク質なので、分子量が大きく、感染細胞の中までは入れません。血液中に出てきているウイルスなどには対処できますが、感染細胞をたたくには、抗体では無理なのです。そういうとき、働いてくれるのが細胞性免疫です。ですから、感染症をきちんと防ぐには、液性免疫と細胞性免疫の両輪が必要です。
「ストレス」と「腸内細菌」は免疫系に大きな影響を及ぼす
免疫系に大きな影響を及ぼすものとして挙げられるのは、まず「ストレス」です。「ストレス」は免疫細胞の機能を低下させます。他にも、年齢、性別、一日の時間、睡眠、運動、栄養などさまざまな要因がありますが、その中でも常在細菌は免疫細胞の適切な活性化に大きく関わっています。
常在細菌として代表的な「腸内細菌」は、私たちが食べたものを消化して吸収したあとに残ったものをさらに分解し、代謝産物を作っています。その代謝産物が私たちの体の生理機能に欠かせないのです。たとえば、カロリー消費と体重に関わっていますし、セロトニンという幸せ物質を呼ばれる物質を作り出して脳に影響を与えますし、アレルギーの病態にも関係しています。睡眠の質を左右するメラトニンの産生や、炎症性腸疾患の病態にも関与しています。腸内細菌については、いいと言われる菌だけを増やすより、多様な菌がいる方がいいので、おなじものばかり食べるのは避けたいところです。
さいごに
感染症に打ち勝つために、宿主要因を強めるにはどうしたらいいか。
それにはストレスをうまく発散させること、しっかり寝ること、適度に運動すること、バランスよく食べること、そして一緒に生きている菌のことも大事にするということです。
ぜひ動画をご覧いただき、食生活を含む生活全体をぜひ見直してみましょう。
研究者プロフィール
・森本 素子:食産業学群 教授
病原体から体を守る仕組みが免疫です。病原体にはウイルス、細菌、真菌、寄生虫などがあり、それぞれ異なる反応が起こります。細菌やウイルスのように細胞の中に感染するタイプの病原体が進入すると1型免疫応答が、線虫のように細胞の外に感染するタイプの病原体が進入すると2型の免疫応答が起こります。当研究室では、主に、2型免疫応答の作用機序について研究を進めています。
<関連>
・感染症や代謝性疾患に関わる免疫系のメカニズム解明と疾患モデルを用いた予防・治療への展開(シーズ集)
・学生団体”@GREEN”による「朝ごはんフェア」が、みやぎ食育奨励賞を受賞
・森本教授のブログ:寄り道まわり道遠くへ行く道