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新着情報

21.11.10

新型コロナワクチン副反応に対する非ステロイド性抗炎症薬の有用性を明らかに/看護学群・風間逸郎教授が看護学群4年生と報告

看護学群に所属する風間 逸郎教授は、病態生理学・内科学・一般生理学を専門分野としております。このたび、風間教授が研究指導をしている看護学群4年生の先崎桃乃さんとともにまとめた新型コロナワクチン副反応についてのデータをもとに、自身のこれまでの基礎研究成果を交えながら、“新型コロナワクチン副反応”への対処法についての重要な知見を、英文雑誌に報告しました。

本報告内容については、10月26日付けで, 英文雑誌(Drug Discoveries & Therapeutics)にAdvance Publicationとして掲載されました。本研究は、今年度、看護学群4年生先崎桃乃さんが、“新型コロナワクチン接種後の副反応”をテーマとした研究を行うにあたり、風間教授がその指導を行いつつまとめたものです。今回、英文雑誌に発表した論文は、風間教授(責任著者)と先崎さんの共著となっています。

調査により明らかになった、新型コロナワクチン接種後の副反応に対する
“非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)”の有用性

新型コロナウイルス感染症の終息のためには、ワクチン接種が切り札であることは言うまでもありません。しかし、接種直後に腕の痛みや腫れ、数日後には発熱・頭痛・全身倦怠感などの副反応が出ることが知られており、それによって仕事や学校を休まざるを得ないなど、日常生活に大きな支障をきたしてしまうこともあります。とくに若い人ほど副反応が強く出やすいことも知られており、自然に軽快する人もいれば、苦痛を軽減するためには解熱剤を内服せざるを得ない場合も少なくありません。先崎さんと風間教授による調査の結果、解熱剤を使った場合、中でもとくに非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs: NSAIDs)とよばれるイブプロフェン、ロキソニン、アスピリンを含む製剤の方が、アセトアミノフェンを含む製剤よりも、発熱・頭痛・全身倦怠感などの症状の持続期間を短縮することが明らかになりました。

新型コロナワクチン接種後の副反応をひきおこす “免疫反応”

新型コロナワクチンの接種後、体の中ではウイルスを中和するための抗体が作られ、徐々に新型コロナウイルスに感染しにくい、または感染したとしても重症化しにくい体になっていきます。それとともに、免疫細胞の一種であるリンパ球の活動性も高まるため、ワクチン接種後には、発熱・頭痛・全身倦怠感といった全身性の副反応が起きやすくなります。今回の発表内容は、NSAIDsが、風間教授がこれまでの研究の中で注目してきた「リンパ球カリウムチャネル」のはたらきを薬理的に抑えることによって、免疫細胞であるリンパ球自体の活動性を弱め、新型コロナワクチンの接種後におきる副反応を抑える可能性を明らかにしたものです【図1】。

【図1】リンパ球カリウムチャネル(Kv1.3)と免疫反応、NSAIDsの有効性、Kazama I & Senzaki M. Drug Discoveries & Therapeutics 2021より引用

【図1】リンパ球カリウムチャネル(Kv1.3)と免疫反応、NSAIDsの有効性/Kazama I & Senzaki M. Drug Discoveries & Therapeutics 2021より引用

※「リンパ球カリウムチャネル」とは、リンパ球の細胞膜上に数多く存在するカリウムチャネルのことを指します。免疫細胞の一種であるリンパ球は、細菌やウイルスなどの病原体に感染した細胞を攻撃したり、抗体を作ったりするほか、記憶した病原体にすばやく対応し、それらを排除するなどの機能を持ちます。

カリウムチャネルとは、細胞膜に存在するイオンチャネルの一種で、ほとんどの細胞に存在し、カリウムイオンを選択的に通過させることによって、細胞としての機能を維持しています。風間教授はこれまで、薬理効果(免疫抑制作用)や病態生理との関連を研究する中で、カリウムチャネルのひとつである「Kv1.3」の活性が, 免疫能と深く関わることを明らかにしてきました【図1】。

これまでの基礎研究の成果や、実際に遭遇した患者さんでの経過をヒントに、
ワクチンの副反応に対するNSAIDsの有効性を証明

風間教授は、これまで行ってきた基礎研究により、アスピリンをはじめとするNSAIDsが、カリウムチャネル「Kv1.3」のはたらきを抑え、リンパ球の活動性を弱めることを明らかにしました【図2】。また、実際に経験した症例をもとに、ある種のウイルス感染症(EBウイルス、ヒトパルボウイルスB19など)が引き金となって強い免疫反応がおきている患者さんに対しては、NSAIDs(ロキソニン)の投与が、治療に有効であることも報告しました【図3】。今回の報告は、これまで風間教授が明らかにしてきた、自身の基礎研究成果や症例報告をもとに、新型コロナワクチン接種後の副反応に対する有用な薬物治療の可能性について重要な知見を明らかにしたものであるといえます。

【図2】NSAIDsによるカリウムチャネル(Kv1.3)の抑制

【図2】NSAIDsによるカリウムチャネル(Kv1.3)の抑制

【図3】NSAIDsの投与が有効であった症例

【図3】NSAIDsの投与が有効であった症例

また最近では、若い男性における心筋炎や心膜炎が、長期的に起こりうる重篤な副反応として問題視されています。これらの副反応も、ワクチン接種後の強い免疫反応によっておきることが分かっているため、その発症予防のためにもNSAIDSは有効である可能性が高いと考えられます。

風間教授は「今後も、臨床から発想した研究の成果を再び臨床に還元することを目標とし、日々研究に取り組んでまいります。学生さんでも教職員の方でも、一緒に研究をやってみたい人は、是非ご一報ください。在学中だけでも“研究者”になってみたい!学会で発表してみたい!論文の著者になってみたい!という人でも構いません。いつでもスタンバイしてお待ちしております」とのメッセージを寄せました。
連絡先メールアドレス:kazamai(a)myu.ac.jp ※メールの際は、(a)を@に変換ください

研究報告の詳細について

なお、本研究報告は、10月26日付けで英文雑誌(Drug Discoveries & Therapeutics, 風間教授と先崎さんの共著、風間教授が責任著者)に論文(Advance Publication)として掲載されています。また、風間教授がこれまでに発表してきた、新型コロナウイルス感染症に関連する主な研究成果についても、別の英文/和文雑誌に掲載されています。(いずれも風間教授がCorresponding author)

また、これまで風間教授が本学看護学群の学生を指導しながら発表してきた研究成果については、以下の和文・英文雑誌に掲載されています(いずれも風間教授がCorresponding author)。

研究者プロフィール

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