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23.03.09
2月~3月「石巻市陸上養殖実証実験調査によるウニ」の試食会を行いました/片山亜優准教授
食産業学群片山亜優准教授は「クローバーウニ」をはじめとして、水棲生物の餌料に関する研究や、自然のしくみを明らかにするため、海洋、河川、湖沼に生息する魚類、貝類などの生物が、どのように生活しているのか、環境との関わりについて研究しており、ウニやマダコなどの陸上養殖の技術開発、事業化に向けた取組も行っています。片山准教授は2021 年度より、石巻市が実施する再生可能エネルギーを活用した低コスト陸上養殖実証調査事業を受託し、ウニを対象とした陸上養殖実証試験を行ってきました。2月~3月にかけて、石巻市内各所で試食会などの成果発信を行いましたのでお知らせいたします。
ウニの餌となる海藻の不足「磯焼け」について
全国の沿岸部ではウニが大量発生し、海域の海藻類を食べ尽くす「磯焼け」を引きおこすことで、沿岸の生態系や漁業に深刻な被害をもたらしています。磯焼け海域のウニは餌である海藻がないため、痩せていて身入りが悪く採っても売り物になりません。「痩せウニ」を養殖することで身入りを改善することは可能ですが、磯焼け海域では餌の海藻が入手困難であること、また海藻の生える時期が春〜夏に限られること、といった課題がありました。低コストで採算性が確保され、持続可能な陸上養殖を実現するためには、海藻類にかわる新たな「餌」を見つけだす必要があります。宮城大学の研究チームはこれまで、マメ科植物のクローバーを餌としてウニを肥育する技術開発を行ってきました。
<参考>クローバーなどマメ科植物を餌としてウニを肥育する技術を開発
パプリカの葉をウニの餌として用いることができるのか!?
2/25石巻市-リーフデテラスで「パプリカウニ」の試食会を開催しました
石巻市にある株式会社デ・リーフデ北上/大川では、1年を通してパプリカを栽培しており、栽培過程でパプリカの葉を摘葉する必要があることから週に1度、2tトラック1~2台分の葉が廃棄されています。研究チームは安定的に手に入り、未利用であるこの「パプリカの葉」に着目。太白キャンパスにおいて実証調査を進め、パプリカの葉をウニの餌として利用する技術開発に成功し、2月25日に、成果報告を兼ねてデ・リーフデ北上に併設されたレストラン-リーフデテラスで試食会を開催しました。
試食会には石巻市や宮城県の関係者、デ・リーフデ北上/大川関係者が出席したほか、一般来場者・メディア各社が参加しました。関係者向けにはウニ丼(パプリカウニ、塩蔵ワカメウニの2種類)、ウニパスタ(パプリカウニ、塩蔵ワカメウニの2種類)計4種類について餌の種類、加工方法の違いによる食べ比べを行い、その後一般来場者向けにウニパスタの提供を行った上で、味に関するアンケートを実施しました。
3/3石巻フード見本市で多数の食品事業者向けにパネル展示と試食会を実施
石巻アパラタスと共同開発したウニの殻向き機も展示
続く3月3日は、石巻フード見本市においても研究成果の展示と試食会を行いました。特別企画コーナーにおいて「石巻市陸上養殖実証実験調査によるウニのご紹介」として、参加した多数の食品事業者に研究成果を紹介し、パプリカウニと塩蔵ワカメで肥育したウニの試食を実施、アンケート調査を行いました。展示では、あわせて、株式会社石巻アパラタスと共同開発したウニの殻向き機の展示も行いました。
2/25、3/3の試食会を通して、パプリカウニの方がワカメで肥育したウニより甘味があるというアンケート結果が得られ、参加者からは「臭みがなくパプリカの香りも感じられて美味しかった。いろんなメニュー展開が期待できるし、他の物を食べさせたらどうなるのかにも興味が沸いた」という意見が寄せられました。
片山准教授は「今回の試食会を通じて『パプリカウニ』が石巻市の独自のブランドウニとなることが期待される内容となりました。本事業によりウニの畜養が年4回可能であることが実証でき、年間を通して国産の生ウニが出荷できると考えています。市場への安定供給にはまだ課題はありますが、今後も持続可能な水産業を目指し、研究を展開していきます。」とコメントを寄せています。
開催概要
イベント | パプリカウニ試食会 |
日時 | 2023年2月25日(土)、9:00~10:00 ※10:00以降は一般向け試食会として「ウニパスタ」を提供しました。 |
場所 | リーフデ・テラス (986-0202 宮城県石巻市北上町橋浦北釜谷崎242-1) |
内容 | ・主旨説明 ・試食会:ウニ丼(パプリカウニ、塩蔵ワカメウニの2種類)、ウニパスタ(パプリカウニ、塩蔵ワカメウニの2種類)計4種類について、餌の種類、加工方法の違いによる食べ比べを実施。 |
主催 | 石巻市産業部水産課 |
協力 | 宮城大学食産業学群水圏資源生物学研究室、株式会社デ・リーフデ北上/大川 宮城県東部地方振興事務所、アジア航測株式会社 |
申込み | 申込不要 |
イベント | 石巻フード見本市2023 |
日時 | 2023年3月3日(金)、10:00~15:00 |
場所 | 石巻魚市場管理棟2F(986-0022宮城県石巻市魚町2-14) |
内容 | 特別企画コーナーにおいて企画⑤「石巻市陸上養殖実証実験調査によるウニのご紹介」として研究成果を展示します。※パネル・ウニ剥機の展示及びウニの試食を行いました。 |
主催 | 石巻フード見本市実行委員会 |
申込み | 食品業者・メディアの方向け、申込不要(市場見学会や個別相談会等、申込が必要となるプログラムもございます。詳細は公式サイトをご確認ください。) |
再生可能エネルギーを活用した低コスト陸上養殖実証調査
本事業は、低コストで採算性が確保された陸上養殖の実現に向け、石巻市内における再生可能エネルギーを活用した陸上養殖について調査・実証試験を行い、その調査結果や陸上養殖マニュアル ( 参考例 ) を地元事業者に周知することにより、石巻市内における陸上養殖事業の実現、事業者の所得向上、担い手や雇用の確保、水産加工業者への加工原料の安定供給、石巻市水産業の地域経済の安定化・活性化を目指す石巻市の事業です。この事業のうち、宮城大学ではウニの陸上養殖に関する実証調査を、石巻専修大学ではギンザケの陸上養殖に関する実証調査を実施しています。
研究者プロフィール
・片山 亜優(かたやま あゆ):食産業学群 准教授
「クローバーウニ」をはじめとして、水棲生物の餌料に関する研究や、自然のしくみを明らかにするため、海洋、河川、湖沼に生息する魚類、貝類などの生物が、どのように生活しているのか、また環境との関わりについて研究しています。ウニやマダコなどの陸上養殖の技術開発、事業化に向けた取り組みもしています。
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