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26.10.30
大学院食産業学研究科の藤原楓さんが第2回日本培養食料学会大会で優秀学生ピッチ発表賞を受賞
宮城大学大学院食産業学研究科博士前期課程2年の藤原楓さんが、第2回日本培養食料学会大会の学生ピッチで「タバコBY-2培養細胞を用いたイナゴマメガラクトマンナンの細胞工学的生産の確立」を発表し、優秀学生ピッチ発表賞を受賞しました。
藤原さんが所属する植物分子遺伝育種学研究室(日渡祐二教授)では、植物細胞生理学と発生進化学を専門とし、食料やバイオマスの増産につながる有用形質の制御メカニズムについて基礎研究を進めています。
9月に開催された同大会の学生ピッチは、培養食料分野に取り組む学生同士の交流を深め、研究をアピールする機会や、今後の進路選択につなげることを目的としています。藤原さんは、植物の培養細胞を用いて、食品原料となる多糖類を生産する研究について発表しました。

食品づくりを支える「ローカストビーンガム」と安定供給の課題
イナゴマメは、主に地中海沿岸に分布するマメ科の常緑樹です。その種子は古くから重さを量る分銅として使われ、宝石の重さを表す単位「カラット」の語源になったといわれています。また、さやの果肉は食用に利用され、チョコレートの代替原料としても知られています。一方、種子から得られるのが、多糖類の一種「ローカストビーンガム」です(図1)。食品にとろみを付けたり、食感を整えたりする働きがあり、ソースやゼリーなど、さまざまな食品に使われています。日本では、ほかの多糖類とともに「増粘多糖類」と一括表示されることもあるため、名前になじみがない方も多いかもしれません。

図1 イナゴマメのさやと食品におけるローストビーンガムの使用例
食品づくりを支えるローカストビーンガムですが、安定供給には課題があります。原料となるイナゴマメの収穫量は、天候や気候変動などの影響を受けます。供給が不安定になれば、食品メーカーの原料調達や製造コストに影響し、商品の価格にも波及する可能性があります。輸入に頼る日本にとっても、身近な問題です。
このような課題の解決に向けて、日渡教授、藤原さんらの研究チームは、植物の培養細胞を使ってローカストビーンガムを生産する技術の開発に取り組んでいます。天候に左右されにくい生産方法を確立し、安定供給につなげることを目指しています。

タバコの培養細胞で主成分「ガラクトマンナン」の生産を目指す
ローカストビーンガムの主成分である「ガラクトマンナン」は、マンノースがつながった主鎖に、ガラクトースが側鎖として結合した多糖類です。植物では、細胞壁の構成成分や炭素の貯蔵物として合成されます。その合成には、主に次の2つの酵素が関わります(図2)。
・マンナン合成酵素(ManS):マンノースをつなぎ、主鎖となるマンナンを合成する酵素
・ガラクトマンナンガラクトース転移酵素(GMGT):マンナンにガラクトースを付加する酵素

図2 ガラクトマンナンの構造と生合成の模式図
ガラクトマンナン(Galactomannan)は、マンノース(Mannose)が直鎖状に連結したマンナン(Mannan)を主鎖とし、ガラクトースを側鎖にもつ多糖類である。マンナン合成酵素(Mannan synthase: CsManS)は、GDP-マンノース(GFP-Mannose)を基質としてマンナンを合成する。ガラクトマンナンガラクトース転移酵素(Galactomannan galactosyltransferase: CsGMGT)は、UDP-ガラクトース(UDP-Galactose)を使って、ガラクトースをマンナンに転移する。これらの酵素のはたらきによりガラクトマンナン(Galactomannan)が合成される。
研究チームはこれまでに、イナゴマメのゲノム解析を通じて、これらの酵素をコードする遺伝子を特定してきました。今回の研究では、増殖が速く、均一な細胞集団を得やすいタバコBY-2培養細胞にこれらの遺伝子をそれぞれ導入し、酵素の働きと、ガラクトマンナン様の多糖類を生産できるかを調べました。その結果、CsManS遺伝子を導入した細胞の多糖類分析から、この遺伝子がコードする酵素がマンナンの合成に関わることが示唆されました。また、CsGMGT遺伝子を導入した細胞では、ガラクトースの付加に加え、マンナンの合成にも関わる可能性を示す結果が得られました。

これらの結果は、イナゴマメ由来の遺伝子をタバコBY-2培養細胞で働かせることで、多糖類の合成に変化をもたらす可能性を示しています。今後、両酵素を同時に働かせた際の効果を検証することで、イナゴマメ特有のガラクトマンナンを植物の培養細胞で生産するための基盤技術につながることが期待されます。
酵素の機能解析を進め、多糖類生産の基盤技術へ
指導教員の日渡教授は、次のようにコメントしています。
「今回の研究では、イナゴマメのガラクトマンナン合成に関わる酵素の働きについて、理解を深めることができました。次の課題は、植物細胞の中でこれらの酵素を同時に働かせ、イナゴマメのガラクトマンナンを生産できるか検証することです。今後も関連する酵素の機能解析を進め、植物培養細胞を用いた多糖類生産の基盤技術の発展に貢献していきたいと考えています。」
研究情報の詳細
・授賞名:第2回日本培養食料学会大会学生ピッチ 優秀学生ピッチ発表賞
・業績名:タバコBY-2培養細胞を用いたイナゴマメガラクトマンナンの細胞工学的生産の確立
・著者:藤原楓(宮城大学大学院食産業学研究科)
※本研究は生物系特定産業技術研究支援センター(BRAIN)の「スタートアップ総合支援プログラム」(課題番号:JPJ010717)の支援を受けて行われています。
指導教員プロフィール
・日渡 祐二(ひわたし ゆうじ):宮城大学食産業学群教授
植物の細胞生理や進化を専門分野として、進化の視点から制御メカニズムを明らかにする基礎研究を行っています。また、ゲノムエンジニアリングや細胞培養の手法を用いて植物機能開発にも取り組んでいます。

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