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21.11.25

震災から10年、被災者と歩んだ学生ボランティア団体@GREENのあゆみ/食産業学群 森本 素子 教授

学生ボランティア団体@GREENは、2011年3月11日に起こった東日本大震災の被災者支援を目的に、食産業学群の学生によって結成され、代替わりしながら活動を引き継ぎ、今日まで継続しています。食産業学群の森本素子教授は、発足当時から@GREENの顧問を務めていますが、このたびこれまでの活動を小冊子にまとめました。ぜひ手に取ってご覧ください。

※クリックで小冊子PDFを閲覧いただけます

農作業を通し仮設住宅地に交流の機会を、食産有志の学生により「@GREEN」を結成

2011年の東日本大震災後に建設された「あすと長町仮設住宅」では、入居者に高齢者が多く、身の回りでの生きがいを奪われた形から、生活全般に活気が出ず、健康維持に懸念がありました。また入居者は、岩手県から福島県までの広範な地域から避難し、従前の社会とは切り離された雑居状況で構成されていたため、コミュニティがうまく機能できず、助け合いや協働作業の機会が少ないという問題もありました。

当時、一般社団法人パーソナルサポートセンター(PSC)が入居者の生活支援を行っており、宮城大学食産業学部と連携して「農作業により入居者同士の交流を図り、収穫した生産物を用いて食生活の改善につなげたい」という提案がありました。それを受けて、栄養改善学会の支援を受け@GREENという団体名をつけて任意団体として活動を始め、この活動に多数の学生が参加を希望しました。※GREENには農業や植物などの緑のイメージの他に、平和やエコ、クリーン等の意味もあって名付けられました。

結成時メンバー、農場にて打ち合わせ

大学祭にてかぼちゃクッキー販売

農作業と食品加工を共に行う支援を開始、困難を乗り越え、継続した活動に展開

2012年3月より、支援活動を開始。学生たちと仮設住宅入居者の方々で集まり、本学附属農場を利用し作付から収穫までの農作業を月2回のペースで行いました。また、食品加工棟を利用して加工食品を作り、調理や栄養への関心を高める活動を月1回のペースで実施しました。大学祭ではこれらの加工品を販売、メディアからの関心も集める活動となり、参加者の大きな自信となりました。

1年間活動していく中で、高齢者には体力的な問題があること、猛暑や悪天候時に屋外での作業は危険が伴うこともあって、2013年からはガラス温室を利用したハウス栽培作業に切り替えを行いましたが、このころから被災者支援活動はだんだん下火となり、PSCの規模縮小もあって、これまでのような参加者の送迎ができなくなり、活動の存続が危ぶまれる場面もありました。

しかし、参加者たち自身の手で、活動の意義をもう一度確認し合うことで、自家用車の相乗りなど、被災者同士の助け合いが始まり、活動は存続することとなりました。この年の大学祭では地元食材を活用し、油麩丼を販売、再びメディアにも取り上げられましたが、被災者の自立という意味でとても大きな意義があったポイントでした。このころには、兵庫県立大学の学生ボランティアグループとの連携も始まり、被災地の生産品販路拡大など活動が拡がることは大きな刺激となりました。

太白キャンパスのガラス温室での作業

兵庫県立大学との交流

仮設住宅が解体され、新しい生活へ
@GREENの活動も次のステップへ、学生の食育を促す「朝ごはんフェア」

2016年12月になると「あすと長町仮設住宅」は解体され、復興住宅(市営住宅)が建設されました。もともと住んでいた南三陸や岩手に自宅を再建し、生活の拠点を戻す方が多くいた一方で、亘理に転居後も続けて参加する方もいました。

2015年から@GREENは、これまでのノウハウを活用し、活動の幅を広げて学内の学生への食育活動を開始。朝ごはんを提供する「朝ごはんフェア」では、@GREEN参加者が作ったパンやスープを学生に提供することで、学生に朝ごはんを食べる食習慣をつけ、健康増進を図る活動です。また、2017年からは復興住宅でのコモンミール活動に参加、NPOつながりデザインセンターの活動である「あすと食堂」のメンバーとなり、年2回はメインシェフとして献立立案から担当して食事を提供しています。

朝ごはんフェア

クリスマスリースづくり

顧問を務める森本教授は「参加した学生からはこれまで『引っ込み思案な自分を乗り越えたいと思って活動に参加した。』、『被災者に喜んでもらえることがとても励みになった。』などの声がありました。学内でも学長奨励賞を2度受賞したほか、宮城県からも食育表彰を受けるなど評価を受けていて、参加者の自信につながっている活動だと思います。震災から10年を迎え、学生が主体となって継続的な支援活動を行ってきた軌跡は、今後各地で起こりうる自然災害などからの復興に学生が携わろうとしたときに、きっと参考になるものと思われます。」とコメントを寄せています。

学生団体”@GREEN”とは

指導教員プロフィール

病原体から体を守る仕組みが免疫です。病原体にはウイルス、細菌、真菌、寄生虫などがあり、それぞれ異なる反応が起こります。細菌やウイルスのように細胞の中に感染するタイプの病原体が進入すると1型免疫応答が、線虫のように細胞の外に感染するタイプの病原体が進入すると2型の免疫応答が起こります。当研究室では、主に、2型免疫応答の作用機序について研究を進めています。

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