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25.03.03
2/9【宮城県×宮城大学】令和6年度生物多様性フォーラムを大和キャンパスで開催、シンポジウム・体験型イベントを実施しました
持続可能な社会の実現に向けて、カーボンニュートラルと同時に「ネイチャーポジティブ」の取り組みが世界的に求められています。「ネイチャーポジティブ」とは、2022年の生物多様性条約COP15で決定された決議であり、失われ続けている生物多様性を2030年までに回復に転じさせるという強い決意を込めた考え方です。自然保護だけを行うものではなく、社会・経済全体を生物多様性の保全に貢献するような社会変革を目指すものです。2月9日、宮城県と宮城大学が共同でネイチャーポジティブ実現に向けて、県内企業の取り組みや学生との交流を通じて共に考えるイベント「生物多様性フォーラム」を宮城大学大和キャンパスで開催しました。
生物多様性の回復-2030年ネイチャーポジティブ実現に向けて
企業や学生が取り組みを発表しあうシンポジウム・体験型イベントを実施
今回のイベントでは、前半に県内企業や大学・高校においてそれぞれ行っている生物多様性の取り組みについて発表するシンポジウムを行い、後半では宮城大学における学生たちの研究成果(作品)展示や、自然共生サイトとして審査されている大和キャンパス構内の森を歩く自然観察ツアーを行うなど体験型イベントを実施。生物多様性に興味を持つ一般の方や、教育関係者など約60名が参加しました。シンポジウムの主な講演タイトルは下記のとおりです。
- ネイチャーポジティブ実現に向けて
環境省東北地方環境事務所 自然環境調査官 相澤 あゆみ 氏 - 地域の環境課題解決に向けての取り組み
イオンモール株式会社 地域サステナビリティ推進室 室長 渡邊 博史 氏 - ワイズユースをテーマにしたサスティナブルツーリズムの実践
有限会社伊豆沼農産 取締役 佐藤 裕美 氏 ※本学卒業生 - ネイチャーポジティブに向けた高校生からの提言
宮城県古川黎明高等学校 内藤 恭子 氏 - 宮城大学における生物多様性に関する取り組み
宮城大学教授 茅原 拓朗、教授 小沢 晴司、事業構想学群学生
体験型イベントでは、宮城県を代表する生物多様性の宝庫である「伊豆沼・内沼」について、その魅力や課題を学生の目線で切り取り、音や映像、冊子など、多様なメディア媒体で表現した作品を体感できる展示会を開催しました。主な作品は下記のとおりです。
- メディアで体感 伊豆沼へワープ!
宮城大学 価値創造デザイン学類 学生 - 生物多様性をゲームで学ぼう!〜環境教育ボードゲームデモプレイ〜
宮城大学 茅原拓朗研究室
伊豆沼食堂 伊豆沼を知る/伊豆沼を食べる
左右開きで「伊豆沼を知る/伊豆沼を食べる」それぞれのストーリーを楽しめる構成となっています。クリックでPDFをご覧いただけますのでぜひお楽しみください。知る:伊豆沼の豊かな自然環境、そして地域の人々との深いつながりを紹介します。食べる:「伊豆沼でかつて食されていた食材を現在も使うことができたら」というコンセプトをもとに、「伊豆沼を食べる」という体験を提案します。
- 発行年月:2025年1月31日第1版第1刷発行
- 文:佐久間葉月、佐々木健太、豊島優弥
- イラスト:佐久間葉月
- タイトルロゴ:佐々木健太
- 編集:佐久間葉月
- 撮影:佐々木健太 茅原拓朗(扉写真)
- 協力:岩松二夫、大場孝太郎、佐藤裕美、那須りつ子、佐藤宏樹、茅原拓朗
- 発行:宮城大学事業構想学群価値創造デザイン学類
※伊豆沼に関する作品は「感性情報デザイン演習Ⅳリサーチ系」演習授業の成果です。
また、大学構内の森を散策するツアーでは、山道コース:起伏のある森のなかを自由に歩くコースと、探訪コース:平坦な登山道を歩くコースに分かれて、大和キャンパスのランドスケープや点在するアート作品、樹種の解説なども交えたツアーを実施しました。宮城大学では、大和キャンパス・太白キャンパス・坪沼農場の森林について自然共生サイトの認定に向けた取り組みを行っており、2025年2月27日に認定が公開されました。
本イベントの中心となった茅原教授は「宮城県には、世界的なラムサール条約湿地である『伊豆沼・内沼』や『蕪栗沼・周辺水田』をはじめ、貴重な生物多様性が残されています。今回、設置者である宮城県と宮城大学が協力してそのような有数の生物多様性の存在と、それらを保全しつつ活かしていく産官学の取り組みを紹介できたことは大変意義深いことだと考えています。また、県内外から多数の熱心なご参加をいただき、今回のイベントを通じて新たな出会いや交流が生まれていたことこそが本イベントのなによりの成果でした。今後も地域の中での大学の役割を自覚しながら、本イベントで生まれたネットワークを大事に育てていきたいと考えています。そして、これを機にさらに多くの人たちに気候変動や生物多様性喪失の問題に心を寄せていただき、30by30やネイチャーポジティブ等のアクションに繋げられるよう、キャンパス整備や研究・教育・地域連携の全方位ででさらに力強く取り組んで参りますので是非ご注目ください!」とコメントを寄せています。
宮城県庁自然保護課の白石氏は「今回のフォーラムは、宮城県のネイチャーポジティブの“キックオフ”として、産学官の皆様からそれぞれの取り組みについてご紹介いただきました。おかげさまで当日は幅広い世代の皆様にご参加いただき、今後ネイチャーポジティブに関心を寄せていただくための良い機会になったのではないかと考えています。今後も宮城県の豊かな自然環境や生物多様性を保全し、持続的に利用していく活動に、県民の皆様と一緒に取り組んでいけるよう、積極的に仕掛けていきたいと思います」とコメントしています。
開催概要
イベント名 | 令和6年度生物多様性フォーラム 宮城県からネイチャーポジティブを実現!~生物多様性と県内の取組から~ |
開催日時 | 2025年2月9日(日) 午前の部:10:00~12:00:シンポジウム 午後の部:13:00~15:00:生物多様性体感イベント 物品販売:12:00~14:00 |
開催場所 | 宮城大学大和キャンパス交流棟2階、PLUS ULTRA-(宮城県黒川郡大和町学苑1番地1) |
費用 | 参加費無料、申し込み制 |
主催 | 宮城県・宮城大学 |
公式サイト | https://www.pref.miyagi.jp/soshiki/sizenhogo/seibututayousei2024.html |
お問い合わせ | 宮城県環境生活部自然保護課 022-211-2672 |
感性情報デザイン演習Ⅳ
感性情報デザイン演習Ⅳは、3年次後期開講の感性情報デザインコース必修科目です。これまでの演習で修得したデザイン・実装技術を統合し、ウェブメディア・グラフィカルメディア・インタラクティブメディアなどの分野毎のスタジオに分かれ、グループによる共同制作を通じてデザインプロセスを学びます。大きく開発系(インタラクティブなメディア作品制作)とリサーチ系(リサーチのためのメディア活用・制作)に分かれて演習を行います。今年度のリサーチ系スタジオでは、生物多様性の宝庫である「伊豆沼・内沼」について、その魅力や課題を伝える課題に取り組みました。
自然共生サイトとは
ネイチャーポジティブの実現に向けた取り組みの一つとして、環境省では、企業の森や里地里山、都市の緑地など「民間の取り組み等によって生物多様性の保全が図られている区域」を「自然共生サイト」として認定する取り組みを令和5年度から行っています。認定区域は、保護地域との重複を除き、「OECM(Other Effective area-based Conserbation Measures:保護地域以外で生物多様性保全に資する区域)」として国際データベースに登録され、30by30目標の達成に貢献します。「自然共生サイト」の対象となる区域は、生物多様性の価値を有し、事業者、民間団体・個人、地方公共団体による様々な取り組みによって、(本来の目的に関わらず)生物多様性の保全が図られている区域です。これまでの認定サイト数は253か所(令和7年1月現在)です。「自然共生サイト」は、環境省の審査により認定を受けたサイトが登録の対象となります。認定基準は主に「境界・名称に関する基準」「ガバナンスに関する基準」「生物多様性の価値に関する基準」「活動による保全効果に関する基準」といった基準が審査されます。認定後は、5年ごとに認定内容の更新が行われます。宮城大学では、大和キャンパス・太白キャンパス・坪沼農場の森林について自然共生サイトの認定に向けた取り組みを行っており、2025年2月27日に認定が公開されました。
担当教員プロフィール
・茅原 拓朗:事業構想学群 教授
知覚や認知機能を中心としたヒトのこころや身体のはたらき・メカニズムを科学的に調べてデザインや物作りに役立てようとしています。最近では,Human-Nature Connectedness (HNC:自然とのつながり)という心理学の概念を中心に、自然と人間の関係性を科学と人文社会学の両面から包括的に検討し、それらを環境配慮行動(Pro-Environmental Behaviors:PEBs)の促進や、リスクコミュニケーション、バーチャルネイチャー構築等のメディアデザイン、持続可能な観光に活かすなど、心理学を専門とする立場から気候変動(Human Induced Climate Change:HICC)や生物多様性喪失(Bio-Diversity Loss:BDL)の問題に取り組んでいます。
(関連)
・小沢 晴司:事業構想学群 教授
1986年3月、環境庁に入省し、その後国内外の国立公園や、国立環境研究所、京都御苑、滋賀県立大学等に勤務、東日本大震災後、福島環境再生本部長等として2012年より原子力災害からの復興に8年携わる。2020年より宮城大学事業構想学群教授。専門は造園学、森林学、環境政策等。