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24.09.19
相澤佑斗さん・友渕貴之助教が「地域資源を活かした復興計画に関する設計提案 -大槌町の湧水に着目して-」で第10回日本建築学会東北支部建築デザイン発表賞を受賞
価値創造デザイン学類 友渕 貴之 助教は、建築設計、地域計画、まちづくりなどを通して、豊かな暮らしとは何かを探求しており、東日本大震災以降、東北地方の復旧・復興にも長年携わってきました。このたび、友渕研究室に所属する相澤 佑斗さんおよび友渕助教が「地域資源を活かした復興計画に関する設計提案 -大槌町の湧水に着目して-」によって第10回日本建築学会東北支部建築デザイン発表賞を受賞しましたのでお知らせいたします。
自噴する湧水と人々の暮らしが密接に関係していた大槌町町方地区
岩手県下閉伊郡大槌町町方地区では、多数の湧水が自噴しており、湧水が生活水として利用されていただけでなく、共同の洗い場や井戸端会議などの住民同士が集い、持続的なコミュニティ形成の場となるなど重要な役割を果たしていました。しかし、復興計画による居住エリア一帯を2.2mの高さまで盛土したことにより、湧水は自噴することができなくなってしまい、湧水と住民の生活との関係性が絶たれてしまいました。
「湧水とともにある暮らし」を中心としたマスタープランの作成
相澤さんらの研究は「湧水とともにある暮らし」の継承を優位事項とした場合の復興計画をもう一度検討することで、地域性を活かした復興計画の重要性と可能性を見つめなおすことを目的としています。まず町方地区の自噴する湧水の地点をプロットし、ドロネー図を作成します。今回のマスタープランでは、自噴する湧水の音が聞こえる距離(密の空間)と高齢者等の歩行能力を判断する距離(疎の空間)を指標として、疎密の関係性を探り、それらをもとにして、住居配置を行いました。湧水が広く集中したエリアを大槌町町方地区の象徴として、様々な湧水による風景が広がり、地域資源の重要性を伝える場となる建築空間を計画します。
断面ダイアグラム
平面ダイアグラム
湧水を活かした操作により生まれる風景、地域資源を中心とした計画の可能性を示唆
こうして生まれた空間は、湧水景が連続し、それによってランドスケープとしての風景を生むだけでなく、湧水のふるまいがヒトのふるまいに作用することによって、小さな風景を生み出し、町方地区をより豊かな街へと変化させていきます。こうした地域資源を中心とした計画により、新たな計画手法の可能性が開かれるのではないでしょうか。
これらの研究成果は、2024年6月22日にアイーナ・いわて県民情報交流センターにて行われた第10回建築デザイン発表会にて発表を行いました。審査会では自噴する湧水によって形成されてきた独自のコミュニティに着目した点や、緻密なリサーチとマスタープランの妥当性などが高く評価され、今回の賞に選出されました。
指導教員であり受賞者でもある友渕助教は「本研究は地域特有の資源とともに育まれてきた暮らしの豊かさに焦点を当てた復興計画の可能性について研究・提案したものです。あくまで仮想の提案ではありますが、従来の復興計画に対する批評性を備えており、地域資源を活かした復興計画の具体的な検討と本計画によって獲得しえる暮らしの可能性を示しています。今後も地域で育まれる暮らしに対する理解を深め、人々が豊かに生きることができる環境を創出できるように研究室としても取り組んでいきたいと思います」とコメントを寄せています。
受賞概要
- 受賞概要:第10回日本建築学会東北支部建築デザイン発表賞
- タイトル:地域資源を活かした復興計画に関する設計提案 -大槌町の湧水に着目して-
- 受賞者:相澤 佑斗(宮城大学)、友渕 貴之(事業構想学群助教)
日本建築学会東北支部建築デザイン発表賞について
一般社団法人日本建築学会は、会員相互の協力によって、建築に関する学術・技術・芸術の進歩発達をはかることを目的とする学術団体です。現在、会員は3万5千名余にのぼり、会員の所属は研究教育機関、総合建設業、設計事務所をはじめ、官公庁、公社公団、建築材料・機器メーカー、コンサルタント、学生など多岐にわたっています。
「日本建築学会東北支部建築デザイン発表賞」は、東北地方の建築デザインの発展に寄与しうる会員の取組みについて、講演発表を行った中から、特に優れた講演発表に与えられる賞です。
研究者プロフィール
・友渕 貴之:事業構想学群 助教
建築設計、地域計画、まちづくりなどを通して、豊かな暮らしとは何かを探求しています。