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新着情報

25.12.22

事業構想学研究科の山﨑侃之介さんが卒業設計「貯蔵景-貯蔵と制作から捉える島嶼的集落像-」で第11回日本建築学会東北支部建築デザイン発表賞を受賞

事業構想学群の友渕貴之助教は、建築設計、地域計画、まちづくりなどを通して、豊かな暮らしとは何かを探求しており、東日本大震災以降、東北地方の復旧・復興にも長年携わってきました。このたび、友渕研究室に所属する山﨑侃之介(やまざきかんのすけ)さんが「貯蔵景-貯蔵と制作から捉える島嶼的集落像-」によって第11回日本建築学会東北支部建築デザイン発表賞を受賞しましたのでお知らせいたします。

貯蔵することで離島の不利な地理的条件を補い豊かに暮らしていた浦戸諸島

宮城県塩釜市浦戸諸島では使えなくなった漁具や古い建材などを貯め、組み合わせ、生活に必要な建築未満のモノ(以後制作物)を作ることで離島という不利な地理的条件に対して柔軟に対応し、土着的・自治的な集落運営が行われていました。しかし、高齢化によるストックの個人管理の限界や関係の希薄化による知恵の非共有によって、島内資源を貯蔵し、制作に役立てるという生活行為は見られなくなっていました。

島の資源と知恵だけで構成し、それ自体を集積する建築

本提案は土着的・自治的な集落運営が喪失しつつある現状に対して、資源・知恵・振る舞いが集積する貯蔵装置としての建築を集落に挿入するという提案です。リサーチとして浦戸諸島内に点在する制作物を調査し、資源同士の相性と具体的な組み合わせ方を明らかにしました。

島民の制作物における資源の相性を把握するため資源が同時に使われていた回数からネットワーク図を作る

資源を分類し、その組み合わせ方を抽象モデルに落とし込み建築の形態に引用する

島内で確認できた制作物に用いられる資源の寸法をモジュールとして建築に応用する

ここで明らかになったことを、資源同士の相性は貯蔵の位置を表すストックプランに、資源の組み合わせ方は建築自体の構成に応用していき、立ち上げました。モノを貯めながら、制作の知恵を伝え、人の居場所を作るこの建築の下で集落は土着的で自治的な生活を再獲得していきます。

資源がストックされ、人が集まり、制作物が作られることで新たな風景が生まれる

制作物の用途から読み解いた5つのプログラムを4つの敷地に配置する

溜まっていくモノが土着性を再定義し、集まる人とモノによって自治的な生活が生まれる

これらの研究成果は、2025年6月21日に東北学院大学五橋キャンパスにて行われた第11回建築デザイン発表会にて発表を行いました。審査会では、島内に存在する様々なモノを徹底的にリサーチし、それらの利用と転用の可能性を探りながら建築的な空間を構成すものであり、利用されるモノは、一見するとゴミにしか見えないようなモノもあるが、それらを使いつつも循環的に転用させるため「貯蔵」に焦点を当てたユニークな提案であるとし、リサーチの緻密さと合わせて高く評価され今回の賞に選出されました。

指導教員であり受賞者でもある友渕助教は「本研究は離島であるがゆえに生じる資源の循環に焦点を当てることで、島民の主体的な環境づくりを空間・システム的に支える建築的提案を行なっています。行政や民間サービスが行き届かないからこそ、住民が主体的に生活環境を形成せざる得ないが、それらを洗練させていくことで唯一性を持った魅力的な地域空間や暮らし方を獲得できるのではないかと考えています。今後も地域で育まれる暮らしに対する理解を深め、人々が豊かに生きることができる環境を創出できるように研究室としても取り組んでいきたいと思います。」とコメントを寄せています。

受賞概要

日本建築学会東北支部建築デザイン発表賞について

一般社団法人日本建築学会は、会員相互の協力によって、建築に関する学術・技術・芸術の進歩発達をはかることを目的とする学術団体です。現在、会員は3万5千名余にのぼり、会員の所属は研究教育機関、総合建設業、設計事務所をはじめ、官公庁、公社公団、建築材料・機器メーカー、コンサルタント、学生など多岐にわたっています。
「日本建築学会東北支部建築デザイン発表賞」は、東北地方の建築デザインの発展に寄与しうる会員の取組みについて、講演発表を行った中から、特に優れた講演発表に与えられる賞です。

研究者プロフィール

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