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新着情報

22.01.12

食産業学群の須田義人教授が、東北大学大学院農学研究科の櫻井氏らと、第129回日本畜産学会EPA賞(English Presentation Award)を共同受賞

“お肉の美味しさ”と“食で免疫機能アップ”の観点から動物が持つ能力を遺伝的に改良する研究を行う食産業学群の須田義人教授が、食産業学群附属農場(坪沼地区)で飼養したブタを供試し、櫻井美月氏(東北大学)や北澤春樹教授(東北大学)らと共同研究した成果を、第129回日本畜産学会の学術大会(2021年度)にて「Development of transgenerational immunobiotic library with innate immune activation」と題して櫻井氏が英語で発表、2021年度のEPA賞を共同受賞しました。

生産現場で求められている低リスクの抗菌剤代替物-イムノバイオティクス

ブタの生産現場では、幼若期における細菌・原虫等による下痢症や、腸管の慢性炎症が問題となっており、これらの予防や治療の手段として、一般的に抗菌剤等の医薬品が使用されています。しかし、それによって薬剤耐性菌が出現するリスクや、消費者の抗菌剤残留汚染への不安が増大しているのが現状です。そのうえ、これらの症状がウイルスによって引き起こされる場合、抗菌剤は効果がないとされています。

こうしたことから、感染症予防効果のある低リスクの抗菌剤代替物が求められており、プロバイオティクス(乳酸菌やビフィズス菌をはじめとする腸内細菌のバランスを改善し宿主に有益に働く微生物の活用)が注目されています。これまで、本研究チームはイムノバイオティクス(免疫機能に好影響を与える乳酸菌などを主とする微生物)が仔豚期に多給される飼料中抗菌剤の代替物として有効であることを多数の高インパクトスコアを持つ国際的学術論文(査読付き)で発表しています。

<関連>「ブタ由来乳酸桿菌ライブラリーの構築とイムノバイオティック評価」

イムノバイオティクス乳酸菌は、母ブタから仔ブタへ伝搬し、世代経過とともに受け継がれ、仔ブタの免疫機能を強化する

これまで、母ブタより採取した母乳を次世代シーケンサーにより菌叢解析(微生物集団の遺伝子解析)を行い、微生物の種類と割合を解析。それにより一個の菌で形成されたシングルコロニーを割り出し、乳酸菌などのグラム陽性桿菌を選び出して菌種を確認。この選抜されたイムノバイオティクス候補となる菌株により、ブタ腸管上皮(PIE)細胞を用いて、ウイルスモデルへの刺激を確認し、炎症関連遺伝子の発現調節(特定の遺伝子産物の合成を増減させるシステム)を評価してきました。今回は、親子間で伝搬性のあるイムノバイオティクス乳酸菌に注目し、伝搬性を確認しながらそれらの制御と選抜を行い、以下の成果を得ることができました。

  • 生体の粘膜上皮に存在し機能しているイムノバイオティクス乳酸菌が母ブタから仔ブタへと伝搬し、世代経過とともに受け継がれている。
  • 母ブタから仔ブタに伝搬するイムノバイオティクスのライブラリーの構築が可能となりました。
  • これらイムノバイオティクスが、仔豚の腸管免疫機能を活性化している。
  • 特に、Lactobacillus plantarum やLactobacillus reuteriが優位な菌種の1つであり、それらが中心になって仔ブタの腸管免疫機能を強化していることが明らかになりました。

仔豚への乳酸菌飼料素材の投与

仔豚への乳酸菌飼料素材の投与

ブタ小腸組織のパイエル板画像

ブタ小腸組織のパイエル板画像

仔豚への乳酸菌飼料素材の投与

仔豚への乳酸菌飼料素材の投与

これら一連の手法を用いて、イムノバイオティクスとして有用な乳酸桿菌をライブラリー化によって、今後の発展的な研究や、製品展開などに役立てることができます。また、これらのイムノバイオティクス菌株は、抗菌剤代替品として家畜の健全な育成に役立つ可能性があり、安全な畜産物の生産によって人びとの健康生活にも貢献することが大いに期待されます。また、母ブタのミルク由来のイムノバイオティクス乳酸菌が今後さらに明らかにされれば、母から子へと受け継がれる体の粘膜上皮に存在する機能性乳酸菌を優先的に摂取することで、健康維持・向上が期待できることも示唆される可能性があります。

須田教授は、今後も東北大学大学院農学研究科の北澤春樹教授と共同で「食と免疫」に関する研究を進める予定です。 「安全・安心な家畜と美味しい畜産物の生産を目指し、またその知見が人の生活と健康維持に大いに役立つように研究と教育に奮闘していきたいです。『母の愛は生まれ出る瞬間にも子に伝わる』凄さを証明したいと思います。興味のある人はぜひ一緒に研究しましょう」とコメントを寄せました。

研究情報

受賞研究表題「[Development of transgenerational immunobiotic library with innate immune activation」◎横井美月・扇隆介・佐久間大河・中野祐香・周涼井・須田義人・Md.Aminul lslam・大坪和香子・北津春樹
(共同研究機関)東北大院農学研究科・東北大学農学部食と農免疫国際教育研究センター
(研究協力者)宮城大学食産業学群農環境イノベーション博士後期課程1年生 加川響馬
(研究支援)日本学術振興会研究拠点形成事業

日本畜産学会

日本畜産学会とは、「畜産に関する学術研究の発表、情報の交換の場としてその進歩普及を図り、もって学術、文化の発展に寄与すること』を目的として、1924年(大正13年)に設立された歴史ある学会です。EPA(English Presentation Award)賞は、学術大会の一般演題発表の中で、優秀な英語での研究発表と質疑応答に与えられる賞です。

研究者プロフィール


食産業学群に《生物生産学類》令和 4 年 4 月誕生​​​​​​​ 

今、食を支える農業は変革の時。
農畜水産物生産のイノベーションで食の未来を創造する人材が必要です。
生物生産の確かな知識や技術、そして豊かな知性を身に付けるために、
新生 “生物生産学類” で、バイオサイエンス、植物・動物・水圏生物の生産科学、
環境情報や生産ビジネスなどの多様な分野を幅広く、深く学んでみませんか。

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