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23.05.08
12月~1月デザイン思考WSシリーズ「地域文化の再構築と発信」を実施しました/デザインスタディセンター
宮城大学では新たにデザインスタディセンターを構想し、デザイン教育・研究を展開する実験的な取り組みを行っています。2022年12月~2023年1月にかけて、本学学生(学群問わず)を対象にデザイン思考を学ぶ全4回のプログラムを実施しました。
伝承される表現(踊りや音楽・衣装)を学び、いかに発信し継承していくのか
今回のテーマは「地域文化の再構築と発信」
このプログラムは、設定されたテーマに対して“デザインとは何か”という問いを投げかけ、問題提起と活動に取り組むプロセスを通して、学生・教職員含め“デザインについて考える・デザイン思考を理解する”ことを目的としたものです。
今回のテーマは、各地に存在する「地域文化」の中から「行山流⽔戸辺鹿子躍」の情報発信方法を検討することです。舞の観賞や文化発祥の地での現地調査、踊り手等当事者へのヒアリングを通じて、フィールドに出向き体感することの重要性を実感しながら、柔軟な思考力と、多角的な視野の習得のためのトレーニングに取り組みました。今シーズンは事業構想学群の学生が4名、地域の企業・クリエーターなど学外者4名が参加しています。
Day1:DSCオープンレクチャ・WSオリエンテーション
フィールドリサーチとレクチャから学ぶ、地域文化の再構築と発信
初回のレクチャはゲストに縦糸横糸合同会社の山田 雅也氏を迎え、地域資源の発掘などを目的とした企画開発事例を紹介。山田氏からは「生ものである地域文化の情報発信においては、情報の整理や再編集、再構築が重要であり、相手を変えようとするのではなく、自分自身の視座、視点、視野を広げる・変える努力をしながら課題に向き合って欲しい」とアドバイスがありました。WSオリエンテーションでは、今シーズンの対象となる「行山流⽔戸辺鹿子躍」について調査を行いました。参加者各自の興味のポイントを共有した後、どのような情報の発信方法が適切なのか、伝え方だけでなく、ツールやリサーチの仕方を整理しました。フィールドリサーチに向けて、アウトプットのためにどのような情報を得たいかをプランニングし、当日までにリサーチプランを固めていきました。
Day2:フィールドリサーチ/南三陸町-行山流⽔⼾辺⿅⼦躍
フィールドリサーチでは、鹿子躍の踊り手である小野寺 翔氏の案内により、行山流⽔戸辺鹿子躍発祥の地である昭和57年に発見された行山流⽔戸辺鹿子躍供養塔を視察。その後、南三陸エリアが東日本大震災に受けた被害の大きさを学べる南三陸311メモリアルや、復興の息吹を感じられる南三陸さんさん商店街を訪問しました。
その後、行山流⽔戸辺鹿子躍保存会の皆様による演舞を鑑賞し、復活から現在までの歴史や、衣装の持つ意味、踊り手の皆さんの想いなどを聞きました。参加者は、これまで画面の中だけで見ていた舞の迫力や衣装の美しさを目の当たりにし、鹿子躍を取り巻く背景にも触れながら、現地を訪れ体感することの重要性を改めて実感しました。
Day3:フィールドリサーチまとめと構想
リサーチで得たものを、作り手としてどう伝えるか
前回のフィールドリサーチを経て、得られた知見と各自の情報発信案を発表し、山田氏と担当教員からのアドバイスのもと、アイデアの深掘りを行いました。初回の調査時において、多くの参加者の興味は、衣装や舞など目に見える鹿子躍の要素にありました。しかしフィールドリサーチ後には、踊り手や地域、コミュニティのあり方などに興味の対象がシフトしており、鹿子躍そのものだけでなく、それを取り巻く環境をひっくるめて発信するという「作り手」としての視点が会得され始めた提案が見られました。
Day4:講評会/課題との向き合い方を考え続けること
最終回では、参加者がこれまで検討してきた情報発信案の発表と講評を行いました。各地の民俗芸能を紹介するWebサイトや、鹿子躍をモチーフとした絵本など、多様な提案がなされました。参加者からは、普段とは異なるデザインプロセスに戸惑いながらも、他者の考えに触れることで、自身の思考の癖を知り、見直すことができたという感想も。最後に山田氏より「技術を知り身に付けるだけでなく、極めることが重要であり、今後も『視座・視点・視野』を念頭に置いて課題に向き合ってほしい。」との総括が述べられました。主な提案は以下のとおりです。
- 民俗芸能地図帳 民俗芸能地図帳:鹿子躍に限らず、各地での民俗芸能に関する情報を掲載。普段は触れない人でも、地域情報と合わせて民俗芸能情報を知ることができる。
- 鹿子躍をモチーフとした絵本 鹿子躍をモチーフとした絵本:鹿子躍を未見の人々にも迫力を伝えられるよう、色鮮やかで躍動感のある絵とともに、動きの様子などを擬音で表現。
- 人々の心の動きに着目した動画の制作 人々の心の動きに着目した動画の制作:「ココロオドル」「シシオドル」という文字と、踊り手や鑑賞者の映像が交互に表示される構成の動画シリーズを制作。文章で説明するのではなく、人々の姿や様子でメッセージを伝えたい。
- 鹿子躍を基点とした交流イベント 鹿子躍を基点とした交流イベント:鹿子躍の発信の目的を再考し、南三陸町の関係人口やUターン、Iターン増加のためのイベントを検討。誰でも舞を体験できるコーナーのほか、かつての踊り手へ向けた「思い出し鹿子躍」という企画も。
デザインスタディセンター担当教員である佐藤宏樹准教授は「今回のスタジオでは、編集という視点から情報の収集と再構築の重要性を学び、それをフィールドリサーチ前後の提案の変化を通して実感することができました。2022度に開講した3つのオープンスタジオでは、グラフィック・食・芸能といったテーマをもとに、社会的な問題の本質を多角的に捉え、それにアプローチする思考力と行動力を多様な参加者と養ってきました。このような力は現在の流動的で不確実な社会の中で大きな武器になります。2023年度はさらに内容を充実したスタジオやイベントを開講予定です。学内に留まらず地域の企業やクリエイターの皆様にも集っていただき、共に学ぶ場所を一緒に作り上げていきたいと思っています。」とコメントしています。
ゲスト紹介
山田 雅也:第1回レクチャ・全3回ファシリテーター
1980 年生まれ。群馬県出身。
TVCMや映画制作における技術サポート、クリエーターマネジメント、プロデュース業を経験。東日本大震災を契機に、東北に伝わる地域文化の価値と魅力を再考するための場を作り、次代へ継承するために発信する活動として「東京鹿踊」「縦糸横糸合同会社」を立ち上げ。鹿踊を踊る一方で、東北の風土や文化を活かしたコミュニケーションデザインを企画プロデュース。東北と東京を拠点に活動中。
開催概要
デザイン思考ワークショップシリーズ(2022冬)、今シーズンのWSは下記日程で開催しました。
Day1 | 2022年 | DSCオープンレクチャ |
Day2 | 2023年 1月15日(日) | フィールドリサーチ |
Day3 | 2023年 1月17日(火) | フィールドリサーチまとめ |
Day4 | 2023年 1月26日(木) | 講評会 |
宮城大学デザインスタディセンター
デザインを通して、新しい価値をどう生み出していくか。日々変化する社会環境を観察し、多様な課題を解決へと導く論理的思考力と表現力、“デザイン思考” は、宮城大学で学ぶ全ての学生に必要とされる考え方です。ビジネスにおける事業のデザイン、社会のデザイン、生活に関わるデザインなど 3学群を挙げてこれらを担う人材を育成するため、その象徴として 2020 年にデザイン研究棟が完成、学群を超えた知の接続/地域社会との継続的な共創/学外の先進的な知見の獲得を目指して、企業との共同プロジェクトや、デザイン教育・研究を展開する「デザインスタディセンター」として、宮城大学は東北の新たなデザインの拠点をつくります。
MYU NEWS #03
宮城大学デザインスタディセンターでは、2021年の開設以来、学群の枠を超えた知の接続/地域社会との継続的な共創/学外の先進的な知見の獲得を目指し、東北の新たなデザインの拠点として、さまざまな実験的なプロジェクトが展開されています。
- P04-09 DSC Dialog #01 デザインスタディセンターの『現在』と『未来』
- P10-11 MYU Design Study Center × WOW いのりのかたち
- P12-15 DSC Dialog #02 めぐみ MEGUMI
- P16-19 DSC Dialog #03 文様 MONYOU
- P20-22 DSC Dialog #04 やまのかけら YAMANOKAKERA
- P24-26 DSC Dialog #05 うつし UTSUSHI
- P28-31 MYU Design Study Center Projects
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