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21.05.12

友渕貴之助教らによる「気仙沼市唐桑町大沢地区における復興の取り組み」が2021年建築学会賞(業績・復旧復興特別賞)を受賞/価値創造デザイン学類

価値創造デザイン学類 友渕 貴之 助教は、建築設計、地域計画、まちづくりなどを通して、豊かな暮らしとは何かを探求しており、東日本大震災以降、東北地方の復旧・復興にも長年携わってきました。このたび、友渕助教が参画している気仙沼みらい計画大沢チーム「気仙沼市唐桑町大沢地区における復興の取り組み」が、2021年建築学会賞(業績・復旧復興特別賞)を受賞しました。

大規模自然災害からの再生、その過程で多くの地域が直面する課題

東日本大震災を始めとした、大規模な自然災害による被災地が復興する姿として、地域の気候風土、生業、住民の思いなどを汲んだ復興計画を作成・推進していくことが理想的です。しかし、東日本大震災にあたってはあまりにも規模が大きく、高台への集団移転事業・街全体のビジョンの作成・地域コミュニティの再生など多様な課題に対してどのように立ち向かっていくべきか見通せない状態が続いていました。震災後「地域コミュニティをどのように維持していくのか」「復興後、地域の未来をどうしていくのか」その合意形成の取り方・具体的なビジョン・実現に向けた手法など、多岐に渡る課題に直面し続けてきました。

「震災以前から暮らしていた地区に帰りたい」意志に応える”場のデザイン”と情報共有

今回の友渕助教らによる取り組みは、気仙沼市唐桑町大沢地区で、“震災以前から暮らしていた地区に帰りたい”と願う人が、その実感を得られる地域になることを目指して、「かえっぺす!大沢」を合言葉として、住民と専門家チームが協働によって震災後、長期間取り組まれ続けている一連のまちづくりに関わる多数の活動です。5大学の教員と学生がチームを結成し、住民組織と協働で2011年10月より、以下の大きく3つの取り組みを実施しました。

①地域全体の復旧・復興事業に関する意見交換と合意形成の場としての集会運営及び事業計画案等の作成
②大規模事業では補えない、住民の憩いの場づくりや住宅再建に関する相談会などを始めとした多数の草の根活動の企画・実行
③刻々と進んでいく地域の現状を共有するフリーペーパーの制作・配布

気仙沼市唐桑町大沢地区における復興の取り組み

復旧・復興のためには造成工事や圃場整備など大規模な工事を伴う事業が必要です。しかし、地域や生活を再生していくためには、住民の憩いの場づくりや住宅再建に関する相談会など、住民どうしのコミュニケーションの機会を維持することが大切です。こうした、大きな事業のみで手の届かない部分は、住民自らの手で補完していく必要があります。これらの長期間に渡る多数の活動を専門家チームが伴走してサポートし、帰りたいと願う人々にフリーペーパーなどのメディアで情報共有することで、復興に向けての歩みを実感できる仕組みを構築しました。

震災後に居住場所を変えて離脱するケースも少なくない中、このような活動が一因となって、多くの人々が大沢地区に戻り、現在も地域のコミュニティを維持しています。本活動は「震災復興の代表的な協働事例」として評価を受け、今回の受賞に至りました。

地域を支える草の根的な活動、現在も続けることで広がり続けるネットワーク

「地域コミュニティをどのように維持していくのか」「地域の未来をどうしていくのか」といった課題は、実は震災以前からどの地域も抱えていた課題でした。今回の取り組みは復旧・復興を契機としたものですが、新しい地域運営の仕組みであると言えます。地域内でも例えば浸水区域の利活用など、まだまだ検討しなければならない課題が多くあります。この取り組みを通じて、地域に携わった学生は150名を超え、大学を卒業した後も交流が継続しているメンバーも多数います。また、遠方からでもこの地域に関わり続けられる仕組みとして、大沢サポーターズ制度というものを検討中です。大沢地区は現在130世帯程度が暮らす地域です。住民だけでなく様々な人々が地域に継続的に関わることのできる場をつくる、そうすることで、津波被災地域の復旧・復興の考え方も変化していき、課題の解決につながるかもしれません。

友渕助教は「多くの課題がありますが、継続して取り組んでいくことで1つずつ新しい可能性を切り拓いていきたいと思います。1つの地域に携わり続けることが出来ているということはすごく幸せなことで、大沢地区の復興に携わることで私自身多くのことを学ばせて頂きました。東日本大震災から10年が経過しましたが、引き続き住民の方々と多くの試行錯誤を続け、その中で生まれたアイデアを災害に対する知恵として還元できるよう、活動を続けたいと思います。」とコメントを寄せました。

気仙沼市唐桑町大沢地区について

気仙沼市唐桑町大沢地区は震災以前186世帯664人が暮らしており、カツオ漁の餌となるカタクチイワシ漁を主な生業としていました。東日本大震災によって75%程度の家屋が被害を受けましたが、漁業も再開し、現在は144世帯が暮らしています。

日本建築学会賞(業績・復旧復興特別賞)とは

一般社団法人日本建築学会は、会員相互の協力によって、建築に関する学術・技術・芸術の進歩発達をはかることを目的とする学術団体です。現在、会員は3万5千名余にのぼり、会員の所属は研究教育機関、総合建設業、設計事務所をはじめ、官公庁、公社公団、建築材料・機器メーカー、コンサルタント、学生など多岐にわたっています。

建築学会賞は、学術・技術・芸術などの進歩に寄与する論文・作品・技術部門以外の優れた業績で、近年中に完成した業績および継続的な活動によってその成果が認められた業績を表彰するものです。そのうち、大規模災害の復旧復興に関する業績(2021年設置、5年ごとに公募・表彰を行う)には、復旧復興特別賞が授与されます。

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