• ホーム >
  • 学群・大学院等 >
  • 新着情報 >
  • 令和元年東日本台風における丸森町の支援活動から,被災者支援のあり方を学ぶ/災害看護支援論/看護学群災害看護プログラム

新着情報

21.12.03

令和元年東日本台風における丸森町の支援活動から,被災者支援のあり方を学ぶ/災害看護支援論/看護学群災害看護プログラム

看護学群の「災害看護プログラム」では,今後,新たな大規模災害が予測される日本において,将来,医療・行政・学校等で活躍できる看護職を育成しています。今回,4年次後期の「災害看護支援論」の授業において,災害により中長期的に影響を受ける被災者・救援者の健康および生活に関する諸問題とその支援のあり方について,令和元年東日本台風で被災を経験した丸森町でフィールドワークを実施しました。

フィールドワーク①

令和元年東日本台風における丸森町の被災状況について知る

丸森町は宮城県最南端に位置する人口12,585人,高齢化率43.14%(令和3年10月時点),農業が基幹産業の町です。フィールドワーク①では,丸森町の地形や被災状況を見学しながら,自らも被災を経験した民生委員の宍戸克美さんより,発災当時の状況についてお話を伺いました。

宍戸さんは阿武隈川支流の五福谷川近くに家族と住んでいましたが,五福谷川堤防の決壊によって,自宅は大量の土砂や泥で押し流されました。しかし,地形の特徴や河川の水量を確認し,迅速な判断によって決壊前に避難行動に移ることができたそうです。「平時からの防災意識の向上が,自分たちの生命を守ることにつながる」と語ります。

令和元年東日本台風の土砂災害や河川の氾濫によって,災害関連死を含めて11名の命が失われ,1名の行方がわかっていません。また, 1,067件の住家被害に加え,数百か所の道路や河川に被害を受け,現在も復旧工事が続いています。

フィールドワーク②

「被災者の生命と生活を守る」丸森町の被災者支援を学ぶ

フィールドワーク②では,グループに分かれて,発災時に,入院患者の避難対応を経験した丸森病院地域連携班班長の大槻公さん,保健活動を行った保健福祉課の大槻文子さん,行政として継続支援を行っている復興対策室の八巻舞子さん,社会福祉協議会地域支え合いセンターの生活支援相談員として被災者支援を行っている佐藤君枝さんと大石八千代さんから,発災時から現在に至るまでの活動についてお話を伺いました。

丸森町では,発災直後の10月より開設された避難所において衛生管理・感染症予防やこころのケアといった支援活動が行われました。同年12月下旬には,丸森町6か所に建設された仮設住宅団地への入居が始まり,翌年1月より「地域支え合いセンター」が開設となり,被災者の孤立予防やニーズの把握,住民同士の交流促進といった生活支援相談員の支援活動が始まっています。

災害直後から,スムーズに支援体制を構築できた背景には,異なる役割をもつ支援者同士で「被災者の生命と生活を守ること」「誰ひとりとして取り残されないように支援すること」という考えが共有されていた点があります。また,支援の際には,生活者としての“自立”を支える視点を特に大切にされているそうです。

ディスカッション

被災者の生活環境と健康問題,支援のあり方について

フィールドワーク①と②で得られたことを統合するために,「被災者の生活環境と健康問題,支援のあり方について」をテーマに,ワールドカフェ方式でディスカッションを行いました。

学生たちは被災者支援のあり方について,平時からの地域住民の防災意識を高めることや住民同士のつながりを維持または作り出す働きかけが重要であることに気づくことができました。また,被災者の生命や生活を守るためには,様々な職種間の情報共有や連携が重要で,丸森町のように支援者の顔が見える関係性を築くことの必要性について学ぶことができました。

災害看護プログラムについて

看護学群では,看護の専門的な学びを深めるプログラムとして災害看護プログラムを設置し,学生の主体的な学びを通して,様々な場で活躍できる看護職の育成を目指しています。災害看護プログラムでは,災害直後をはじめ災害サイクル各期において支援ができる看護の基礎的知識と技術を備え,将来,医療・行政・学校等の各分野において災害看護の一端を担える人材の育成をねらいとしたプログラムです。1年次後期の「災害活動論」,3年次前期の「看護マネジメントⅠ」,4年次前期「救急・災害看護論」後期「災害看護支援論」で構成され,これらの単位を修得した学生には,修了証が授与されます。

災害看護支援論

看護学群の学生を対象に,4年次後期に開講される選択科目です。災害看護プログラムの中でも,総仕上げにあたる内容となっています。災害サイクル各期における看護ニーズの特徴,各期に求められる支援方法,特に,発災直後の災害時の医療体制の構築,災害により中長期的に影響を受ける被災者・遺族・救援者の健康および生活に関する諸問題とその支援のあり方について理解を深めることを目的に,座学やシミュレーション演習,フィールドワークを展開します。(全15回)

指導教員プロフィール

宮城県伊具郡丸森町出身,看護学群の中では,成人看護学の分野を担当しています。ICTを活用した看護介入方法の実用化をテーマに,地域から臨床現場まで幅広いフィールドで研究活動に取り組んでいます。また,日本災害看護学会「まちの減災ナース指導者」として,地域の防災・減災に取り組める看護師や看護学生の育成に力を入れて活動しています。

TOP