新着情報

22.12.16

9月~10月デザイン思考WSシリーズ「肉の未来」を実施しました/デザインスタディセンター

宮城大学では、ビジネスにおける事業のデザイン、社会のデザイン、生活に関わるデザインなど、3学群を挙げてこれらを担う人材を育成するべく、新たにデザインスタディセンターを構想し、デザイン教育・研究を展開する実験的な取り組みを行っています。9月~10月にかけて、本学学生(学群問わず)を対象に、「肉の未来」を題材とした全5回のプログラムを実施しました。

身近なテーマから社会課題を見通す力/今回のテーマは「肉の未来」

このプログラムは、設定されたテーマに対して“デザインとは何か”という問いを投げかけ、問題提起と活動に取り組むプロセスを通して、学生・教職員含め“デザインについて考える・デザイン思考を理解する”ことを目的としたものです。今回のテーマは「肉の未来」。「肉」と一口に言っても、その周りにはブランディングや地産地消などに加え、近年ではアニマルウェルフェア(家畜福祉)や培養肉など数多くのトピックが存在します。今回は「肉」という身近なテーマを通して社会的な課題を見通す力や、そこから得た知見をもとに「デザイン」の視点からアクションを起こす姿勢を全5回のワークショップを通じて学びました。

全5回のワークショップは、社会の第一線で活躍する実務家と研究者によるレクチャ、実際に畜産を行っている牧場と宮城大学の坪沼農場へのフィールドリサーチ、その調査内容のまとめと未来洞察の作成、全体での視点共有から構成されます。実務家にアドバイスを受けながら気づきをまとめていくことで課題発見と解決に向けた視点を模索しました。今シーズンは事業構想学群から8名、食産業学群から1名、また、地域の企業・クリエーターなど学外から7名の合計16名が参加しました。

#01:DSCオープンレクチャ
「何をデザインするのか – 持続可能な社会におけるデザイナーの役割」
「フードテックは未来の⾁をどうデザインするのか︖」

初回は、ゲストに国内外で産官学民を横断した社会変革・市場創造のプロジェクトを推進するRe:Public inc.の田村大氏、分子調理学の第一人者であり食産業学群教授の石川伸一氏を迎えたレクチャを実施。田村氏からは「何をデザインするのか – 持続可能な社会におけるデザイナーの役割」と題して、地域社会におけるイノベーションや共創活動が自身のプロジェクトを例に紹介されました。石川氏からは「フードテックは未来の食をどうデザインするのか?」と題して、フードテック、食の進化、また食の未来を考える思考法が紹介されました。後半にはワークショップのファシリテーターを努めるfog inc. の大山貴子氏から、食を中心とした持続可能な社会への取り組みの紹介と、ワークショップのオリエンテーションが行われました。社会の第一線で活動する実務家と研究者の活動をデザインの視点から学ぶ、大変貴重な機会となりました。

#02:フィールドリサーチ/大崎市まきばフリースクール・坪沼農場

第2回はスクールバスを利用して学外フィールドリサーチを実施。実際のフィールドに出て、第1回に学んだフィールドに隠れた「機会」や「可能性」を発見するためのリサーチ方法を実践しました。初めに訪れた「大崎市まきばフリースクール」では、不登校や引きこもり等の子ども・青年が動物との触れ合いを通して生活し、学ぶ場所を視察。代表の武田和浩氏にその運営やそこで動物が果たす役割等についてお話を伺いました。次に訪れた宮城大学の附属施設である「坪沼農場」では、中村聡氏(宮城大学 食産業学群 教授)の案内のもとで農場を見学し、その後は食肉をめぐる社会情勢や研究についての説明を受けました。参加者は実際の動物と畜産の現状に触れることで、デスクワークでは得ることのできない肉にまつわる現状と課題を実感を持って知ることができました。

#03-04:フィールドリサーチまとめ、仮説の組み立て・発表

第3回と4回にはチームに分かれ、フィールドリサーチの内容のまとめと、食に関する未来洞察、およびディスカッションを行いました。fog inc. 大山氏のアドバイスのもとフィールドリサーチで得た知見から気づきを導き出し、歴史的な視点と合わせて洞察を深めていきました。この期間はビデオ会議を併用し、キャンパスや職場など離れた環境の参加者つなぎながら議論を進めました。

#05:全体ワークショップ「肉の未来祭」

最終回となる全体ワークショップは、太白キャンパスのディスカバリーコモンズ及び研究棟5Fラウンジで実施。参加者は第4回までにまとめた食肉に関する未来洞察をSF小説の形式で共有し、初回のゲスト2名から講評を受けました。社会背景や登場人物の描き方で幅広いメッセージを表現できるSF小説は活発な議論を巻き起こしました。その後は現代に存在する様々な食肉(一般の肉、ブランド牛、経産牛、魚肉、ベジドック、大豆ベースの代替肉など)を試食しながら、食肉の未来を議論しました。最後に、ワークショップで学んだ食肉に関する課題とアプローチを大きなマップに貼り出して議論を行い、ワークショップを締めくくりました。全体を通して、肉を食べるという行為そのものを捉えなおして未来の姿を深く洞察し、望ましい未来に向けて最適なアクションを模索することの重要性を実感することができました。

デザインスタディセンター担当教員である佐藤宏樹准教授は「『肉』という一見普通のテーマに潜む課題を深く探索しユニークな方法でその本質を捉える、通常の授業では体験することが難しいデザインプロセスを学ぶ貴重な機会になりました。大和・太白両キャンパスを行き来し、食産業学群以外の学生には馴染みの薄い坪沼農場で活動できたことも、学群の垣根なく課題に取り組む良い機会になったと思います。今後も宮城大学の研究領域の広さを生かした活動の場を作っていきたいと思っています。」とコメントしています。

ゲスト紹介

田村大 氏:第1回レクチャ・第5回講評

神奈川県生まれ。幼少期を福岡県・小倉で過ごす。東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。新卒で博報堂に入社後、デジタル社会の研究・事業開発等を経て、株式会社リ・パブリックを設立。欧米・東アジアのクリエイティブ人脈を背景に、国内外で産官学民を横断した社会変革・市場創造のプロジェクトを推進している。2014年、福岡に移住し、九州を中心とした活動に移行。2018年より鹿児島県薩摩川内市にて、「サーキュラーシティ」の実現に向け取り組んでいる現在、九州大学、北陸先端科学技術大学院大学にて客員教授を兼任。

石川 伸一:第1回レクチャ・第5回講評

宮城大学食産業学群教授。東北大学大学院農学研究科修了。北里大学助手・講師、カナダ・ゲルフ大学客員研究員などを経て、現職。専門は、分子調理学。著書に『分子調理の日本食』(オライリー・ジャパン)、『食べることの進化史』(光文社)、『料理と科学のおいしい出会い』(化学同人)、共訳書に『The Kitchen as Laboratory 新しい「料理と科学」の世界』(講談社)『食の科学 美食を求める人類の旅』(ニュートンプレス)監修本に『フードペアリング大全』(グラフィック社)、『「食」の未来で何が起きているのか』(青春出版社)などがある。関心は食の「アート×サイエンス×デザイン×テクノロジー」。

大山貴子:ファシリテーター

ニューヨークにて新聞社、EdTechでの海外戦略、編集&ライティング業を経て、2015年に帰国。 日本における食の安全や環境面での取組みの必要性を感じ、100BANCH入居プロジェクトとしてフードロスを考える各種企画やワークショップ開発を実施後、サーキュラーエコノミーの実現を目的としたデザインコンサルティング会社、株式会社fogを創業。「循環をつくる( )をつくる会社」として、サーキュラーエコノミー及び循環型社会の実装を、人材・組織開発から行う。直近では、10月末にオープンしたキッチンやリビングラボを兼ね備えた施設「循環する日常をえらぶラボ "élab"(えらぼ)」を東京都台東区にオープンさせ、暮らしにおける循環の実践を行っている。

開催概要

デザイン思考ワークショップシリーズ(2022秋)、今シーズンのWSは下記日程で開催しました。

9月24日(土)

第1回:DSCオープンレクチャ
場所:宮城大学大和キャンパスデザイン研究棟 1F オープンスタディ

10月1日(土)

第2回:フィールドリサーチ

場所:牧場フリースクール、坪沼農場、等
10月7日(金)

第3回:フィールドリサーチのまとめ

場所:宮城大学大和キャンパスデザイン研究棟 1F オープンスタディ

10月14日(金)

第4回:未来洞察

場所:宮城大学大和キャンパスデザイン研究棟 1F オープンスタディ
10月22日(土)

全体WS「肉の未来祭」

場所:宮城大学太白カフェテリア、研究棟屋上
デザイン思考WSシリーズ担当教員

佐藤 宏樹:事業構想学群准教授
土岐 謙次:事業構想学群教授
本江 正茂:事業構想学群教授
・貝沼 泉実:事業構想学群特任助教
・小松 大知:事業構想学群特任助教

協力

石川 伸一:食産業学群 教授
中村 聡:食産業学群 教授

宮城大学デザインスタディセンター

デザインを通して、新しい価値をどう生み出していくか。日々変化する社会環境を観察し、多様な課題を解決へと導く論理的思考力と表現力、“デザイン思考” は、宮城大学で学ぶ全ての学生に必要とされる考え方です。ビジネスにおける事業のデザイン、社会のデザイン、生活に関わるデザインなど 3学群を挙げてこれらを担う人材を育成するため、その象徴として 2020 年にデザイン研究棟が完成、学群を超えた知の接続/地域社会との継続的な共創/学外の先進的な知見の獲得を目指して、企業との共同プロジェクトや、デザイン教育・研究を展開する「デザインスタディセンター」として、宮城大学は東北の新たなデザインの拠点をつくります。


MYU NEWS #03

宮城大学デザインスタディセンターでは、2021年の開設以来、学群の枠を超えた知の接続/地域社会との継続的な共創/学外の先進的な知見の獲得を目指し、東北の新たなデザインの拠点として、さまざまな実験的なプロジェクトが展開されています。


TOP