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22.05.30
北辻政文教授に、2022年度日本農業工学会フェローの称号が授与されました/食産業学群
食産業学群北辻政文教授は、リサイクル材を大量に使用可能な建設材料としての利活用するための研究を行っています。北辻教授のこれまでの功績が評価され、2022年5月14日に東京大学弥生キャンパスの中島ホールにて行われた「2022年日本農業工学会フェロー・学会賞授賞式」で、2022年度日本農業工学会フェローの称号が授与されました。
日本農業工学会フェローについて
日本農業工学会は1984年に発足し、正会員(10学会、1協会)、賛助団体、および正会員に所属する個人で国際農業工学会(CIGR)に登録された国際会員から構成されています。農業工学の全分野を包括する唯一の世界的学術団体CIGRにおける窓口であり、日本学術会議とともに世界的視野から農業工学の今後の展望と探索しています。
フェローの称号は、日本農業工学会の関与する分野の学問技術の発展に継続的に顕著な功績のあった者を顕彰するもので、傘下の各学協会からの推薦に基づき、フェロー選考委員会及び日本農業工学会理事会の議を経て推薦された者および日本農業工学会理事会から推薦された者に授与されます。歴代の授与者には、京都大学総長、岩手大学学長、茨城大学学長をはじめ各学会の会長など、その分野で重きをなす人物が名を連ねられています。
「栄養塩等を継続的に供給可能な藻場ブロックの開発(特許第6851601号)」など、
建設リサイクル材を用いた環境負荷低減・生物多様性の保全に係る功績など高く評価
北辻教授の研究のひとつに「栄養塩等を継続的に供給可能な藻場ブロックの開発」があります。東北地方の太平洋岸(三陸)は、黒潮、親潮および津軽暖流等の寒暖流が交り、植物プランクトンが大量に発生することにより、豊かな漁業資源を有していますが、近年、海水温の上昇や森林から川を介して供給される鉄イオンの減少などを端として、海藻がなくなる「磯やけ」が発生。浅場生態系の環境変化と漁獲高への影響が危惧されています。
北辻教授は、栄養塩・鉄の拡散速度をコントロールし、かつ継続的に供給できる漁礁ブロックを開発。これにより母藻群落の安定的な胞子の供給を促し、海藻群落を徐々に拡大させる手法の構築に取り組んでいます。このような海洋の水産基盤を再構築する取り組みは、漁業の振興のみでなく、生物多様性の保全、ブルーカーボン効果によるCO2の固定水質の浄化、レクレーション等の多面的機能の付与などが期待されるものとして高く評価を受けています。
北辻教授は「この度は、大変名誉ある日本農業工学会フェローの称号を拝受し、身に余る光栄です。受賞の知らせをいただいた際には、あまりにも思いがけないことでしたので驚いておりました。そして、ここまで私を導いてくださった多くの方々の公私にわたるサポートに対し、心より感謝しておりますとともに、少しは恩返しができたかなと思っております。受賞業績は農業農村工学分野における長年のリサイクル材の利活用技術や、最近では藻場ブロックを開発し、海藻類の生長を促すことにより、沿岸漁業の復興に資するとともにブルーカーボン研究の取り組みなど環境負荷低減のための一連の研究です。いただいた賞を励みに、より一層の探究とともに、微力ではありますが若いエンジニアのサポーターとして、今後は活動したいと考えています。」とコメントを寄せています。
研究者プロフィール
・北辻 政文:食産業学群 教授(建設環境材料学研究室)
2050年の世界人口は100億人に達すると見込まれており、100年前の実に4~5倍の人口増加となります。このため人類が今日のような快適な暮らしを維持するためには、衣・食・住、水およびエネルギーの安定的な調達が求められます。しかし、地球上のすべての資源はもはや限界状態にあり、持続可能な開発(SD)への転換が求められています。すなわち「もったいない」精神の基、資源の延命化を図ると共に、廃棄物を減量し、循環型資材の積極的利活用が求められているのです。本研究室では環境負荷の低減を図り、各種リサイクル材の建設材料としての活用技術の研究に取り組んでいます。