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21.10.21

看護学群・風間研究室の学生が「高カリウム血症の心電図変化とそのメカニズム」を証明

看護学群に所属する風間 逸郎教授は、病態生理学・内科学・一般生理学を専門分野としています。また、内科の専門医として臨床にも携わっており、主要な研究のひとつとして「心疾患の病態生理と心電図異常のメカニズム解析」をテーマとした研究を行っています。

このたび、風間教授が研究指導をしている看護学群4年生のヨウレイナさん、秋山唯華さん,先崎桃乃さんが「高カリウム血症でおきる心電図変化とそのメカニズム」を, 世界で初めてウシガエルの心臓を用いて証明しました。今回の取組みは、看護学群の学生が主体となり、一貫して本学群内で行われた基礎研究成果です。

本研究成果は、2021年10月5日付けで英文雑誌(The Journal of Veterinary Medical Science)にも掲載されました。3名の学生はともに主体的に本研究に取り組んだため、“equally contributed authors”として、共同で本英語論文の“筆頭著者(even first author)”となっています(風間教授は責任著者)。

日常診療でよく遭遇する“高カリウム血症” とは

体の中に含まれるミネラル(電解質)の中でも、カリウムは、栄養素として欠かすことのできない「必須ミネラル」の一つと言われており、高血圧の大きな要因である塩分(ナトリウム)の排出を促す作用があります。そのため血圧を正常に保つ効果があるといわれており、切り干し大根やドライバナナ、刻み昆布などに豊富に含まれている栄養分のひとつとしてご存じの方も多いと思います。

一方で、例えば腎臓の働きが低下するなどして、体の外にカリウムを十分に排泄することができなくなると、カリウムが体内に蓄積し血液中のカリウム濃度が高くなります。これは、“高カリウム血症”とよばれ、医療現場でよく遭遇する水・電解質異常のひとつです。この“高カリウム血症”では、全身の筋力低下や脱力といった症状だけではなく、重篤になると、心室頻拍や心室細動などの致死的な不整脈が誘発されるため、緊急の治療が必要になります。近年では、生活習慣病のひとつとして、慢性腎臓病を合併する患者の数は年々増加しており、医療現場において高カリウム血症の患者を看る機会が多くなってきています。

これまで評価できなかった“高カリウム血症”重症例の心電図異常

高カリウム血症は、初期には無症状であるほか、悪心・嘔吐、全身倦怠感、筋力低下、しびれなどがみられることもありますが、いずれも特異的な症状ではありません。ただし、心電図上では早期から“テント状T波”とよばれるT波の増高が見られるため、診断のためには、心電図検査を迅速に行うことが有用であるとされてきました。ところが重症例の場合には、致死的な不整脈が起きる結果、発見されたときには既にショックや心停止を来してしまっている症例が多く、それに至る心電図異常の詳細までを評価することができませんでした。

世界で初めてウシガエルの心臓を用いた擬似病態モデルを作成
心電図異常のメカニズムを明らかに

今回の研究は、ウシガエルの心臓を活用して高カリウム血症の擬似病態モデルを作り、その“心電図異常のメカニズム”を再現し、解析を行ったものです。解析の結果、高濃度のカリウム投与により、T波の増高だけでなく、持続的なQRS幅の開大も見られることを明らかにしました。さらに、インスリンとよばれるホルモンの投与によって、肝臓や筋肉の細胞内にカリウムイオンを取り込む “ナトリウムカリウムポンプ(Na/K-ATPase)”が刺激され、高カリウム血症で生じる心電図変化の回復過程が早められるメカニズムも明らかにしました。

図A:高カリウム血症による心電図QRS幅の増大とインスリン(NaK-ATPase刺激薬)による改善効果

図B:インスリンのメカニズム

医療・看護の現場では、必ずしも腎不全の患者だけではなく、最近では、痛み止めや降圧薬などの副作用や、災害現場におけるクラッシュ症候群(筋肉の挫滅)などを原因とする、高カリウム血症の患者に遭遇する機会も多くなってきました。本研究成果は, 迅速な診断・緊急の治療を行わなければ命の危険にさらされてしまう“高カリウム血症”に対する、新たな診断や治療の糸口を世界で初めて明らかにしたといえます。

風間教授は「今後も、臨床から発想した研究の成果を再び臨床に還元することを目標とし、日々研究に取り組んでまいります。学生さんでも教職員の方でも、一緒に研究をやってみたい人は、是非ご一報ください。在学中だけでも“研究者”になってみたい!学会で発表してみたい!論文の著者になってみたい!という人でも構いません。いつでもスタンバイしてお待ちしております」とのメッセージを寄せました。
連絡先メールアドレス:kazamai(a)myu.ac.jp ※メールの際は、(a)を@に変換ください。

研究報告の詳細について

なお、本研究成果は、2021年10月5日付けで英文雑誌The Journal of Veterinary Medical Scienceの電子版に論文として掲載されています。ヨウさん、秋山さん、先崎さんは “equally contributed authors”として、共同で本英語論文の “筆頭著者(even first author)”となっており、風間教授は責任著者(Corresponding author)となっています。これまで風間教授が本学看護学群の学生を指導しながら発表してきた研究成果については、以下の和文・英文雑誌に掲載されています(いずれも風間教授がCorresponding author)。

研究者プロフィール

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