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22.05.27

食産業学群卒業生の森大佑さんが日本応用動物昆虫学会大会ポスター賞を受賞「深層学習を用いたトンボの自動検出・種判定システムの開発」/新技術応用研究室

食産業学群新技術応用研究室(後藤研究室)では,統計学,機械学習,コンピュータサイエンスなどの複合領域であるデータサイエンスや”AI(人工知能)“などの新しい技術の様々な分野へ積極的な適用とその技術の一般化をミッションとしており,研究室に所属している森大佑さん(2021年3月卒業,2022年4月同大学院入学)が,3月に開催された第66回日本応用動物昆虫学会大会で「深層学習を用いたトンボの自動検出・種判定システムの開発」を発表,ポスター賞を受賞しました。

客観的な生物多様性の評価を高精度・低コストで!

私たちは“生物多様性”,地上の様々な生物と環境の“つながり”の恩恵を受けています。この“つながり”は食産業(生物生産)の基盤で,例えば,植物の受粉に関わる小さな昆虫もこの中で重要な役割を果たしています。このような生物多様性を守るため,GAP認証を始めとした,農業の環境に与える影響の“見える化”が進んでいますが,その手法は目視や採集などが主流で,その精度には個人差があり,時間的コストも大きいのが現状です。より客観的な評価を高精度・低コスト,しかも“手軽”に実施できることが期待されています。

“トンボ”の調査から“環境保全型農業”の生物多様性への影響を・・・
-深層学習技術を用いたトンボの自動検知システムの開発へ

トンボの生息には森林と水域の両方が必要で,水田と里山が隣接する日本の農業では,トンボは最適な指標生物の1つといえます。トンボは環境変化に敏感で,その個体群動態(個体数,密度など)を調査することで,農業の環境が良好に保たれているのか?を評価できると考えられています。また,トンボは食物連鎖において,栄養段階:食物連鎖の各段階(生産者,一次消費者,二次消費者など)の中位に位置するため,「トンボが捕食する」/「トンボを捕食する」生物に大きな影響を与えています。本研究では,このような特徴を持つトンボに注目して研究を進めました。

本研究では,”深層学習”技術を用いて,トンボの検出と種判定を同時に実施できる“モデル”を構築しました。深層学習(深層ニューラルネットワーク)とは,一般的には,人工ニューラルネットワーク(ANN)と呼ばれる神経細胞のネットワークを模したシステムを,より多層に(深く)したものです。現在のところ,このモデルは,動画からイトトンボ類を84%,トンボ類を93%以上の精度で検出・種判定が可能で,今後の研究により更にその精度は向上すると考えています。また,このモデルを最も手軽なデバイスであるスマホやタブレットに実装することで,リアルタイムなトンボの検出・種判定が可能と考えています。

※画像クリックでパネルデータをご覧いただけます。

このような深層学習を用いた物体検知技術の導入は,近年非常に容易になっており,今後,同分野への深層学習技術の導入が更に進んでいくと考えられます。

「生態系モニタリング×新技術」の可能性を開拓する

今回構築したトンボの自動検知・種判定モデルは,様々な分野での応用が期待できます。例えば,設置した定点カメラの画像を本モデルで即座に解析することで,トンボの活動量も測定することが可能となります。また,本モデルをスマホに実装し,ドローンなどと組み合わせれば,より広域でのトンボの調査の自動化が実現できます。今後は,本モデルの高度化(他の対象/昆虫への適用や予測精度の向上)とシステム実装を行い,リアルタイム自動検出システムを開発したいと考えています。

森さんは「昨今,急激な環境変動が起こる中で,社会全体で自然環境を維持していくことが求められると考えられます。生態系モニタリングは,今まで人手によって行われてきました。これからは,従来手法と新技術を融合することで,私たちの活動が環境に与える影響をより鮮明に可視化することができると考えられます。今後も『生態系モニタリング×新技術』の可能性を開拓するような研究開発に取り組んでいきます。」とコメントを寄せています。

研究情報概要

  • タイトル:深層学習を用いたトンボの自動検出・種判定システムの開発
  • 受賞者:森大佑(宮城大学食産業学群【現:食産業学研究科】)
  • 共同研究者:藤本泰文(伊豆沼財団),後藤勲(宮城大学食産業学群)

日本応用動物昆虫学会ポスター賞について

日本応用動物昆虫学会は,昆虫やダニ,クモ,センチュウ,鳥などの動物を研究対象とし,とくに植物保護,人を含む動物防疫における有害動物,害虫管理,環境保全,および昆虫利用などに関わる基礎と応用研究を行っている,約1,700名の研究者で組織されている学会です。

ポスター賞は,日本応用動物昆虫学会大会において,優秀なポスター発表を行った学生会員に授与されるものです。第66回日本応用動物昆虫学会大会では,学生会員97名の発表の中から,優れた発表を行った13名の中の1人として表彰されました。

指導教員プロフィール

様々な分野に対するデータサイエンスや “AI(深層学習技術などを含めた人工知能技術)”の積極的な活用による,新たな知識の発見や新サービスの研究・開発に取り組んでいます。現在は,宮城大学・東北大学・伊豆沼財団などの宮城県の研究機関を始めとして,様々な分野の研究開発機関と共同研究を行っております。

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